日本臨床外科学会雑誌
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69 巻 , 1 号
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原著
  • 西尾 梨沙, 大東 誠司, 井上 弘, 柵瀬 信太郎, 西尾 剛毅, 小野寺 久
    2008 年 69 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    目的:末梢穿刺中心静脈カテーテル(以下PICC)は穿刺時の重篤な合併症が少なく,安全かつ簡便な静脈輸液路として有用と言われている.今回われわれは中心静脈カテーテル挿入に際しPICCを使用し,従来の中心静脈カテーテル(以下CVC)と比較し,挿入時および長期留置に伴う合併症について検討した.方法:2004年1月~12月に当科入院中,中心静脈カテーテル留置を必要とした160例(PICC 73例,CVC 87例)について挿入時および留置期間における合併症等をretrospectiveに解析した.結果:挿入時の合併症として気胸は両者ともなく,カテーテル留置平均日数およびカテーテル敗血症の発生に有意差はなかったが,カテーテル先端の位置異常(PICC 12.3%,CVC 1.1%)に有意差を認めた.考察:PICCは留置期間,感染に関してCVCと差はなく安全性は確認できたが,カテーテル先端の位置異常が多く,先端位置異常の改善につき今後の検討を要する.
  • 沖田 充司, 宮出 喜生, 岡野 和雄
    2008 年 69 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者の全身麻酔下外科手術症例を分析し当院の現状把握と問題点を検討した.対象と方法:2002年1月から2006年12月まで80歳以上で全身麻酔下外科手術を受けた55症例59件の周術期管理と予後を検討した.結果:男性14例,女性41例,平均年齢84.9歳.主な対象疾患は悪性腫瘍31例,胆石・総胆管結石5例,閉塞性動脈硬化症5例などで,術前基礎疾患は,高血圧,脳梗塞,糖尿病が多かった.術後合併症を40件(67.8%)に認め,肺炎,せん妄,創部感染が多かった.術後30日以内死亡はなかったが,在院死を5例に認め,3例は姑息手術例であった.5年生存率は58.4%で,主な死因は癌死であった.予後因子の検討では,姑息手術および術前1週間以上の絶食症例で予後不良であった.結語:予後の観点から進行癌における症状緩和目的の手術の場合には,適応は慎重であるべきと思われた.
  • 沖野 哲也, 蔵元 一崇, 木村 有, 田上 弘文, 稲吉 厚, 八木 泰志
    2008 年 69 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1996年から2006年に当院で行った早期胃癌に対する噴門側胃切除後の食道残胃吻合法22例(EG群)と,空腸嚢間置法14例(JPI群)を対象とし比較検討した.手術時間はEG群が有意に短く(EG群:JPI群=133分:161分),出血量,術後在院日数は両群で有意差はなかった.縫合不全,狭窄,膵炎,腸閉塞,肺炎等の術後合併症や,胸やけ,つかえ感,嘔吐,下痢,ダンピング症状等の術後愁訴,また食事摂取量,術後体重減少,術後栄養指標変動においても両群間に有意差はなかった.術後1年目の内視鏡検査では食道炎,残胃炎,狭窄,胆汁逆流において両群に有意差はなかったが,食物残渣の残存はEG群が有意に少なく(EG群:JPI群=14.3%:80.0%),JPI群の食物残渣は大部分が間置空腸嚢内に認められた.今回の検討ではEG群と比べJPI群に良好な成績は得られず,手術時間,食物残渣量の点でEG群の成績が良好であり,噴門側胃切除後の再建には簡便で従来の食道残胃吻合法が望ましいと考えられる.
症例
  • 比嘉 淳子, 照屋 剛, 佐久田 斉, 伊佐 勉, 城間 寛, 新垣 京子, 我喜屋 亮
    2008 年 69 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.約10年前に右乳頭の落屑が出現し,徐々に増悪したため近医皮膚科を受診した.乳輪部の切除生検にて右乳癌と診断され,当科へ紹介となった.生検標本の病理組織学的検査で,表皮内に大型の明るい泡沫状の細胞質と大きい核を有すPaget細胞を認めず,真皮乳頭および表皮釘脚に直接浸潤した浸潤性乳管癌と診断した.CTおよびFDG-PETで右腋窩から縦隔,両肺門部に及ぶリンパ節転移所見を認め術前化学療法を開始した.FEC(fluorouracil, epirubicin, cyclophosphamide)3コース投与後に転勤の為転院となった.男子乳癌で皮膚浸潤所見として長期間に及び乳頭落屑を呈する症例は極めて稀であるので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 鳥羽山 滋生
    2008 年 69 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は,日齢1の男児.在胎35週6日3,100g頭位自然分娩出生.術前胸部レントゲンおよびCTでは,右胸腔2/3を占める後縦隔腫瘍で,長管骨や他の骨と思われる石灰化像存在.大動脈造影では,右肋間動脈から栄養される腫瘍像存在した.日齢3開胸手術施行.右後縦隔腔に胸膜と白い被膜に被われた右胸腔2/3を占める腫瘍摘出.摘出腫瘤は,7.5×6.0×5.0cm,79gであった.腫瘍の外観は,胎児様構造を示し,全表面が皮膚で被われており,頭部と思われる部分には目を思わせる突起物や,毛髪があり,躯幹と思われる部位より上肢下肢がでており,その先端には,指,爪を認めた.病理学的検索では,毛髪を伴う皮膚,脊髄を伴う脊椎,脂肪組織,横紋筋組織,脳,脈絡膜,消化管,長管骨,関節,爪などを認めた.以上から,胎児内胎児の中でも非常に稀な右後縦隔胎児内胎児(Lordの分類のproved case)と診断した.
  • 市川 伸樹, 高橋 周作, 広瀬 邦弘, 神山 俊哉, 佐治 裕
    2008 年 69 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.2005年12月,胸部レントゲン写真で指摘された左胸部異常陰影の精査目的に当院紹介初診.下部後縦隔内,食道背側,大動脈左側の領域を主座に,後縦隔の空間を押し広げるようにして広がる,浸潤傾向に乏しい径13cm大の腫瘤を認めた.術前診断は,内部に脂肪濃度含む非上皮性腫瘍として,脂肪肉腫を第一に考えた.2006年2月手術施行.周囲臓器への浸潤は認めず,臓器を合併切除することなく腫瘍を摘出しえた.術後経過は良好で術後12日で退院となった.病理所見より,脱分化型脂肪肉腫の診断に至った.追加治療なく経過観察中であるが,手術後15カ月の現在,無再発生存中である.今回,われわれは,後縦隔原発の脱分化型脂肪肉腫という稀な1症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.
  • 桜井 学, 今牧 瑞浦, 石田 厚, 宮崎 勝
    2008 年 69 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.狭心症状出現し,冠動脈造影検査で冠動脈病変の進行を認めたため手術となった.手術は非体外循環下冠動脈バイパス術1枝(左内胸動脈-前下行枝)を施行した.術後は一過性心房細動が時々発生していたが特に血行動態は異常なくリハビリも順調に進んでいた.術後10日目,術後心エコー検査を施行したところ経食道エコーで右心房内に三尖弁に接して浮遊する棒状血栓を認め,右心房内血栓と診断.右心負荷所見は認められなかったが肺血栓塞栓症を考慮し,緊急に血栓溶解療法を開始した.MD-CTでは右肺動脈内に小血栓が散在していた.心エコー検査でフォローを続け,溶解療法8日目の経食道エコー検査で右心房内血栓消失,MD-CT施行で肺動脈内血栓消失を確認した.術後49日目軽快退院となった.本症例のような潜在的な術後の肺血栓塞栓症は術後の非特異的な症状ということだけで見落とされている可能性もある.
  • 佐近 雅宏, 三上 和久, 関 仁誌, 宗像 康博, 齋藤 学, 西村 秀紀, 保坂 典子
    2008 年 69 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    放線菌は口腔内に常在する通性嫌気性菌で内因性に感染し,顔面頸部や呼吸器に膿瘍をつくる.今回われわれは直腸癌肺転移と鑑別困難であった肺放線菌症の1例を経験したので報告する.
    症例は70歳の男性.胸部異常陰影を指摘され来院し,胸部CTでは左上葉に内部に嚢胞様変化のある32mm大の腫瘤影があり,気管支鏡検査も施行されたが細胞診でclassI,細菌培養でも一般細菌・好酸菌ともに陰性の所見であった.PET検査を施行し,直腸と左肺上葉に強い集積を認め,直腸癌,直腸癌肺転移の診断で下部消化管内視鏡検査も施行した.直腸Rbに2型癌を認めた.直腸癌,左肺転移の診断にて腹腔鏡補助下直腸超低位前方切除術,開胸左肺上葉切除術を一期的に施行した.病理組織学的検討により肺放線菌症の診断となった.無症候性の結節影を形成する肺放線菌症は,肺癌や転移性肺癌との鑑別が難しく常に鑑別上念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 松永 宗倫
    2008 年 69 巻 1 号 p. 44-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,男性.幼児期に気管支喘息の治療歴があるが,ここ数年は自覚症状がなく特に治療はしていなかった.呼吸苦,咽頭痛を主訴に当院受診した.両側頸部,上胸部に皮下気腫を認め入院.胸部X線写真では縦隔気腫,皮下気腫,胸部CT写真では硬膜外気腫が認められた.気胸,ブラ,ブレブなどの異常所見は認めなかった.硬膜外気腫については,胸部X線写真では,認識不能ではあったが,胸部CTにて描出可能となった.診断上,胸部CTはきわめて有用であった.
    治療は,安静にし,気管支喘息に対する治療を行った.保存的治療にて,気管支喘息発作は,入院後翌日には消失した.咽頭痛や鼻閉感等の症状も消失し,第4病日に自宅退院となった.
    硬膜外気腫を合併した気管支喘息は稀であり,非常に興味ある症例であると思われる.
  • 渋谷 雅常, 竹内 一浩, 岩内 武彦, 木村 健二郎, 内間 恭武, 康 純明
    2008 年 69 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.平成13年1月に胸部下部食道癌にて食道亜全摘・胸骨後再建による頸部食道胃管吻合術を施行した.平成18年1月初旬より全身倦怠感が出現し精査の結果心嚢液の貯留が認められ精査加療目的で当院外科入院となった.入院後の内視鏡検査および造影検査の結果,胃管潰瘍が心嚢へ穿通したと診断し,絶食および抗潰瘍薬投与による保存的治療を開始した.心嚢液貯留による心タンポナーデや心嚢炎に対しては経皮的心嚢ドレナージで心不全や感染コントロールを行った.ドレナージにより心機能は保たれ,感染コントロールも良好で入院から約1カ月後瘻孔の閉鎖を確認したのち経口摂取を開始した.近年食道癌に対する治療法の進歩により長期生存例が増え,それに伴い再建胃管潰瘍の報告も散見されるようになってきた.しかし心嚢へ穿通し保存的に軽快した症例は比較的稀であるため文献的考察を加えて報告する.
  • 山中 健也, 藤井 英明, 真島 奨, 鍛 利幸, 嶌原 康行, 市島 國雄
    2008 年 69 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性.4年前に胃の多発性ポリープを指摘された.1年後の検査では変化を認めなかったが,4年後の検診にて,ポリープの増加増大と胃癌の合併を認めた.ポリープは過形成性ポリープと診断され,大腸カメラにてポリープを認めなかった.胃全摘術を施行し,ML,3型,50×40mm,T2N3M1(LYM)stageIV(胃癌取扱い規約),病理組織結果では低~中分化型腺癌で,ポリープは若年性ポリープと診断された.TS1による補助化学療法を施行したが,術後5カ月目に肺転移をきたし,10カ月目に死亡した.胃限局性若年性ポリポーシスは,malignant potentialが示唆されており,胃癌の合併が早期に発見されにくい場合がある.進行胃癌で再発見される危険性を考慮すると無症状であっても胃全摘術が選択されうると考えられた.
  • 安井 直子, 岩崎 善毅, 大橋 学, 布部 創也, 岩永 知大, 岩上 志朗
    2008 年 69 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.検診で施行された上部消化管内視鏡検査で胃体部大彎の進行胃癌を指摘され紹介入院となった.術前精査中に顔面皮脂腺腫と上衣下結節を認めたことから結節性硬化症が疑われた.腎臓の血管筋脂肪腫(以下AML)や肺リンパ脈管筋腫症などの結節性硬化症に特徴的な所見も認められた.また,腹部超音波検査で肝腫瘍を認め,CTおよびMRIにて脂肪成分や血管成分の含有が示唆され,胃癌の肝転移を完全には否定し得なかったが,肝AMLの合併が最も疑われた.胃癌に対し幽門側胃切除術,確定診断のために肝部分切除を施行した.病理組織学的検索では深達度MP,ステージIIIAのIIc類似進行癌,肝腫瘍は肝AMLと診断された.結節性硬化症に併存した消化器癌症例において肝腫瘍を認めた場合,鑑別診断として肝転移の他,肝AMLを念頭に置く必要があると考えられた.
  • 富永 恒平, 生島 裕文, 根津 理一郎, 吉川 澄, 土居 敏明, 川野 潔
    2008 年 69 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    環状紅斑を契機に発見された超高齢者胃癌の1切除例を経験したので報告する.症例は97歳,男性.主訴は体幹部から四肢にかけての皮疹.平成14年8月頃より全身に掻痒感を伴う皮疹が出現,近医にてステロイド外用薬処方されるも改善傾向は認められなかった.平成17年10月当院皮膚科受診,皮疹の特徴より環状紅斑(匍行性迂回状紅斑)と診断された.内臓悪性腫瘍の合併が疑われ精査するに,上部消化管内視鏡検査にて胃角部小彎に0-IIa+IIc病変を認めた.生検より中分化型腺癌と診断され,同年12月幽門側胃切除術施行した.皮膚掻痒感は術後2週目より軽減,術後2カ月目には紅斑は体幹部,四肢とも完全に消退した.
    本症例の如く,環状紅斑を伴った悪性内臓疾患症例は比較的稀であり,本邦では39例の報告をみるにすぎない.自験例はStageIBの早期胃癌で,97歳と最高齢であった.
  • 早川 善郎, 高金 明典, 小林 慎, 目黒 英二, 入野田 崇, 池田 健
    2008 年 69 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    乳癌の消化管転移は稀である.今回,われわれは乳癌手術とほぼ同時期に,十二指腸への転移をおこした1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.乳癌術後に化学療法施行後,遷延する悪心・嘔吐を認め,精査にて,十二指腸壁の肥厚・浮腫性変化を認めた.内視鏡下生検にて,乳腺浸潤性小葉癌と同様の細胞が認められ,乳癌十二指腸転移と診断した.高度の悪心・嘔吐のため,食事摂取不能であったため,腹腔鏡補助下に胃・空腸バイパス術,およびホルモン療法目的に卵巣摘出術を行った.術後,1年6カ月経過するが,十二指腸壁の肥厚も軽減し,他臓器転移も認めず,化学療法継続中である.
  • 潮 真也, 大亀 浩久, 間遠 一成, 増田 英樹, 高山 忠利
    2008 年 69 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.虫垂炎の診断で虫垂切除を施行したが,術後の腹腔内膿瘍が疑われために再手術を行った.開腹所見では,膀胱直腸窩に嚢胞を認め,回腸と嚢胞との間には索状物が連なり,嚢胞には炎症性変化と膿瘍を伴っていた.手術は,嚢胞を含め小腸部分切除を行った.病理診断は,索状物と嚢胞が腸管の構造を有した,回腸末端部に位置するMeckel憩室炎であった.
    本症例は憩室の大部分が線維状に索状化し,しかも10cmにもおよび,本来の憩室とは極めてかけ離れていた.このような場合,たとえ開腹しても憩室炎の存在を診断するのが難しい場合があると思われる.したがって,術前診断が虫垂炎で,開腹時虫垂炎の所見がほとんど認められない場合には,本症例のようなMeckel憩室炎の存在も考慮すべきであると思われた.
  • 座波 久光, 川上 浩司, 稲嶺 進, 當山 鉄男, 與那覇 俊美, 大城 直人
    2008 年 69 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.左乳癌術後約2年目に頸部リンパ節,骨転移,左癌性胸水が出現し,全身化学療法を開始した.化学療法開始後3カ月目に突然腹膜炎を併発し,緊急開腹術を行ったところ,転移性腫瘍による小腸穿孔が原因であった.術後いったんは軽快したが,その後すぐに癌性髄膜変を併発して死亡した.転移性乳癌による小腸穿孔は極めて稀だが,潜在的な消化管転移症例は多数存在するため,転移性乳癌の予後が延長するに従い,今後さらに注意が必要である.
  • 高木 哲, 三澤 良輔, 内川 裕司, 飯沼 伸佳
    2008 年 69 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    成人の腸回転異常症は通常無症状のため,他の消化器疾患の精査や開腹時に偶然発見されることが多い.今回われわれは腸回転異常症の患者の急性腹症の手術に際し,術前診断に苦慮した急性虫垂炎の1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.腹痛を主訴に入院.血液検査,CTなどから腸回転異常症と,それが関係した腸閉塞と診断し,手術施行.その結果,虫垂炎の穿孔による腹膜炎とそれによる麻痺性イレウスであった.腸回転異常を伴う場合,急性腹症の術前診断には注意が必要である.
  • 花村 徹, 荒井 義和, 高田 学, 山口 敏之, 小松 信男, 橋本 晋一, 小山 正道
    2008 年 69 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢腫(Mucocele)は虫垂内腔に粘液が貯留し,嚢腫状に腫大する疾患である.今回われわれはどこにも癒着がなく,虫垂粘液嚢腫が回腸に巻絡し,イレウスを呈した1例を経験したので報告する.
    症例は94歳,女性,で腹痛を主訴に来院.腹部CTでイレウスと診断され,緊急開腹術が施行された.開腹したところ,虫垂先端に直径3cmの腫瘤がみられ,これが振り子の錘のごとく回腸末端付近の小腸に巻きつき血行障害をきたしていた.腫瘤は虫垂の先端にあり,虫垂内腔と非交通性でゼリー状物質を入れた嚢胞性病変で,病理組織学的には虫垂粘液嚢腫で悪性所見はなかった.
    われわれが検索した限りでは虫垂粘液嚢腫が絞扼性イレウスを誘起した本邦報告例は本症例で16例目であり,稀で興味深い病態と考えられた.
  • 竹内 聖, 柏木 裕貴, 藤田 博崇, 近藤 昭宏, 岡田 節雄
    2008 年 69 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌の中でも非常に稀な低分化腺癌の1例を経験した.症例は57歳,男性.繰り返す腹部膨満と下痢を主訴に当院を受診した.精査の結果,回腸末端部狭窄によるイレウスと診断した.保存的治療を行ったが軽快せず,FDG-PET検査で陽性所見を呈したことから手術を施行した.術中所見で中間リンパ節(202番)の腫大を認めたが迅速組織診で癌の転移は認めず,回盲部切除術を施行した.病理学的検査で非充実型の虫垂原発低分化腺癌であった.深達度はSSで,リンパ節に転移を認めずStageIIであった.原発性虫垂癌は術前診断が非常に困難である.これまで原発性虫垂癌のFDG-PET所見についての本邦報告例はなく,colonic typeの虫垂癌では有用な検査の一つに成り得ると考えられた.
  • 伊藤 卓資, 河村 貴
    2008 年 69 巻 1 号 p. 96-99
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.左上腹部痛と嘔吐認め,近医を受診し急性胃腸炎と診断され入院した.翌日症状が軽快し一旦帰宅したが,腹痛が続くため当院を受診した.腹部単純CTにて膵辺縁が不明瞭で周囲に液体貯留を認め,急性膵炎を疑い入院した.翌日ショック症状とHbの急激な低下を認めた.腹部造影CTにて膵体尾部周囲の液体貯留内に血管と同程度に造影される直径25mmの結節を認め,上腸間膜動脈からの分枝の動脈瘤破裂と診断し,緊急腹部血管造影を施行した.上腸間膜動脈本幹から中結腸動脈より中枢で分岐する副中結腸動脈を認め,その末梢に造影剤の血管外流出を伴う仮性動脈瘤を認めた.副中結腸動脈瘤破裂の診断でマイクロコイルによる動脈塞栓術を施行し,救命しえた.副中結腸動脈瘤破裂は非常に稀であり,自験例は本邦報告6例目であった.
  • 前山 良, 八谷 泰孝, 佐古 達彦, 福山 時彦, 平野 豊
    2008 年 69 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    成人腸重積症は比較的稀な疾患であり,腫瘍や炎症に起因することが多い.今回われわれは,S状結腸脂肪腫による逆行性腸重積症を生じた1例を経験したので報告する.
    症例は68歳,女性.腹部膨満,腹痛,下血を自覚し近医を受診し大腸内視鏡を施行したところ,S状結腸に粘膜下腫瘍を認めた.保存的治療で症状は一時軽快したが,約2週間後に便秘と腹痛を訴え当院へ紹介された.腹部CT検査で下行結腸に重積を起こしtarget sign様の拡張した結腸を認めた.その口側先端にはfat densityの腫瘤を認めた.注腸による整復を試みたが解除できず,同日緊急手術を施行した.開腹するとS状結腸の腫瘍を先進部とし下行結腸に向かって逆行性に重積していた.用手的に重積を解除し腫瘍を含むS状結腸を切除した.切除標本では,4cm大の粘膜下腫瘍を認め,その表面には不整形潰瘍を形成していた.病理組織学的には良性の脂肪腫であった.術後経過は良好で術後15日目に退院した.
  • 林 忠毅, 中村 利夫, 倉地 清隆, 中島 昭人, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2008 年 69 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.2003年5月に潰瘍性大腸炎(UC)と診断された.内科治療を施行されたが奏効せず,症状の増悪を認めたため2003年7月14日結腸全摘術および回腸瘻,直腸粘液瘻造設術を施行した.同年8月20日頃よりストーマ周囲の皮膚に疼痛を伴う発赤,びらんが出現し同25日には約28×60mmの皮膚潰瘍形成を認めストーマ周囲壊疽性膿皮症(PPG)と診断された.プレドニンの内服およびストーマ管理の工夫によってPPGは一時軽快したが,UCの増悪とともに再度皮膚潰瘍の拡大を認めた.2004年9月22日残存直腸切除術,回腸嚢肛門吻合術,膿皮症部皮膚切除および左下腹部に双孔式回腸瘻造設術を施行した.再手術後,壊疽性膿皮症の再燃は認めていない.
  • 杉森 順二, 泉 俊昌, 森川 充洋, 林 泰生, 田口 誠一, 河原 栄, 山口 明夫
    2008 年 69 巻 1 号 p. 110-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.3日前より持続する腹痛で当院紹介受診となった.上腹部に手拳大の腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた.血液検査では軽度の炎症反応を認めるのみであった.腹部CT検査でtarget signを認め,横行結腸の腸重積と診断した.直ちに注腸造影検査を施行したが,重積は解除されていた.後日行った大腸内視鏡検査で,横行結腸に3cm大の赤色調の表面平滑な隆起性病変を認めた.この病変が先進部となって腸重積を引き起こしたものと考えられ,開腹手術を施行した.病理組織検査では深在性嚢胞性大腸炎と診断された.深在性嚢胞性大腸炎が,横行結腸に腸重積を引き起こしたとの報告はなく,極めて稀な症例と考えられた.
  • 島影 尚弘, 長谷川 潤, 岡村 直孝, 田島 健三
    2008 年 69 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    大腸原発の内分泌細胞癌はきわめて少なく報告例の多くは直腸癌である.今回われわれは,腸重積にて発症した盲腸原発の内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.
    症例は56歳,男性.1999年10月腹痛を主訴に当院内科を受診し,CT検査にて回盲部の腸重積と診断された.同時に多発性肝腫瘍も認めており悪性腫瘍が原因の腸重積と考え結腸右半切除を施行した.病理組織診断にて盲腸原発の内分泌細胞癌と診断された.術後肝動注療法も含めて多くの化学療法を行ったが効果なく術後6カ月で死亡された.内分泌細胞癌は極めて悪性度が高く手術適応も含めいかなる治療が有効かは今後の課題と考えられた.
  • 白畑 敦, 幕内 幹男, 真田 裕
    2008 年 69 巻 1 号 p. 120-123
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.2006年7月に腸閉塞の診断で当院紹介となった.腹部CT検査で上行結腸から下行結腸にかけてtarget like sign,注腸検査で鳥の嘴状狭窄を認めた.大腸内視鏡検査で下行結腸内腔に正常粘膜を被った隆起性病変を認め,腸重積の診断で手術を施行した.術中所見で盲腸部を先進部とし下行結腸まで重積した腸管を認め,Hutchinson手技で整復した.さらに盲腸先進部に腫瘍を触知したため,盲腸癌と診断し右結腸切除術を施行した.術後病理所見はwell differentiated adenocarcinomaで深達度は固有筋層までだった.
    今回われわれは下行結腸まで重積した盲腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 高原 善博, 小笠原 猛, 大塚 恭寛, 土地 岳彦, 細川 勇, 高橋 誠
    2008 年 69 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    S状結腸sm癌術後6年目の骨盤腔内巨大リンパ節転移に対する1切除例を経験したので報告する.症例は69歳の男性で2001年に早期S状結腸癌に対しEMRを施行.病理検査結果で深達度sm,margin unclearであったため追加切除目的に腹腔鏡下S状結腸切除術(D1)施行.6年後の2007年10月,突然の高熱を認め当院受診し緊急入院となった.CT・MRIで骨盤腔内に10×10cmの巨大腫瘍を認め,大腸内視鏡にてS状結腸粘膜面のびらんおよび注腸検査にてS状結腸の圧排像を認めた.エコー下針生検にてmoderately differentiated adenocarcinomaの診断となり,腫瘍を含めたS状結腸切除術(Hartmann型)施行.病理検査の結果はS状結腸癌のNo.241に相当するリンパ節転移であった.術前に高値を認めた腫瘍マーカーは術後正常値となり,現在外来にて化学療法中である.sm癌根治術後の単発リンパ節再発は極めて稀であるが,分化度や脈管/リンパ管侵襲によりリンパ節転移高危険群と判断される症例には術後の定期的な再発巣検索のためのサーベイランスの必要性が示唆された.
  • 田村 孝史, 山本 雅由, 野渡 剛之, 高野 恵輔, 柳澤 和彦, 大河内 信弘
    2008 年 69 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    様々な成因によりBacterial translocationが起こることが知られているが,実際に敗血症性ショックにまでいたる経験をすることは稀である.今回われわれはBacterial translocationによる敗血症が疑われた大腸癌術後イレウスの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.患者は59歳,男性.リウマチ性多発筋痛症の加療目的で当院内科入院中,横行結腸癌を指摘され手術目的に転科となった.右半結腸切除術施行後3日目にイレウスを発症しイレウス管を挿入した.症状改善し術後9日目でイレウス管を抜去し,その後経過良好であったが術後17日目に突然の40℃の発熱,血圧の低下を認め敗血症性ショックと診断し治療を開始した.血液培養の結果でE.aerogenesが検出された.症状改善するも術後24日目に再度敗血症性ショックを呈し治療を再開した.血液培養の結果で再びE.aerogenesを認めた.経腸栄養を開始し,薬剤感受性の高い抗菌薬を長期間使用することで症状軽快し,再発所見なく転科となった.
  • 小田 晃弘, 渡部 通章, 横山 正人, 衛藤 謙, 小川 匡市, 矢永 勝彦
    2008 年 69 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の女性.排便時出血,肝門部腫瘤を主訴に前医を受診し,平成18年7月,直腸癌および肛門部腫瘤の診断で当科を紹介受診した.肛門部腫瘤は生検で中分化型腺癌と診断され,直腸癌と同じ組織型であり,以前から痔瘻を認めていた.このため直腸癌からの転移性痔瘻癌と診断し,平成18年7月下旬に腹会陰式直腸切断術,D3郭清を施行した.病理組織診断で,stageIIIbの直腸癌および組織像の類似性から直腸癌の管腔内転移から発症した転移性痔瘻癌と診断された.転移性痔瘻癌の発症機序として痔瘻組織に対する癌のimplantationが考えられた.文献的考察を加えて報告する.
  • 青葉 太郎, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 久留宮 康浩, 法水 信治
    2008 年 69 巻 1 号 p. 140-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    右胃大網動脈(RGEA)を使用した冠動脈バイパス手術(CABG)後に発生した転移性肝腫瘍に対し肝外側区域切除術を施行した症例を経験した.症例は77歳,男性.6年前に心筋梗塞に対して当院で右胃大網動脈を用いたCABGを施行した.4年前にS状結腸癌に対して腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行している.外来通院中にCTにて肝外側区域に転移性肝腫瘍を認めたため肝外側区域切除を施行した.RGEAグラフトは肝表面に癒着していたが注意深く剥離を行い温存した.術中,術後に合併症は認めなかった.当院では本例を含めRGEA使用CABG後の上腹部手術を7例経験しているが,全例RGEAグラフトを温存しえた.RGEAグラフト使用CABG後の上腹部手術症例においてはグラフトの温存の可否や術式に関して術前の詳細な検討が必要である.
  • 三橋 登, 吉富 秀幸, 木村 文夫, 清水 宏明, 吉留 博之, 宮崎 勝
    2008 年 69 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術の合併症として肝膿瘍の報告は殆ど無い.今回われわれは腹腔鏡下胆嚢摘出術後,一時的肝動脈血流障害によると思われる肝膿瘍をきたした1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.主訴は右季肋部痛.数回の右季肋部痛発作を繰り返し当科受診.諸検査にて胆嚢結石・胆嚢炎と糖尿病,脂肪肝を認めた.胆嚢結石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後発熱と軽度肝障害が遷延したものの自然に軽快し,術後10日目に退院となった.術後24日目に腹痛を認め当科受診,超音波検査・CTより肝前区域膿瘍の診断となる.肝動脈,門脈の血流は良好,胆管拡張は認めなかった.炎症反応は軽度であり,外来にて抗生剤の内服を開始.以後症状は軽快し術後46日目のCTで膿瘍は著明に縮小した.本症例では,肝動脈右前区域枝の一時的血流障害により肝膿瘍が発生したと考えられた.
  • 中本 博之, 箕浦 俊之
    2008 年 69 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.腹部CT検査にて総胆管の拡張を指摘されたため内視鏡的逆行性胆管造影を施行され,総胆管の拡張および最大径約3cmのカリフラワー状の隆起性病変を認めた.腫瘍径より悪性腫瘍も完全に否定出来ないため手術を施行した.まず総胆管を切開,腫瘍の一部を摘出し術中迅速病理組織検査を行ったところadenomaの所見とされるも,高分化なadenocarcinomaの可能性も完全に否定出来ないとされたため,胆管断端に悪性所見のないことを確認の上,胆嚢摘出,総胆管切除,胆管空腸吻合術を行った.病理組織検査ではpapillary adenomaで悪性所見は認めなかった.肝外胆管に発生する良性腫瘍性疾患は,たとえ良性であっても再発することがあり,良悪性の鑑別がつかない場合は手術療法を考慮すべきであると思われた.
  • 稲垣 均, 横山 正, 菊池 学, 横山 泰久
    2008 年 69 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.既往歴に特記すべきものなし.嘔気,食欲不振を主訴に来院.上部内視鏡検査にて,巨大な腫瘍による十二指腸内の閉塞様所見を認めたため,入院となった.入院時検査所見では,軽度肝機能障害を認めるのみで,腫瘍マーカーは陰性であった.腹部超音波では膵頭十二指腸領域に4cm大の腫瘍を認め,ERCPにて,十二指腸乳頭部の巨大な腫瘍であり,生検では,管状腺腫であった.超音波内視鏡所見では,十二指腸壁内に限局していると判断された.以上から,十二指腸乳頭部腫瘍の診断にて,膵頭十二指腸第II部切除術を行った.病理診断の結果,十二指腸内胆管を主座に十二指腸内へ進展した乳頭管状腺腫であり,悪性所見を認めなかった.総胆管腺腫は,稀な疾患であり,なおかつ十二指腸内へ進展した巨大腫瘍を呈した症例の報告は,検索しえた範囲内ではなかった.
  • 宮垣 博道, 中森 正二, 柏崎 正樹, 池永 雅一, 辻仲 利政, 真能 正幸
    2008 年 69 巻 1 号 p. 160-165
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    52歳,男性.平成16年11月背部痛出現し,近医受診,急性膵炎と診断された.腹部CTにて,膵頭部に3cm大の腫瘍と両側副腎および傍大動脈リンパ節腫大を認め,膵管造影検査にて膵体部主膵管の狭小化とその尾側膵管の拡張を認めた.遠隔転移を伴う進行膵癌と診断,化学療法を施行するも肺炎を併発し,1コースにて中止となり,精査加療目的で当科受診となった.入院時胸部CTにて右上葉に腫瘍像あり,Horner症候群,上大静脈症候群を認めた.頸部リンパ節生検にて,小細胞癌のリンパ節転移と診断され,小細胞肺癌,膵,副腎転移と判断し,Cisplatin/Irinotecan療法および頸部・上縦隔への放射線治療を行った.治療開始約1カ月後,Horner症候群,上大静脈症候群は消失,化学療法2コース終了後,肺の腫瘍は75%縮小,膵および副腎の病巣はほぼ消失し,退院した.化学療法を外来にて継続するも再燃,初診時より約11カ月後原病死した.急性膵炎を初発症状とした小細胞肺癌を経験したので報告する.
  • 成田 匡大, 山本 俊二, 岡本 正吾, 坂野 茂, 山本 正之
    2008 年 69 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    脾捻転は非常に稀な腹部救急疾患であるが,その原因はほとんどが遊走脾によるものである.今回われわれは脾嚢胞経過観察中に脾捻転をきたした1手術例を経験したため報告する.症例は32歳,女性.20歳時に脾嚢胞を指摘されたが無症状のため放置していた.2002年8月,左上腹部痛を主訴に来院.腹部超音波およびCTにて7cm大の脾嚢胞を認めた.検査後痛みは軽減したため外来にて経過観察となったが,同年10月に激しい痛みを自覚し救急受診し入院となった.腹部CT検査にて脾捻転が疑われたため腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.術中所見では,脾臓は脾門部を中心に45°背側に捻転していた.術後経過良好で術後9日目に退院した.術後病理組織学的検査の結果,嚢胞は脾仮性嚢胞であり,脾臓実質には捻転による急性の梗塞像がみられた.
  • 森 洋一郎, 桑原 義之, 篠田 憲幸, 木村 昌弘, 三井 章, 石黒 秀行
    2008 年 69 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    われわれは比較的稀なCA19-9産生脾嚢胞に対してLaparoscopic dome resection(以下LDR)を施行した1例を経験した.症例は23歳,女性.右季肋部痛を主訴に当院初診となった.精査したところ脾上極に13×9cmの嚢胞を認め,血清CA19-9 414U/mlと異常高値を示した.明らかな悪性所見は認めずCA19-9産生脾嚢胞と診断しLDRを施行した.摘出した嚢胞壁はliningする扁平上皮に被われており真性嚢胞と診断した.術後,血清CA19-9 12u/mlと正常化し現在無再発経過観察中である.
  • 渡邉 卓哉, 石榑 清, 藤岡 憲, 堀場 隆雄, 平井 敦, 伊藤 洋一
    2008 年 69 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.幼少時より軽い臍炎を繰り返していた.平成4年4月,臍から下腹部腹壁に膿瘍を形成したため,尿膜管遺残膿瘍と診断され臍,尿膜管全摘術を施行された.病理組織学的検索で腺癌を認めたため,再手術により膀胱周囲の尿膜管遺残組織と思われる部分および膀胱頂部を追加切除されたが,癌組織は認められなかった.その後平成10年4月に臍摘出部の硬結,平成11年1月に右鼠径リンパ節の腫大,平成18年4月に右下腹部腹壁の硬結,両鼠径リンパ節の腫大をきたし,局所再発が疑われ腫瘍摘出術を施行された.いずれも病理組織学的検索で,再発と診断された.平成18年8月に両側多発肺陰影と縦隔リンパ節の腫大を認めたため,多発肺転移が疑われた.テガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤による化学療法を8クール施行されたが,多発肺陰影の大きさは変化しておらず,現在も継続治療中である.
  • 山崎 泰源, 板野 聡, 寺田 紀彦, 堀木 貞幸, 遠藤 彰
    2008 年 69 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.5年前より右鼠径部に腫瘤を自覚,平成18年に入り腫瘤が圧痛を伴い周期的に大きくなるといった症状が加わったため当院外来を受診となった.触診にて右鼠径部に3cm大・弾性硬な腫瘤を触知,超音波・骨盤部CTよりNuck管水腫,粘液腫等を疑いインフォームドコンセントの上,診断・治療目的に手術を施行した.腫瘤は子宮円索末梢側に存在したため,子宮円索を含めて腫瘤を切除した.病理組織検査にて組織内に子宮内膜類似組織が混在しており,子宮内膜症と診断された.本症は外性子宮内膜症のうち約0.8%と比較的稀な疾患であり診断に難渋することが多いが,充分な病歴の聴取により症状と月経周期との関係を把握することが診断のポイントであると考えられる.鼠径部の腫瘤を主訴に来院した症例の診察にあたっては本症を鑑別診断の一つにあげ慎重な病歴の聴取を行う必要があると思われた.
  • 茶谷 成, 布袋 裕士, 村尾 直樹, 田原 浩, 前田 佳之, 三好 信和
    2008 年 69 巻 1 号 p. 183-187
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.嘔気,腹部膨満を主訴に当院救急部を受診.CT検査にて十二指腸下行脚から水平脚の壁肥厚および同部位での狭窄を認めた.壁外の後腹膜には広範囲に低吸収陰影がみられた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸粘膜の鬱血,狭窄を認めるも,明らかな腫瘍の露出は認められなかった.第8病日に十二指腸通過障害の改善,胆嚢摘除,および確定診断目的に開腹手術を施行した.手術時,術中迅速病理検査にて悪性疾患は疑われなかったため,通過障害改善の手術を行い,臓器切除は施行しなかった.病理組織学的検査にて後腹膜脂肪織炎と診断された.術後経過は良好で,術後9日目に食事を開始し,術後18日目に退院した.
  • 大賀 純一, 岡田 一郎, 佐藤 純人, 林 征洋, 幡谷 潔
    2008 年 69 巻 1 号 p. 188-192
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.2005年7月,突然の不正性器出血をきたし当院婦人科を受診.腹部MRIを施行したところ骨盤内に巨大腫瘤を認めたため,手術目的にて外科に紹介となった.MRIにおいて腫瘍は周囲との境界は明瞭であり,子宮および直腸由来の可能性は否定的であった.また内部には低信号域と高信号域を認め,壊死巣および出血巣と考えられた.以上より中心に出血巣を伴う骨盤内腫瘍と診断し,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は,仙骨前面の後腹膜に固定されており15.0×13.5×7.7cm大,弾性硬~軟で周囲との境界は明瞭であった.摘出標本の免疫染色でKIT陽性であったため最終的にextragastrointestinal stromal tumor(以下EGIST)と診断した.術後,合併症等なく順調に経過し10日目に退院した.EGISTの報告例は非常に少なく,今後は症例の蓄積とともにその発生機序や治療,予後について活発な議論が必要であると考えられた.
  • 鈴置 真人, 富山 光広, 真木 健裕, 岡村 圭祐
    2008 年 69 巻 1 号 p. 193-196
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    術前にWinslow孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡補助下に手術を施行しえた1例を経験したので報告する.症例は35歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に救急病院を受診した.急性胃炎として投薬を受けたが,症状が改善しないため,当院を紹介され入院となった.腹部CTではWinslow孔から腸管が嵌入し,網嚢内に拡張した小腸が認められ,Winslow孔ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.手術は腹腔鏡下に嵌頓小腸の整復を試みたが困難なため,用手補助的に嵌頓小腸を網嚢外に脱転した.約15cmの小腸が壊死に陥っており,壊死小腸の切除を行った.明らかなWinslow孔の開大は認められず,縫縮は行わなかった.
  • 荒木 靖三, 野明 俊裕, 永江 隆明, 藤 勇二, 岩谷 泰江, 中川 元典
    2008 年 69 巻 1 号 p. 197-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    女性の会陰ヘルニア(perineal hernia)にはlevator herniaや,泌尿器生殖器裂孔と直腸肛門裂孔からヘルニアが発生すると考えられる.今回,骨盤内多臓器造影を行い,会陰ヘルニアの解剖学的部位に基づく分類を行い,会陰部脱出(感)との関連性について検討した.
    会陰部脱出(感)を主訴に当院を受診した46症例(66病変)において骨盤内多臓器造影検査でlevator herniaに分類される直腸後方S状結腸瘤を4.5%,泌尿器生殖器裂孔ヘルニアに分類される膣後方ヘルニアを19.7%,膀胱脱3.0%,pelvic quasi hernia 1.5%,直腸肛門裂孔ヘルニアに分類される完全直腸脱を53.0%,完全直腸脱の直腸内にヘルニア嚢を有するmassive rectal prolapseを10.6%,不完全直腸脱を4.5%に併発していた.
    会陰ヘルニアの治療方針において骨盤内多臓器造影検査は会陰ヘルニアの機能的,形態的診断には欠かせない検査方法であることが示唆された.
  • 江口 隆, 近藤 竜一, 吉田 和夫, 天野 純, 浅野 功治, 石井 恵子
    2008 年 69 巻 1 号 p. 203-207
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    両側に異時性に発生し,デスモイドとの鑑別が問題となった肩甲下部弾性線維腫の1例を経験した.症例は50代,男性.2000年に前医にて右肩甲下部腫瘤摘出術を施行され,デスモイドと病理診断された.2006年,左肩甲下部の腫瘤および同部の痛みを自覚し,デスモイドが疑われ,当科紹介となった.CT,MRI所見から弾性線維腫と考えられ,症状を有していたため腫瘤摘出術を施行した.病理所見ではelastofibroma fiberの増生を認め,弾性線維腫と診断した.前医にて切除した対側の腫瘤も肩甲下部に発生しており,弾性線維腫の可能性があると考えられたため,病理所見を再度検討し,弾性線維腫と診断した.肩甲下部に発生した腫瘤では,常に弾性線維腫を念頭において診断・治療を行うべきであるが,術式・予後が異なるデスモイドなどとの鑑別が困難な場合もあり注意を要すると考えられた.
  • 川嶋 八也, 片桐 秀元, 佐々木 貴浩, 宮島 伸宜, 大坪 毅人
    2008 年 69 巻 1 号 p. 208-212
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.既往歴に特記事項なく婦人科癌検診にて子宮筋腫を指摘された.精査目的で当院婦人科で骨盤MRI検査を施行したところ,骨盤部腫瘤が認められたため当科を紹介され受診した.自覚症状はなく直腸診でRb右壁側に壁外からの圧排を認めた.身体所見および画像より会陰部軟部腫瘍と診断.腰椎麻酔下に腫瘍切除術を施行した.硬く充実性の腫瘍を周囲の組織から完全に剥離し摘出した.術後経過は良好で術後3日目に退院.術後,病理組織検査ではGrade1>2の血管周皮腫と診断された.血管周皮腫には良性,悪性があるがその鑑別は必ずしも容易ではなく,概して潜在的悪性と考えられている.今回われわれは会陰部に発生した血管周皮腫を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
会報
平成19年度本学会概要
編集後記
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