日本胸部疾患学会雑誌
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在宅酸素療法を施行した肺結核後遺症症例における予後および肺循環諸量の変化の検討
佐々木 結花山岸 文雄鈴木 公典栗山 喬之
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1997 年 35 巻 5 号 p. 511-517

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抄録

在宅酸素療法 (HOT) 施行中の肺結核後遺症症例における肺循環動態と予後の関係を明らかにし, あわせてHOTによる肺循環動態の改善効果を調べた. 対象は右心カテーテル検査後HOTを施行した肺結核後遺症症例59例で, 室内気吸入下血液ガス分析値, 肺循環動態を測定後, 100%酸素を10分間吸入し, 血液ガス分析値, 肺循環動態の測定を全例で行った. 11例については, HOT施行前後に2回右心カテーテル検査を施行した. 在宅酸素療法施行後肺高血圧であった症例は49例であり, 肺高血圧の有無で生存率に有意差を認めなかった. 100%酸素を10分間吸入後, 平均肺動脈圧が5mmHg以上低下した症例は59例中9例と少数であり, 5mmHg低下しなかった50例と比較し生存率に有意差を認めなかった. また, HOT開始後2年以内に呼吸不全によって死亡した症例と, 5年以上生存した症例の血液ガス分析値, 肺循環諸量を比較したが, 統計学的有意差は認めなかった. HOT施行後再度右心カテーテル検査を施行した11例では, 平均肺動脈圧, 肺小動脈抵抗は有意に低下した.
以上より, HOTは肺結核後遺症症例の平均肺動脈圧を経年的に低下させ, 予後の改善に寄与することが明らかであったが, HOT施行前の肺高血圧の有無, 100%酸素吸入による肺動脈圧の低下は予後に関与しないことが明らかであった.

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