2008 年 69 巻 1 号 p. 110-114
症例は75歳,男性.3日前より持続する腹痛で当院紹介受診となった.上腹部に手拳大の腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた.血液検査では軽度の炎症反応を認めるのみであった.腹部CT検査でtarget signを認め,横行結腸の腸重積と診断した.直ちに注腸造影検査を施行したが,重積は解除されていた.後日行った大腸内視鏡検査で,横行結腸に3cm大の赤色調の表面平滑な隆起性病変を認めた.この病変が先進部となって腸重積を引き起こしたものと考えられ,開腹手術を施行した.病理組織検査では深在性嚢胞性大腸炎と診断された.深在性嚢胞性大腸炎が,横行結腸に腸重積を引き起こしたとの報告はなく,極めて稀な症例と考えられた.