抄録
下部尿路症状(LUTS),特に高齢男性のLUTSの診断治療に際しては,超音波検査は最も重要な位置を占めている.残尿測定は,かつてのカテーテル導尿がいまやほぼ完全に超音波計測となった.膀胱の超音波検査は,LUTSの原因となりうる各種の膀胱疾患のスクリーニングとして重要である.膀胱超音波検査の応用とも言える超音波推定膀胱重量は,下部尿路閉塞の診断のみならず,神経因性膀胱の診断や重症度診断,さらには閉塞や膀胱機能障害に伴う膀胱の組織学的変化を推測出来るなど,その応用範囲が広く,有用性の高い検査である.経直腸超音波(TRUS)は,前立腺肥大症(BPH)の診断のみならず,ドプラ法による前立腺内血管のresistive indexの測定により,閉塞診断などに新たな展開をもたらした.また,排尿時TRUSは膀胱病変の検出のみならず,排尿動態の解明にも有用な方法となっている.超音波検査は侵襲が少なく,その臨床応用も容易なため,今後のさらなる発展が期待される.