2009 年 70 巻 11 号 p. 3294-3298
症例は75歳,男性.頻回の嘔吐を主訴に近医を受診,腹部造影CTで十二指腸に異常所見を指摘され当科を紹介受診した.腹部CT所見では十二指腸内に境界の明瞭な5cm大の円形腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡検査所見では胃穹窿部から胃角部にわたる索状物が認められ十二指腸球部へ消失していた.有茎性胃腫瘍の十二指腸内嵌頓と診断し内視鏡下でスネアによる摘出を試みたが,内視鏡的整復は困難で開腹術を行った.開腹すると胃穹窿部に腫瘍の基部と思われる壁の嵌入を認めた.用手的に嵌頓腫瘍を整復すると腫瘍は無茎性の粘膜下腫瘍であった.胃部分切除術を施行した.腫瘍は5.0cm大の充実性粘膜下腫瘍であった.病理組織学的には紡錘形細胞の増殖を認めc-kit(+),CD34(+)でGISTと診断された.Ball valve syndromeをきたした胃穹窿部GISTの1例を報告する.