超音波医学
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総説
  • 竹川 英宏, 津久井 大介, 小林 聡朗, 鈴木 圭輔, 濱口 浩敏
    2024 年 51 巻 4 号 p. 159-172
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/12
    [早期公開] 公開日: 2024/06/03
    ジャーナル 認証あり

    頸動脈超音波検査法は,内頸動脈(internal carotid artery: ICA)および椎骨動脈(vertebral artery: VA)の狭窄または閉塞の有無を診断することに加え,直接観察できないICAの遠位部,中大脳動脈(middle cerebral artery: MCA)および脳底動脈(basilar artery: BA)の狭窄や閉塞の存在を推測することができる.ICA起始部狭窄は,主にパルスドプラ法で評価する収縮期最大血流速度(peak systolic velocity: PSV)を用い,200‐230 cm/s以上が高度狭窄を示唆する所見となる.また近年では,ICA起始部狭窄症の診断に収縮期加速時間の有用性が報告されている.遠位ICAまたはMCAのM1セグメントの閉塞は拡張末期血流速度(end-diastolic: ED)比(ED ratio)で存在を予測することが可能である.VA起始部やV1セグメントの狭窄はPSVで診断ができ,時間平均最大血流速度およびその左右の比,血管径の比を使用し,VAの遠位部閉塞を予測することができる.さらにBAの狭窄または閉塞の診断にVAの拍動係数と抵抗係数の有用性が提案されている.本レビューでは,頭蓋内動脈と頭蓋外動脈の狭窄および閉塞の超音波検査診断基準について概説する.

原著
  • 上畑 佳代, 春田 英律, 分野 秀規, 橋本 衣代, 梅澤 昭子, 馬場 哲, 今村 清隆, 上野 知尭, 黒川 良望
    2024 年 51 巻 4 号 p. 173-177
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/12
    [早期公開] 公開日: 2024/04/24
    ジャーナル 認証あり

    目的:腹部超音波スクリーニング検査時に腹腔動脈(celiac artery:以下,CA)の観察を行い,日本人の正中弓状靭帯圧迫症候群(Median Arcuate Ligament Syndrome:以下,MALS)の検出率を明らかにすること.対象と方法:2022年1月から2023年2月の間に,当院で1名の検査技師が施行した腹部超音波検査532名のうち,検査目的がMALSの疑い,健診目的,日本人以外を除いた223名を対象とした.下記の方法でMALSのスクリーニング検査を行った.(1)心窩部縦走査,安静呼気時におけるCAの走行方向と血管径を確認する.頭側へのCA軸の顕著な変位または血管径の狭小化が認められた場合,MALSの可能性を考慮し,CAの詳細な観察を行う.(2)CAの狭窄・乱流の有無,狭窄部の吸気時・呼気時の血管径・収縮期最大血流速度(peak systolic velocity:以下,PSV)を計測する.(3)呼吸によるCA軸の変化・狭窄・乱流を認め,乱流部のPSVが200cm/s以上,もしくは吸気時と呼気時のPSVに50cm/s以上の差を認める場合,MALS疑いと判定する.結果と考察:223名中11名(4.9%)にMALSが疑われた.11名中7名に腹部造影CT検査が追加され,7例ともMALSと診断された(3.1%).腹部症状の強い4名(1.3%)に手術が行われ, 全例に症状の改善が得られた.CAの詳細観察に必要な時間は6.8±1.2分であった.結論:本検討においてMALSの検出率は3.1%と高率であった.MALSは腹痛や内臓動脈瘤の原因となるが,手術により症状の改善が期待できる.超音波検査によるMALSの診断精度は高く, MALSの可能性も考慮し,CAの詳細な観察を行うべきである.

症例報告
  • ITO Mikiko, ABE Daisuke, YURI Koichi
    2024 年 51 巻 4 号 p. 179-182
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/12
    [早期公開] 公開日: 2024/04/22
    ジャーナル 認証あり

    A 64-year-old man was admitted to our hospital with fever and fatigue. Blood cultures yielded negative results. Repeated echocardiography during hospitalization revealed marked exacerbation of mitral valve regurgitation, and transesophageal echocardiography revealed a vegetation (2.65 × 1.51 cm) attached to the mitral valve and perforation of the anterior leaflet. Blood culture-negative infective endocarditis due to Bartonella henselae was considered because of his cat ownership. The mitral valve was replaced. Polymerase chain reaction of the valve revealed B. henselae DNA. Minocycline was administered for 6 weeks, and gentamicin was administered for 2 weeks. No fever was observed after treatment, and the patient was discharged to home. As in this case, blood culture-negative infective endocarditis caused by B. henselae is difficult to diagnose because B. henselae is a fastidious microorganism that does not cause typical symptoms, such as fever and elevated white blood cell counts. The findings in this case, i.e., those revealed by repeated echocardiography, are important in diagnosing blood culture-negative infective endocarditis due to B. henselae. Additionally, diagnosis is time-consuming, and the infection tends to progress. Therefore, surgical intervention should be considered when it is diagnosed.

  • 祝田 勇輝, 成田 啓一, 金田 智, 岩澤 沙友里, 井手 広樹, 廣瀬 茂道, 塩見 英佑
    2024 年 51 巻 4 号 p. 183-189
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/12
    [早期公開] 公開日: 2024/04/23
    ジャーナル 認証あり

    傍精巣線維性偽腫瘍(paratesticular fibrous pseudotumor)は陰嚢内に発生する稀な良性腫瘍である.術前の悪性腫瘍との鑑別はしばしば難しいものの,腫瘍と精巣の剥離が可能であれば,特に若年者では精巣温存が望ましい.今回我々は,精巣温存が可能であった傍精巣線維性偽腫瘍を経験したため報告する.症例は30歳代男性.左陰嚢腫大を認め,超音波で陰嚢内充実性腫瘤を認めたため当院紹介受診した.当院で施行した超音波検査Bモードでは,肥厚した精巣鞘膜と連続性を有する多結節状の低エコー腫瘤を認め,カラードプラ法では腫瘤に軽度の血流シグナルを認めた.MRI検査ではT1強調像,T2強調像, 拡散強調像のいずれも低信号を示し,中等度の造影増強効果を認めた.悪性腫瘍も鑑別と考え手術を施行し,精巣との癒着は目立たなかったため,精巣は温存し陰嚢内腫瘤切除術を行った.病理組織学的には,腫瘤は高度に硝子化した線維組織を本体とし,炎症細胞の集簇が散在しており,精巣鞘膜由来の線維性偽腫瘍との最終診断に至った.精巣鞘膜と連続する多結節状の腫瘤で,超音波検査で低エコー,MRI検査のT1強調像,T2強調像,拡散強調像で低信号を示す腫瘤をみた場合,傍精巣線維性偽腫瘍が鑑別の上位に挙げられ,術中に精巣との剥離が可能であれば精巣温存ができることもある.

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