超音波医学
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早期公開論文
早期公開論文の6件中1~6を表示しています
  • 川端 聡, 岡庭 信司, 平井 都始子, 畠 二郎, 森 貞浩, 岩下 和広, 木下 博之, 山本 幸治
    論文ID: JJMU.R.264
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/07/25
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    消化管領域に於けるパニック所見には緊急所見(直ちに報告)の設定はない.準緊急所見(速やかに報告)としては,絞扼性腸閉塞の可能性が示唆される「蠕動の消失した腸管拡張」と「multiple concentric ring sign」に,消化管穿孔が疑われる「フリーエアー」を加えた3つが設定されている.蠕動消失の判定は腸の動きの所見に加えて内容物の沈殿の有無も確認する.絞扼性腸閉塞を直接疑う所見が得られればその旨を合わせて報告し,もしも単純性腸閉塞やイレウスとの鑑別が困難な場合には無理に鑑別を行わずにパニック所見として対応する.絞扼性腸閉塞の原因疾患としてはヘルニアの嵌頓や索状物による圧迫,捻転などが多く,これらの多くはclosed loop obstructionを形成する.例外として腸壁の一部のみがヘルニア門から脱出するRichter型ヘルニアや腸重積などが挙げられる.Multiple concentric ring signは腸重積でみられる特徴的超音波(Ultrasound:以下US)所見であり,重積腸管部分が短軸像で高エコーと低エコーの層からなる同心円状多層構造を呈する.小児の場合は90%以上が器質的疾患のない特発性で回腸結腸型が多く,成人では約7割が腫瘍を病的先進部として発症する.フリーエアーは90%以上が消化管穿孔によるものであり,原因疾患としては絞扼性腸閉塞をはじめとした虚血性腸疾患,消化性潰瘍,悪性腫瘍,急性虫垂炎や大腸憩室炎など多岐に亘る.フリーエアーのUS像は,ガスの反射によるstrong echoと,その後方に生じるアーチファクト(多重反射やコメット様エコー)によって認識されるが,小量の場合は消化管穿孔を疑って能動的に探しに行かなければ検出できないことが多い.

  • 松尾 汎
    論文ID: JJMU.R.265
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/07/25
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    最近の医療施設では,検体検査は勿論,超音波検査などの生理検査でも医師以外の検査実施も多くなり,さらに検査室以外で検査する機会も増えている.その際に発生し得る「緊急事態への対策システム」を講じる必要があり,既に検体検査部門では,「パニック値」として臨床に広く知られた「緊急対応システム」がある.超音波検査でも,「その所見に緊急性がある」と判断した場合には速やかな診断・治療が求められる.超音波検査で得られた所見が緊急疾患と診断された場合には,その診断された疾患の緊急度・重篤度に応じた治療が必要である.ただし,「医師と検査技師・看護師など(以下技師等)とは職能が異なる」ことに注意する.医師は所見から診断して即処置・治療することが可能だが,技師等は画像・所見を認知/報告して確認依頼はできるが,診断や治療はできない.しかし,注意を要する「重篤な病態/疾患を考慮すべき画像・所見の候補」を予め明示しておけば,技師等が検査した場合に「注意すべき画像・所見の候補あり」と認知し速やかに医師に報告,確認を依頼できる.疾患の重篤度により緊急度は異なり,緊急度は「緊急」と「準緊急」の2階層+「早期」が提案された.「緊急報告体制(システム)」は各施設に応じて構築しておく必要があり,さらに各現場の実情に応じてそれらを吟味・検証を重ね,広く活用され臨床に役立つことが期待される.その為には,現場の技師等や医師への広報が必須である.

  • 平井 都始子, 川端 聡, 岩下 和宏, 喜舎場 智之, 千葉 裕
    論文ID: JJMU.R.262
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/13
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    日本超音波医学会より公示された,超音波検査の「パニック所見:緊急に対応すべき異常所見」の,泌尿器領域のパニック所見のポイントについて解説した.泌尿器領域の「緊急所見」は,腎外傷や腎腫瘍の破裂などに起因する後腹膜腔の液体貯留が該当する.腎は後腹膜に位置しGerota筋膜に囲まれているという解剖学的な特徴から,直ちに治療しなければ死に至る頻度は低い.バイタルサインと合わせて超音波所見を確認し,「準緊急所見」として対応できる場合が多いと思われる.泌尿器領域の「準緊急所見」は2つあり,一つは両側腎盂(腎杯)の拡張である.腎盂だけが拡張する腎外腎盂はパニック所見とする必要はない.片腎が無機能腎の場合は,対側の腎盂腎杯の拡張もパニック所見である.もう一つは発熱や圧痛を伴う腫瘤像(内部エコーを伴う液体貯留)である.発熱や圧痛を伴う腎感染症で,腫瘤像(内部エコーを伴う液体貯留),腎内気腫像,デブリを伴う腎盂拡張を認める場合は「準緊急所見」である.

  • 岡庭 信司, 岩下 和広, 平井 都始子, 川端 聡, 木下 博之
    論文ID: JJMU.R.263
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/02/13
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    急性腹症の患者に超音波検査(ultrasound: US)を行う際には,被検者の反応やバイタルサインの変化に注意しながら,まず緊急度の高い疾患を除外し,その後患者の腹部症状,年齢,性別などから推測される頻度の高い疾患の評価を行うことが効率的かつ有用である.日本超音波医学会が提示した『超音波検査のパニック所見:緊急に対応すべき異常所見』(以下,パニック所見)は,緊急に対応すべきUSの異常所見を,①直ちに対応すべき「緊急所見」,②速やかに対応すべき「準緊急所見」,③早期に確実に対応すべき「異常所見」の3群に分類している.肝胆膵領域に関連する「緊急所見」には,デブリエコーを伴う腹腔・後腹膜腔の液体貯留があり,腹腔内出血,臓器損傷,肝細胞癌などの腫瘍破裂などに対応する.一方,「準緊急所見」には,充実性腫瘤の多発やcluster sign(多発肝転移),発熱や圧痛を伴う肝腫瘤像(肝膿瘍),発熱を伴う肝外胆管拡張(急性胆管炎),肝内胆管拡張(閉塞性黄疸),液体貯留を伴う胆嚢腫大(急性胆嚢炎),液体貯留を伴う膵腫大(急性膵炎)が含まれている.これらのパニック所見の特徴を熟知しておくことにより,急性腹症の患者における緊急度の高い疾患のスクリーニングを迅速かつ確実に行うことが可能となり,救急患者の急激な病状変化を回避し予後改善に貢献できると考える.

  • 上原 麻理子
    論文ID: JJMU.R.253
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/12/23
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    急性腹症は日常的に遭遇する病態で,しばしば鑑別診断として婦人科疾患があげられる.特に本稿で取り上げる異所性妊娠,卵巣出血,卵巣腫瘍茎捻転はその代表的な疾患で,無症状のまま経過することも少なくない.しかし,一旦発症すると短時間で重篤な状態となり,緊急手術を必要とする,生命予後に関わる,などの可能性があり,緊急対応を余儀なくされる.日常の婦人科診療においては,対象臓器の解剖学的位置と得られる情報量の多さから経腟(経直腸)超音波が使用される頻度が高いが,発症時に必ずしも婦人科を受診するとは限らないため,すべての検者がこれら疾患の特徴と見逃してはいけないサインを理解しておくことが望まれる.

  • 山田 博胤
    論文ID: JJMU.R.251
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/12/09
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    「パニック所見」とは,生命に危険を及ぼす可能性のある異常所見であり,これに対する迅速かつ適切な対応が求められる.2023年11月に日本超音波医学会から発表されたガイドラインに基づき,パニック所見は単なる異常所見ではなく,各施設で定められた緊急対応システムとして機能すべきである.超音波検査は臨床検査技師が行うことが多く,異常所見を発見した際には冷静な対応が必要である.心エコー図検査は生命に直結する心臓の異常を発見することができるため,パニック所見に遭遇した際の速やかな対応が求められる.検査前には,依頼内容を把握し,心電図などの最新情報を確認することが大切である.パニック所見を見つけたとき,症状や血行動態異常を伴う場合は直ちに医師に連絡する.症状がなく血行動態が安定している場合は,以前の検査結果と比較し対応を判断するのがよい.直ちに対応/報告すべき緊急所見を認める疾患には,急性冠症候群,心タンポナーデ,急性大動脈解離,急性肺血栓塞栓症,心腔内異常構造物(心腔内血栓,心臓腫瘍,感染性心内膜炎),心室中隔穿孔,仮性心室瘤,乳頭筋/腱索断裂による急性重症僧帽弁逆流,左室流出路狭窄,重篤な不整脈が挙げられる.また,速やかに対応/報告すべき準緊急所見を認める心疾患には,人工弁機能不全,心不全の新規発症/急性増悪,新規の重症弁膜症がある.迅速な対応が予後に大きく影響する循環器疾患において,パニック所見のシステムは患者の安全を守るために不可欠であり,各施設の実情に応じたシステムの構築が求められる.

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