超音波医学
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症例報告
孤立性左室心筋緻密化障害と考えられた無症状の1症例
佐藤 早見渡邉 百合吉武 靖展福島 敬子植田 和子尾田 敏恵柏木 稔眞柴 順子大谷 規彰林 靖生
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2007 年 34 巻 6 号 p. 587-591

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抄録
左室心筋緻密化障害は,心腔内に著明に突出した肉柱と,肉柱間の深い陥凹を特徴とする,稀な先天性心疾患である.症状は,無症状から心不全や不整脈,塞栓症など多岐にわたるが,症状出現により診断されることが多い.我々は無症候性の左室心筋緻密化障害で,4年間経過観察した症例を報告する.症例は31歳女性で,肉眼的血尿の精査のために腎生検目的で入院となった.術前の心エコー図では,左心室下壁の菲薄化と壁運動低下,さらには下後壁に不規則に突出する肉柱構造とカラードプラ法で肉柱間隙内に入り込む血流像を認めた.また,MRI検査では心エコー図と同様に,下壁から心尖部にかけての肉柱構造とそれに伴う深い間隙が観察された.よって,心筋緻密化障害と考えられた.その後4年間の経過観察を行っているが,無症状であり,不整脈や塞栓症などの合併症は認められていない.左室心筋緻密化障害は,小児科領域での稀な心筋疾患とされてきたが,成人でも比較的多いと報告されるようになった.診断には心エコーとMRIが有用と考えられる.その予後は必ずしも楽観出来るものではないため,早期診断が重要である.
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© 2007 一般社団法人 日本超音波医学会
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