日本胸部疾患学会雑誌
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35 巻, 5 号
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  • 林 淳弘, 巽 浩一郎, 杉戸 一寿, 猪狩 英俊, 笠原 靖紀, 斉藤 正佳, 谷 俊明, 栗山 喬之
    1997 年 35 巻 5 号 p. 481-490
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺循環系におけるエンドセリンB (ETB) 受容体の役割を, ETB受容体選択的刺激薬 (IRL1620) を用いて, ラット摘出灌流肺と麻酔下 in vivo において検討した. 灌流液に血液を加え低酸素により肺血管を収縮させておいた摘出灌流肺では, 少量のIRL1620投与により肺血管の拡張反応が認められたが, 多量のIRL1620では逆に収縮反応が認められた. in vivo では, 10%低酸素下にてIRL1620投与により体血管の拡張反応が認められた. 一方, 肺血管ではIRL1620 0.1および1nmol/kgの投与では拡張反応が, 5nmol/kgの投与では収縮反応が認められた. ETB受容体刺激時に, 肺循環系においては体循環系とは, 拡張反応を示すETB受容体 subtype が tachyphylaxis を起こす濃度が異なり, 拡張および収縮反応の双方が生じうることが認められた.
  • 加藤 真司, 寺沢 栄一, 伊達 和彦, 別府 和重, 近藤 一男, 吉原 正, 永田 昌久
    1997 年 35 巻 5 号 p. 491-494
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫に対し, 肺容積の減少を目的とした非接触型 neodymium: yttrium-aluminum-garnet (以下Nd: YAG) レーザー胸膜焼灼術を3例の肺気腫症例に対し施行した. いずれも手術より回復し, 2例が自覚的にも改善した. その際, 非接触型Nd: YAGレーザーのハンドピース先端に長さ3cm, 直径1.8cmのステンレス製リングを作製し, 装着した. このリングによって照射距離と照射角度がそれぞれ3cmと90と一定化し, その結果, 照射面積の一定化により単位面積当たりの照射エネルギーも一定化した. またリングにより照射部位が判別しやすいこと, 簡単な構造で作成が容易であることの利点がある. このリングにより非接触型レーザーの欠点が補なわれ, 操作性の向上が得られた.
  • 原田 尚雄, 小場 弘之, 斉藤 司, 阿部 庄作
    1997 年 35 巻 5 号 p. 495-504
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ヘリカルCTを用いて特発性間質性肺炎23例, 膠原病に伴う慢性間質性肺炎7例, 健常者5例の最大吸気位と安静呼気位における肺葉容積を測定し, 主に下葉容積の変動について検討した. 最大吸気位における下葉/全肺容積比 (平均値±標準偏差) は, 健常者群46.8±4.13%, 特発性間質性肺炎群39.5±6.19%, 膠原病に伴う慢性間質性肺炎群27.7±7.86%と間質性肺炎群で有意の低下を認め, 特に膠原病に伴う慢性間質性肺炎で著しい低下を示した. 特発性間質性肺炎における検討では, 自己抗体陽性例で下葉/全肺容積比の減少を示し, 肺病変先行型膠原病の存在が示唆された. 気腫合併例では, 全肺気量の減少が軽度なことと一秒率の低下を認めたが, 下葉/全肺容積比は有意差を認めず, 下葉容積の変動に対する気腫性変化の関与は少ないと考えられた. 以上より, 下葉容積の著明な減少を認める慢性間質性肺炎には, 膠原病に関わる因子が関与している可能性が示唆された.
  • 畠山 忍, 立花 昭生, 森田 瑞生, 鈴木 和恵, 岡野 弘
    1997 年 35 巻 5 号 p. 505-510
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    当院で経験した小柴胡湯による薬剤性肺臓炎5例を報告した. 全例男性で, 平均69.2歳, 基礎疾患は急性肝炎1名, 慢性肝炎2名, アルコール性肝障害2名だった. 小柴胡湯投与から症状発現までは4日から1,155日で, 長期の1例を除くと平均27日だった. 全例に自覚症状と炎症所見があり, 4例で低酸素血症が, 全例で拡散能の低下がみられた. 4例で胸部X線写真上全肺野の粒状網状影を, 胸部CTで肺野濃度の上昇を認めた. 1例は左下葉に比較的限局した肺胞性陰影だった. 気管支肺胞洗浄でリンパ球の増加とCD4/8の低下がみられ, 経気管支肺生検でリンパ球主体の胞隔炎とII型上皮の腫大を認めた. リンパ球刺激試験は3例で陽性であり, 1例で再投与試験が陽性だった. 治療は, 全例小柴胡湯の休薬後にステロイドホルモン剤の投与を行い, 2例にパルス治療を要し, 内1例は人工呼吸管理を必要としたがいずれも後障害を残さずに改善した. 小柴胡湯投与後は十分な観察が必要である.
  • 佐々木 結花, 山岸 文雄, 鈴木 公典, 栗山 喬之
    1997 年 35 巻 5 号 p. 511-517
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    在宅酸素療法 (HOT) 施行中の肺結核後遺症症例における肺循環動態と予後の関係を明らかにし, あわせてHOTによる肺循環動態の改善効果を調べた. 対象は右心カテーテル検査後HOTを施行した肺結核後遺症症例59例で, 室内気吸入下血液ガス分析値, 肺循環動態を測定後, 100%酸素を10分間吸入し, 血液ガス分析値, 肺循環動態の測定を全例で行った. 11例については, HOT施行前後に2回右心カテーテル検査を施行した. 在宅酸素療法施行後肺高血圧であった症例は49例であり, 肺高血圧の有無で生存率に有意差を認めなかった. 100%酸素を10分間吸入後, 平均肺動脈圧が5mmHg以上低下した症例は59例中9例と少数であり, 5mmHg低下しなかった50例と比較し生存率に有意差を認めなかった. また, HOT開始後2年以内に呼吸不全によって死亡した症例と, 5年以上生存した症例の血液ガス分析値, 肺循環諸量を比較したが, 統計学的有意差は認めなかった. HOT施行後再度右心カテーテル検査を施行した11例では, 平均肺動脈圧, 肺小動脈抵抗は有意に低下した.
    以上より, HOTは肺結核後遺症症例の平均肺動脈圧を経年的に低下させ, 予後の改善に寄与することが明らかであったが, HOT施行前の肺高血圧の有無, 100%酸素吸入による肺動脈圧の低下は予後に関与しないことが明らかであった.
  • 吉川 雅則, 小林 厚, 山本 智生, 夫 彰啓, 竹中 英昭, 生野 雅史, 米田 尚弘, 成田 亘啓, 根津 邦基, 北村 惣一郎
    1997 年 35 巻 5 号 p. 518-523
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患 (COPD) では高率に体重減少が認められ, 予後や病態との関連が重要視されている. dual-energy x-ray absorptiometry (DXA) を用いて体重減少を各体成分の変化として詳細に評価し, 体成分と運動能との関連を検討した. 対象は外来通院中の男性肺気腫患者20例で, %標準体重 (以下%IBW) で体重非減少群 (A群; %IBW≧90), 軽度減少群 (B群; 90>%IBW≧80), 中等度以上減少群 (C群; %IBW<80) の3群に分けて検討した. 呼気ガス分析下に自動車エルゴメーターで症候限界性に運動負荷を施行し, 最大負荷量 (WRmax), 最大酸素摂取量 (VO2max), anaerobic threshold (AT) を運動能の指標とした. WRmax, VO2maxはA, B群間に有意差はなかったがC群ではA群より有意に低下していた. WRmax,VO2max, ATは lean mass と有意に相関していたが, fat mass とは相関を認めなかった. lean mass は運動能を規定する一因子であることが示唆された.
  • 各務 博, 長谷川 隆志, 倉茂 和幸, 斎藤 泰晴, 寺田 正樹, 佐藤 誠, 阿部 良興, 中野 正明, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1997 年 35 巻 5 号 p. 524-529
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例; 53歳, 女性. 6年前に慢性関節リウマチ (RA) が発症. D-ペニシラミン内服を開始して5ヵ月後, 乾性咳嗽, 呼吸困難が出現した. 胸部X線および胸部CT写真では異常影はみられなかったが, 呼吸機能検査で著しい閉塞性障害を認めた. 閉塞性細気管支炎 (BO) を疑い, 胸腔鏡下肺生検を行った. 組織学的に肺胞領域, 呼吸細気管支領域は正常で, 終末細気管支より高位の比較的太いレベルの細気管支に著しい狭窄を認めた. 以上より, RAに伴ったBOと診断した. プレドニゾロン (PSL) 1日60mgの内服を開始し, 1日30mgに減量の時点でシクロフォスファミド (CPM) パルス療法 (CPM300mg点滴静注, 2週に1回) を併用した. 治療開始後現時点まで約2年半が経過しており, 1秒量の若干の低下はみられているが, 生存中である.
  • 中川 晃, 山口 哲生, 天野 裕子, 高尾 匡
    1997 年 35 巻 5 号 p. 530-535
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性. 主訴は発熱・咳嗽・息切れ, 胸部X線像では両側上肺野に浸潤影を認めた. 経気管支肺生検 (TBLB) にて慢性好酸球性肺炎 (CEP) と診断, ステロイド治療にて軽快した. その後, 再発が認められたが, やはりステロイド治療にて軽快. 帰宅試験陽性であったため, アレルギー学的検査を施行. カンジダに対する皮内反応陽性, 沈降抗体陽性であり, カンジダ抗原による吸入誘発試験陽性であった. 従って, 本症例の発症にカンジダアレルギーが深く関与していると考えられた. なお, 本症例では経過中3回気管支肺胞洗浄 (BAL) を施行したが, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中の細胞分画の比率は, 好酸球優位の状態から, リンパ球優位の状態に変化した. これは, CEPと閉塞性細気管支炎器質化肺炎 (BOOP) との相互移行の可能性を考えていく上で興味深い結果と考えられた.
  • 中原 快明, 島田 健, 藤沢 伸光, 河島 通博, 内藤 恵子, 林 真一郎
    1997 年 35 巻 5 号 p. 536-540
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性, 気管支喘息重積発作で入院し人工呼吸管理を施行. メチルプレドニゾロンの投与, イソプロテレノール頻回吸入にも関わらず呼吸状態は悪化し, 気道内圧の上昇, 気胸, 右下葉無気肺の合併, 血圧低下と重積の極期に至った. このためイソフルレン吸入を開始し, さらにイソプロテレノール持続点滴を併用したところ呼吸および循環動態は改善し人工呼吸器を離脱した. イソフルレンは薬理学的にカテコールアミンに対する心筋の感受性を亢進させる作用が弱く, イソプロテレノールなどのβ刺激薬との併用が可能である. また, イソプロテレノールは重積発作にたいして吸入で無効であっても持続点滴にて有効な場合がある. 両者の併用は, 気道内圧コントロールの困難な重積状態の呼吸管理に有用であり, 試みる価値のある治療法と考えられる.
  • 秋山 佳子, 清水 歩, 木村 啓, 小野寺 怜悧, 南谷 めぐみ, 堀越 一昭, 神宮 希代子, 深草 元紀, 古田 島太, 佐藤 哲夫
    1997 年 35 巻 5 号 p. 541-545
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性. 気管支喘息加療中に発熱, 湿性咳嗽, 呼吸困難増悪し, 胸部X線で両肺の浸潤影と, 末梢血の好酸球数増多を認めた. 近医にてパルス療法後のステロイド減量に伴い症状の再燃を認め当院へ転院となった. 症状, 検査所見から, 本症例は特発性好酸球増多症と診断され, シクロスポリンの併用によって, ステロイドの減量が可能となり退院となった. 免疫抑制剤は近年, その作用機序がステロイドと異なるため, 特発性好酸球増多症を含む難治性肺疾患においてその効果が期待されている. 本症例において臨床的にもシクロスポリンが効果的であったことは興味深く思われた.
  • 斉藤 博, 矢守 貞昭
    1997 年 35 巻 5 号 p. 546-549
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は22歳の男性で健康診断時の胸部X線写真で異常影を指摘された. 胸部CTで左S4に25×20mmの結節性病変を認めた. 気管支ファイバースコープ下に経気管支生検を行い, クリプトコッカスの菌体が認められた. 基礎疾患が無いため原発性肺クリプトコッカス症と診断した. 髄液検査は正常で他の肺外病変も認めなかったため無治療で経過観察し, 肺病変は自然消失した.
  • 楠本 洋, 水野 耕介, 米丸 亮, 中野 優, 市瀬 裕一, 外山 圭助
    1997 年 35 巻 5 号 p. 550-554
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 女性. 咳嗽, 喀痰, 呼吸困難で発症し, 胸部X線写真上で移動する異常陰影, 末梢血好酸球増多が遷延性に認められた. BALF中好酸球の増多, TBLBで肺胞隔壁に好酸球浸潤を認め慢性好酸球性肺炎と診断した. 入院時より気管支喘息発作と血清中のIL-5の高値を認めたため, Suplatast tosilate (IPD) により治療を開始したところ, 症状, 末梢血およびBALF中の好酸球数, 胸部X線写真上異常陰影は著明に改善した. ステロイド療法を要さずに, 1年後の現在まで再発を認めていない.
  • 松山 航, 是枝 快房, 水野 圭子, 溝口 亮, 岩見 文行, 納 光弘
    1997 年 35 巻 5 号 p. 555-560
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 10年前に間質性肺炎を指摘, 無治療で経過観察されていたが1995年5月9日発熱, 右側腹部痛を主訴に当院入院. 炎症所見, LDHの上昇を認め, CT画像上両側下肺野の honeycomb 様の変化と経気管支肺生検にてII型肺胞上皮の肥大と間質の線維化を認めた. 抗好中球細胞質抗体 (P-ANCA) が869EUと上昇しており, 尿潜血強陽性, 24時間クレアチニンクリアランスが40.3ml/minと腎機能障害を認め, 腎生検にて半月体形成性糸球体腎炎を認めた. 組織学的に血管炎の所見は得られなかったがP-ANCA関連糸球体腎炎及び間質性肺炎と診断し副腎皮質ステロイド剤を投与し炎症所見の改善を得た. P-ANCA関連糸球体腎炎の予後は悪いため, 特発性間質性肺炎と考えられ長期経過観察されている例にも, P-ANCA関連糸球体腎炎が発症する可能性があるので注意が必要と考えられた.
  • 杉山 みどり, 伊藤 清隆, 弥永 和宏, 土井 俊徳, 山口 哲朗, 税田 直樹, 山崎 寿人, 興梠 博次, 菅 守隆, 安藤 正幸
    1997 年 35 巻 5 号 p. 561-565
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. 労作時呼吸困難が徐々に増悪し, 体重減少, 食欲低下を認めたため精査を行い血清中CA19-9高値 (105.2U/ml) を指摘された. 腹部臓器に異常なく胸部X線写真にて両側びまん性に間質性陰影を認め, 当科紹介入院となった. 開胸肺生検の結果より特発性間質性肺炎慢性型と診断. 気管支肺胞洗浄液中のCA19-9も著明な高値 (6,325.0U/ml) を示した.さらに生検肺組織を抗CA19-9抗体で免疫染色したところ, 高度に線維化した領域や蜂窩肺領域の気腔面を覆う立方形の, または扁平な上皮, 気管支上皮化生部分が強陽性に染色され, CA19-9の肺内での局在が証明できた. CA19-9が高値を示した場合, 悪性腫瘍を合併しない特発性間質性肺炎慢性型も鑑別に上げる必要があると思われたので報告する.
  • 辻 博, 高桜 英輔
    1997 年 35 巻 5 号 p. 566-570
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男. 難治性気管支喘息治療のためプレドニゾロン服用中に喘息発作の増悪で入院. 右下肺に陰影を認め肺炎の併発と考えプレドニゾロンの増量とアミカシンを投与した. これにより喘息発作は改善したが肺炎は増悪した. 陰影は左下肺を除く全肺に広がり, 呼吸不全から人工呼吸器管理となった. 肝障害も認められた. 抗生剤を変更してイミペネム/シラスタチン, ピペラシリン, ゲンタマイシンと併用してクラリスロマイシン, エリスロマイシン, ミノサイクリンを順次投与した. 発症から約1ヵ月後にレジオネラ肺炎と診断し, レボフロキサシン400mg経口投与とイミペネム/シラスタチン1g静注の併用により治療した. これにより肺炎は軽快し, 肝障害も徐々に改善した. 本症の診断確定には時間を要することが多い. 本例では診断確定までの間レジオネラ菌にも抗菌活性を有する抗生剤を使用したことが, 遅い診断にもかかわらず救命につながったものと考えられた. 原因菌不明の肺炎でβ-ラクタム剤やアミノ配糖体剤が無効の場合には, 本症も考慮して治療にあたる必要があると考えられた.
  • 大道 光秀, 平賀 洋明, 宮崎 修光, 佐々木 拓子, 森川 裕子, 山田 陽, 山田 玄
    1997 年 35 巻 5 号 p. 571-576
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 住民健診で胸部X線写真上, 両側肺門リンパ節腫大 (BHL) を指摘され当科受診し, リゾチーム高値, ツ反陰性, 経気管支肺生検で類上皮細胞肉芽腫の組織診あり, サルコイドーシスと診断. その後の経過でBHLは改善するも, 4年後, 再度縦隔, 肺門腫大のため当科再入院. 胸部CTとMRIより縦隔のリンパ節腫大はなく, 右前縦隔に径7cm大の充実性腫瘤を認め, 肺野は圧排所見のみであった. 気管支鏡的に右上葉枝に異常なく, B3bの末梢よりの擦過細胞診では悪性を認めず. 経皮的に腫瘍を生検し, 扁平上皮癌の診断. 腫瘍摘出術を施行し, 術後の組織の検索で扁平上皮癌と正常胸腺の混在が認められ, 胸腺原発の扁平上皮癌と診断. 摘出された右上葉と縦隔のリンパ節に肉芽腫が認められた. 胸腺癌は比較的まれな疾患であり, サルコイドーシスとの合併は非常に珍しく, 貴重な1例であると考えられた.
  • 玉田 勉, 木村 啓二, 田畑 雅央, 石森 章太郎, 円谷 智夫, 林 雅人
    1997 年 35 巻 5 号 p. 577-582
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性. 平成7年3月に右上葉原発肺小細胞癌 (cT4N3M0, Stage IIIB) を発症, 原発巣と縦隔に対して放射線療法と, カルボプラチン, エトポシドを用いた全身化学療法を施行し, 腫瘍は著明に縮小した. その後放射線肺臓炎を発症したがステロイド治療により軽快した. 約9ヵ月後急性単球性白血病 (M5a) を発症し, 化学療法を施行したが無効で, 平成8年3月多臓器不全で死亡した. 本症例では染色体分析ができなかったが, エトポシドを含む併用化学療法が行なわれていること, 白血病発症までの期間が約9ヵ月で骨髄異形成症候群を経ずに発症していること, 芽球が単球様の形態をとることより, エトポシドによる二次性白血病と考えられた. 肺癌に対してエトポシドを使用する機会は増えており, それによる二次性白血病の可能性を考慮し, 化学療法後も慎重な経過観察が必要と考えられる.
  • 筆宝 義隆, 川名 明彦, 吉澤 篤人, 越野 健, 豊田 恵美子, 小林 信之, 小堀 鴎一郎, 荒井 他嘉司, 工藤 宏一郎, 可部 順 ...
    1997 年 35 巻 5 号 p. 583-587
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 発熱・全身倦怠感を主訴に来院した59歳女性. 臨床的に右膿胸と診断したが, 胸水中のアミラーゼ高値と, 同液中に食物残渣を認めたことより食道穿孔を凝った. 食道造影および食道内視鏡で食道気管支瘻が確認され, 生検により食道癌と診断された. 外科的切除を行い, 術後7ヵ月を経た現在生存中である. 食道癌の経過中, 食道気管支瘻を形成する場合があるが, 通常は強い気道症状によって発見される. 本例のごとく気道症状をほとんど欠き, 膿胸に至って初めて発見されることはまれである. また, 本病態は予後不良であるが, 外科的治療により救命し得た症例であるため, 報告した.
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