日本胸部疾患学会雑誌
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摘出正常犬肺で聴かれる fine crackle の発生機序
棟方 充本間 行彦谷村 一則日下 大隆小笠原 英紀松崎 道幸川上 義和
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1985 年 23 巻 12 号 p. 1440-1448

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抄録

ラ音の発生機序解明のため, 摘出正常犬肺を気密ボックス内で換気し, ラ音の発生する生理学的条件を検討した. 呼吸流量 (V), 肺内外圧差 (Ptp), 肺胞より気道開口部までの経気道圧差 (Pta), 肺音を同時記録した. Ptaは胸膜カプセル法を用いて測定した. 摘出肺の換気でラ音が発生し, このラ音は吸気時にのみ聴かれ, 高調であり fine crackle と考えられた. ラ音は, Ptaが吸気時陰圧方向から0方向へと圧の方向を変える点から発生し始めた. 吸気終末のPtpを一定 (15~20cmH2O) に保つと, ラ音は直前の呼気終末Ptpが-1~1cmH2O以下になって初めて発生した. 呼気終末のPtpを一定 (-10cmH2O) に保つと, ラ音は吸気終末Ptpが4~6cmH2O以上になって初めて発生した. これらのPtpはこれまで知られている気道閉塞圧, 開放圧と一致していた. 以上のことから, 摘出正常犬肺で発生する fine crackle は呼気時に閉塞した気道が吸気時に開放することにより発生することが示唆された.

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