「パニック所見」とは,生命に危険を及ぼす可能性のある異常所見であり,これに対する迅速かつ適切な対応が求められる.2023年11月に日本超音波医学会から発表されたガイドラインに基づき,パニック所見は単なる異常所見ではなく,各施設で定められた緊急対応システムとして機能すべきである.超音波検査は臨床検査技師が行うことが多く,異常所見を発見した際には冷静な対応が必要である.心エコー図検査は生命に直結する心臓の異常を発見することができるため,パニック所見に遭遇した際の速やかな対応が求められる.検査前には,依頼内容を把握し,心電図などの最新情報を確認することが大切である.パニック所見を見つけたとき,症状や血行動態異常を伴う場合は直ちに医師に連絡する.症状がなく血行動態が安定している場合は,以前の検査結果と比較し対応を判断するのがよい.直ちに対応/報告すべき緊急所見を認める疾患には,急性冠症候群,心タンポナーデ,急性大動脈解離,急性肺血栓塞栓症,心腔内異常構造物(心腔内血栓,心臓腫瘍,感染性心内膜炎),心室中隔穿孔,仮性心室瘤,乳頭筋/腱索断裂による急性重症僧帽弁逆流,左室流出路狭窄,重篤な不整脈が挙げられる.また,速やかに対応/報告すべき準緊急所見を認める心疾患には,人工弁機能不全,心不全の新規発症/急性増悪,新規の重症弁膜症がある.迅速な対応が予後に大きく影響する循環器疾患において,パニック所見のシステムは患者の安全を守るために不可欠であり,各施設の実情に応じたシステムの構築が求められる.
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