日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
70 巻, 11 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
原著
  • 草薙 洋, 杉本 卓哉, 内藤 敬嗣, 杉村 幸春, 遠藤 悟史, 太田 智之, 山田 成寿, 三毛 牧夫, 加納 宣康, 成田 信
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3229-3233
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    GISTの概念は普及した感がありその臨床的取り扱いにはリスク分類が汎用されている.小腸GISTは胃GISTに比較して頻度も低く予後不良であるという報告があるが不明な点も多い.当科で切除した腫瘍径20mm以上の胃および小腸GIST 89例の臨床病理学的検討を行った.小腸GISTは胃GISTに比べ,有症状で診断されることが多かったが背景諸因子に有意差を認めなかった.観察期間中央値は30.5カ月で20例に再発を認め,19例に他腫瘍の併存を認めた.無再発生存率は5年73.1%,10年64.3%で,4年以後の再発が2割を占めた.10年生存率比較では胃群69.7%,小腸群52.1%で有意差は認めなかった(p=0.167).単変量解析では腫瘍径50mm以上,核分裂指数6以上が有意に予後不良で,多変量解析でも核分裂指数と腫瘍径が不良因子であった.また本疾患は晩期再発や併存腫瘍を念頭におくことが重要である.
臨床経験
  • 八岡 利昌, 西村 洋治, 網倉 克己, 野津 聡, 黒住 昌史, 坂本 裕彦, 田中 洋一
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3234-3239
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    目的:腹腔鏡手術における手術適応および短期成績について検討した.対象と方法:当科で2006年12月までの7年間に腹腔鏡手術がなされた106例について,深達度およびリンパ節転移診断と再発を中心にした治療成績を検討した.追跡調査期間は平均62カ月(1~108カ月,中央値63カ月)であった.当科での腹腔鏡手術適応は,結腸とRaのStage 0とIである.結果:pSSは106例中15例にみられ,深達度に関して手術適応内であったものは91例であった.リンパ節転移陽性は17例であり,手術適応範囲内は89例であった.pSSの15例中9例にリンパ節転移を認めた.再発はstageIが2例,stageIIが1例,stageIIIが2例であった.いずれも血行性転移であった.結語:深達度とリンパ節転移に関する術前正診率は約80%であった.適応内症例での短期治療成績は良好であった.
  • 黄 泰平, 藤川 正博, 安政 啓吾, 田中 恒行, 広田 将司, 西田 幸弘
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3240-3244
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    正中切開法は通常は臍をよけて切開されている.一方,欧米では臍に切開を加えても合併症に差はなく,むしろ美容上よいと報告されている.最近,臍を利用した腹腔鏡手術,豊胸術などの報告を認める.2007年2月より当科では腹腔鏡手術のみならず正中切開は臍に切開を加えてきた(臍切開法).手技の要点は,臍の最深部の直上および直下の白線に吸収糸をかけて臍がずれないように縫合閉腹する.臍の上,下の皮膚にはステープラーをかけるが,臍の皮膚は縫合しない.特有の合併症もなく,切開創が直線的であり,皮膚切開線が短縮でき,美容上よい.白線が狭い下腹部でも臍部から正中を容易に同定できる.結語:臍をよけて切るという慣習的な考えを捨て,臍切開法は一般的に行われるべき標準手技であると考える.
  • 坂部 龍太郎, 佐藤 幸雄, 佐伯 修二, 向田 秀則, 平林 直樹, 多幾山 渉
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3245-3249
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    目的:近年,Composix Kugel Patch®(CKP)を用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術は広く普及し,その有用性が報告されているが,合併症に関する報告は少ない.今回,当科で施行したCKPを用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術について検討し,合併症を中心に報告する.対象と方法:当科でCKPを用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した31例を対象とし,患者背景,臨床所見,術後合併症,手術成績について検討した.結果:合併症は3例(9.7%)に発生し,メッシュ感染2例,漿液腫1例であった.メッシュ感染の2例に対しては,メッシュ摘出術を施行した.合併症を認めた3例はbody mass index 30 kg/m2以上の高度肥満症例であった.術後再発を2例(6.5%)に経験した.結論:CKPを用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術は簡便で有用な術式であるが,特に高度肥満症例においては,メッシュ感染などの合併症に注意する必要があると考えられた.
症例
  • 佐々木 真理, 森 隆太郎, 長谷川 誠司, 簾田 康一郎, 江口 和哉, 仲野 明
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3250-3254
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に近医を受診し,精査加療目的で当院を紹介受診した.右C領域に,径4cmの弾性硬な腫瘤を触知し,マンモグラフィーでは比較的境界明瞭でspiculaを伴う高濃度腫瘤として描出された.穿刺吸引細胞診で確定診断に至らなかったが,腫瘤生検で乳癌と診断し,胸筋温存乳房切除,腋窩郭清を施行した.病理組織学的検査で低分化な上皮様悪性腫瘍細胞と硝子軟骨への化生を伴う悪性腫瘍細胞を認め,介在細胞を伴わないことから,乳腺matrix producing carcinoma(MPC)と診断した.術後アドリアマイシンとシクロホスファミドを4クール投与し,3週パクリタキセルを投与中で無再発生存中である.乳腺MPCは稀で,通常乳癌と比較して予後不良と言われているが,生物学的特性,補助療法の効果など未だ不明な点が多く,通常乳癌と区別したより有効な治療法の確立が必要であると考えられた.
  • 梅岡 達生, 木村 真士, 亀井 義明, 田村 周太, 渡辺 良平, 宮田 信熈
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3255-3258
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌は特殊型に分類され,原発性乳癌全体の1~6%をしめる比較的稀な組織型である.また原発性乳癌が出血により緊急手術になるのはきわめて稀である.今回われわれは出血にて緊急手術となった乳癌の1例を経験した.
    症例は68歳,女性.3カ月前より右乳房C領域に腫瘤を自覚していた.突然の乳房内出血のため近医受診.同日当院紹介され受診した.右乳房内出血の診断にて同日入院する.止血剤投与にて経過観察するも貧血進行,血小板低下も認められたため翌日手術施行した.右乳房切除術施行.血腫の割面を観察するに腫瘍成分が認められたため腋窩リンパ節郭清も施行した.病理組織診断は浸潤性微小乳頭癌の形態をとった粘液癌であった.術後放射線療法,化学療法,内分泌療法施行した.術後6年現在無再発生存中である.
  • 卸川 智文, 座波 久光, 與那覇 俊美, 大田 守雄, 大城 直人
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3259-3262
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    われわれは妊娠合併豊胸術後乳癌の1例を経験したので報告する.症例は43歳,女性.4年前に右乳癌に対し,胸筋温存乳房切除とティッシュエキスパンダー挿入術を施行した.術後8カ月目にインプラントによる2期的再建と,対側左乳房のインプラント豊胸術を同時に施行した.術後は内分泌療法を施行したが,挙児希望があり2年間で中止した.内分泌療法中止から2年後,妊娠第5週と同時に,対側左乳房に6mm大の癌が見つかった.まず妊娠第10週に局所麻酔下に乳房円状部分切除を施行した.病理は浸潤性乳管癌で,ER陽性,PgR陽性,HER2陰性,断端陰性であった.続いて妊娠第18週に,RI法単独のセンチネルリンパ節生検を施行し,転移は陰性だった.妊娠第38週で出産後に内分泌療法を開始した.本症例は妊娠前期に判明した早期乳癌で豊胸術後でもあり,様々な問題点を含んでいる.
  • 山際 武志, 田島 隆行, 中村 雅登, 向井 正哉, 猪口 貞樹, 幕内 博康
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3263-3266
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.9歳時に右前胸部を強打して以降,右乳房の発達不良を自覚していた.1年前より右乳房に圧痛・変形が出現し当科を受診した.右乳房全体に可動性の無いnipple tructionを有する硬結腫瘤を触知した.マンモグラフィはカテゴリー4であった.超音波検査では境界不明瞭で内部不均一な腫瘤を認め悪性腫瘍を疑う所見であった.針生検にて紡錘形細胞の増殖を認めたが確定診断は困難であった.臨床経過や画像所見から右乳癌を否定できず,右乳房腫瘤切除術を施行した.腫瘤と大胸筋との境界は不明瞭で胸筋を一部合併切除した.腫瘍の径は70×70×30mmであった.病理組織診断で胸筋由来の結節性筋膜炎と診断した.
    結節性筋膜炎は四肢に好発するが,乳房内や胸筋に発生することは稀である.過去の報告例と比較し臨床経過が長期間で腫瘍径が大きく,乳癌との鑑別に苦慮した症例であったため文献的考察を加えて報告する.
  • 青山 徹, 玉川 洋, 韓 仁燮, 藤澤 順, 松川 博史, 益田 宗孝
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3267-3270
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.2009年2月,発熱および胸部不快感を主訴に近医を受診した.近医で肺炎の診断で抗菌薬による投薬治療を受けたが,症状の改善はみられなかった.3月上旬多量の喀血がみられ当院緊急入院となった.入院時,胸部レントゲン上左中下肺野にかけてスリガラス状陰影を認めた.気管支内視鏡検査で,左上葉からの持続的な肺胞出血を認めた.内視鏡的止血が困難なため外科転科し,同日止血目的に緊急で左上葉切除術を施行した.術中所見では明らかな出血点は認められなかった.切除標本の病理所見では血管炎の所見を認めた.術後炎症反応が高値遷延し,後日入院時に測定したMPO-ANCA値が640EU以上と判明した.診断基準に基づき顕微鏡的多発血管炎と診断した.内科へ転科しステロイドパルス療法および血漿交換療法で症状は軽快した.近年,喀血を契機に診断される顕微鏡的多発血管炎の報告が増えており,鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある.
  • 佐澤 由郎, 稲沢 慶太郎, 正岡 俊明
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3271-3275
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は18歳,男性.左気胸の診断で入院となった.胸部CTで左肺尖部に多数のbullaを認め,手術適応とした.胸腔鏡下切除術中に横隔膜上縦隔側に肺葉外肺分画症を認めた.術前のCTを見直して分画肺への流入血管の評価により,切除可能と判断され,胸腔鏡下に肺尖部に続いて一期的に分画肺を切除した.下縦隔に位置し横隔膜に接する部位でも,胸腔鏡によって良好な視野で手術が可能であった.
  • 山田 響子, 西村 秀紀, 有村 隆明
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3276-3279
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.両側気胸にて他院でドレナージされた後,再び呼吸困難が出現し,当院に搬送された.ドレナージ前に完全虚脱であった右側が再膨張性肺水腫で,ステロイド投与にて改善した.状態が安定したところで,両側に胸腔鏡下ブラ切除術を施行した.術後経過は良好で,第4病日に退院した.
    再膨張性肺水腫は気胸の脱気後や,片肺換気後などに起こる血管透過性亢進型の肺水腫であり,長期の虚脱期間や,高度の虚脱などが危険因子である.治療としてはステロイドや利尿剤の投与,人工呼吸管理などが行われるが,ときに重症管理が必要となる.そのため,同時両側気胸で再膨張性肺水腫を発症すると重症化する恐れがあり,特に留意すべきである.
  • 上神 慎之介, 三井 法真, 平井 伸司, 松浦 陽介, 濱中 喜晴
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3280-3284
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    鈍的胸部外傷後に遅発性血胸をきたし緊急手術を施行したところ肋骨骨折端による横隔膜損傷が原因であった2例を経験したので報告する.症例1は34歳の男性で作業中に2mの高さから転落し受傷した.CT検査にて左肋骨骨折を認め疼痛コントロール目的で入院した.受傷後3日目排便後より左血胸の増悪を認め胸腔ドレナージを施行したが出血が続くため緊急手術を施行した.症例2は66歳の女性で普通乗用車と接触し受傷した.当院救命救急センターに搬送され両側多発肋骨骨折,肺挫傷,血気胸,胸部大動脈損傷と診断され当科紹介となり同日胸部大動脈損傷に対して緊急手術を施行した.受傷後4日目体位変換後より右胸腔ドレーンの排液が突然血性となり出血が続くため緊急手術を施行した.2症例とも横隔膜の損傷部から活動性に出血しており胸腔内に突出する肋骨の骨折端が損傷部に対応していた.
  • 星野 真人, 矢野 文章, 小村 伸朗, 岡本 友好, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3285-3288
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代,女性.アカラシアの診断にて拡張術を計2回施行されたが,一時的には改善するものの再度嚥下困難が出現したため,2008年8月に当院外科紹介となった.食道造影検査ではFlask type,GradeIIであり,腹部造影CT検査で膵体尾部に嚢胞性腫瘍を認めた.以上より,アカラシアおよび膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断にて手術を予定したが,術前に四肢の筋力低下および呼吸困難を認めるようになり,精査加療目的のため神経内科に転科した.2008年11月突然の腹痛を訴え,腹部CT検査にて腹腔内遊離ガスを認めた.汎発性腹膜炎の症状を呈していたため緊急手術を施行した.手術所見では,少量の腹水を認めたが穿孔部は確認できず,開腹ドレナージ,空腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で第14病日に神経内科に転科し引き続き原因究明を行っているが確定診断は得ることができないまま,現在は他院でリハビリを行っている.アカラシアに特発性気腹症を併発した症例は,われわれが検索した限りではこれまでに報告がなく,極めて稀であると考えられたため文献的考察を加え報告する.
  • 宮田 奈央子, 本間 陽一郎, 牛田 進一郎, 鈴木 一史, 清水 進一, 鳥羽山 滋生
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3289-3293
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    胃腸管間質腫瘍(Gastro-intestinal stromal tumor;GIST)類似の胃粘膜下腫瘍の所見を示した胃MALT(Mucosa associated lymphoid tissue)リンパ腫の1例を報告する.
    症例は28歳,女性.胃体中部大弯に徐々に増大する胃粘膜下腫瘍を認めた.内視鏡的に明らかな粘膜病変は認められず,臨床的にはGISTの可能性を考え腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.病理組織学的検索で,病変はMALTリンパ腫と診断された.本症例のような粘膜病変を伴わない粘膜下腫瘍を認めた場合,GISTの可能性を考え手術的切除を第一選択とすることが多い.MALTリンパ腫の場合には治療方針は大きく異なり,Helicobacter pyloriH. pylori)の除菌が第一選択となるため,より正確な術前の臨床診断が重要と考える.
  • 松山 隆生, 遠藤 格, 秋山 浩利, 田中 邦哉, 小野 秀高, 嶋田 紘
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3294-3298
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.頻回の嘔吐を主訴に近医を受診,腹部造影CTで十二指腸に異常所見を指摘され当科を紹介受診した.腹部CT所見では十二指腸内に境界の明瞭な5cm大の円形腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡検査所見では胃穹窿部から胃角部にわたる索状物が認められ十二指腸球部へ消失していた.有茎性胃腫瘍の十二指腸内嵌頓と診断し内視鏡下でスネアによる摘出を試みたが,内視鏡的整復は困難で開腹術を行った.開腹すると胃穹窿部に腫瘍の基部と思われる壁の嵌入を認めた.用手的に嵌頓腫瘍を整復すると腫瘍は無茎性の粘膜下腫瘍であった.胃部分切除術を施行した.腫瘍は5.0cm大の充実性粘膜下腫瘍であった.病理組織学的には紡錘形細胞の増殖を認めc-kit(+),CD34(+)でGISTと診断された.Ball valve syndromeをきたした胃穹窿部GISTの1例を報告する.
  • 濵崎 景子, 中崎 隆行, 清水 香里, 進藤 久和, 佐野 功, 谷口 英樹, 高原 耕
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3299-3304
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.糖尿病,狭心症にて近医通院中,2007年3月に低アルブミン血症を指摘されたが改善なく,2008年6月ネフローゼ症候群精査のため当院内科へ入院となった.腹部CT検査にて胃壁の肥厚と周囲のリンパ節腫大を認めた.上部消化管内視鏡検査では前庭部前壁,体上部小彎に2型の腫瘍を認め,生検では各々,低分化腺癌または未分化癌,高~中分化型管状腺癌であった.上部消化管造影では前庭部前壁に約80mmの2型の腫瘍,体上部後壁に3型の腫瘍を認めた.多発胃癌の診断にて8月に胃全摘術,胆摘を施行.切除標本では前庭部前壁に60×55mmの2型の腫瘍,体部小彎に50×40mmの3型腫瘍を認めた.病理組織所見ではいずれの腫瘍も低分化腺癌であったが,前庭部の腫瘍は内分泌細胞への分化も疑われ,免疫染色にてchromogranin A,CD56が陽性であり内分泌細胞癌と診断した.
  • 岩間 敦子, 山崎 慎太郎, 渡邊 慶史, 岡田 俊次, 桧垣 時夫, 高山 忠利
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3305-3308
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.多発する嚢胞性肝腫瘍のため肝嚢胞腺癌または転移性肝腫瘍の診断で左肝切除術を施行した.病理組織学的診断で肝神経内分泌癌であり原発巣の再検索を行った.胃病変として2cm以下の胃粘膜下腫瘍を三つ認め,数度の内視鏡下ボーリング生検でも悪性腫瘍の診断はつかなかった.Fluoro deoxy glucose-Positron emition tomography(FDG-PET)などの全身精査でも同定できず,胃原発巣の可能性が否定できないため開腹腫瘍生検を選択した.幽門輪近くの腫瘍が術中迅速病理組織学的検査で原発巣と同定,幽門側胃切除・所属リンパ節郭清術を施行した.胃内分泌癌は比較的大きな2型や3型の肉眼型で発見されることがほとんどである.遠隔転移で発見された原発不明例では小型の粘膜下腫瘍であっても,原発巣の可能性を考慮する必要がある.
  • 榎本 浩士, 上野 正闘, 高山 智燮, 松本 壮平, 若月 幸平, 中島 祥介
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3309-3314
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.平成19年4月早期胃癌fStageIB(T1(SM massive),N1,H0,P0,M0)に対して当院当科で幽門側胃切除術施行.以後外来通院中であった.平成19年10月から腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)の上昇を認め化学療法を開始.一時腫瘍マーカーは,正常になっていたが,平成20年8月頃から上昇.同時期から臍部に径2cmの腫瘍が出現.悪臭を伴う浸出液を認めるようになった.CT,PETにて多臓器転移を認めないため,孤立性転移として臍腫瘍摘出術を行った.内臓悪性疾患の臍転移は,Sister Mary Joseph's nodule(以下SMJN)と言われ,予後不良で発見から死亡まで1年以内との報告も多いが,原発巣および臍転移部の外科的切除で予後が改善されたという報告もある1).早期胃癌術後にSMJNを認めることは非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 川村 昌輝, 高橋 道長, 武藤 満完, 大沼 勝, 上野 達也, 内藤 広郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3315-3319
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    胃粘膜下腫瘍を先進部として胃が十二指腸内に陥入した稀な1例を経験した.症例は37歳,男性.突然の腹痛,嘔吐を主訴に来院.腹部造影CTで十二指腸下行部に最大径6cmの境界明瞭,胃壁から連続する充実性腫瘤を認め,腫瘤は胃壁に連続していた.上部消化管透視では胃体部から十二指腸下行部にかけて索状陰影欠損を認めた.以上の画像所見より胃粘膜下腫瘍を先進部とする胃十二指腸重積症と診断し手術を施行した.開腹すると十二指腸下行部が膨隆し弾性軟の腫瘤を触知した.Hutchinson手技により重積を整復すると胃体上部前壁に有茎性粘膜下腫瘍を認めたため楔状胃部分切除により腫瘍を摘出した.腫瘍は被膜を有する7×6×4.5cmの充実性腫瘍で,病理学的には紡錘形細胞からなり,免疫組織学的にCD117陽性,CD34陽性でGISTと診断された.
  • 上野 達也, 高橋 道長, 菅野 明弘, 内藤 広郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3320-3324
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷後に遅発性の十二指腸狭窄を呈し,十二指腸空腸吻合にて改善した1例を経験した.症例は64歳,男性.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.現病歴:トラクター運転中に横転し,ハンドルと地面に上腹部を挟まれ救急搬送された.来院時のバイタルは安定し,採血では軽度貧血を認めるのみであった.CTでは上腸間膜静脈から下大静脈周囲にかけ後腹膜と腸間膜内血腫を形成していた.翌日より食事を開始したが,入院8日目より嘔吐が出現し,精査の結果遅発性の十二指腸狭窄と診断された.保存的治療で改善なく,入院30日目に手術を施行した.十二指腸は下行脚下端からTreitz靱帯にかけ固く線維化を起こし狭窄しており,十二指腸空腸側々吻合術を施行した.術後の経過は良好で術後第15病日に退院となった.外傷による遅発性の十二指腸瘢痕狭窄の報告はなく,十二指腸空腸吻合術にて症状の改善を認めた.
  • 小川 昌美, 安井 昌義, 宮本 敦史, 中森 正二, 三嶋 秀行, 辻仲 利政
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3325-3329
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症は大腸癌の他,胃癌,十二指腸癌,デスモイド腫瘍などを合併する.そのため複数回の手術既往を持つ患者も少なくない.胃切除後,大腸切除後,癒着剥離術,消化管バイパス術,人工肛門造設術など4回の手術歴をもつ患者に対し,十二指腸乳頭部癌の術前診断と手術計画を行う上で小腸シングルバルーン内視鏡が有用であった1例を経験したので報告する.症例は47歳,男性.腹部CT,FDP-PETにて十二指腸乳頭癌が強く疑われたが,手術既往のため通常の上部消化管内視鏡検査による観察は困難であった.小腸内視鏡を用いたところ病変の観察が可能となり,十二指腸乳頭部癌との診断に至った.さらに術後消化管の走行も把握することで根治切除および再建が可能と判断できたため,膵頭十二指腸切除術を施行しえた.
  • 平林 邦昭, 戸口 景介, 吉川 健治, 山口 拓也, 硲野 孝治
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3330-3333
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.盲腸癌に対する右半結腸切除術の3カ月後に腹痛発作で入院した.腹部単純X線,腹部CT検査,腹部エコー検査で,腹腔内に線状金属陰影を認めた.腹部症状が悪化し,X線下に開腹手術を施行したところ,小腸を突き破る長さ7cmの金属片を確認した.摘出した金属片をただちに調査し金属スタイレットの先端部分であると断定した.先の手術の麻酔導入時に食道挿管されており,その時に金属疲労した先端部分が折損し食道内に進んだものと推察された.術後経過は順調で術後10日目に退院した.現在術後3年半が経過したが,合併症なく外来通院中である.
  • 島崎 猛, 川合 重夫, 岩瀬 俊一, 高島 良樹
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3334-3337
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.魚介類の生食歴は明らかでなく,微熱と右下腹部痛が数日続き,右下腹部痛が増強したため紹介され来院した.高熱を伴い腹膜刺激症状を有していたため,緊急手術を施行した.手術所見では,回腸末端近傍の回腸に約20cmにわたる範囲で,全周性の炎症所見と複数の狭窄および腸間膜の著明な肥厚を認め,病変部を含め切除した.標本の肉眼所見では,腸間膜側に深い縦走潰瘍を認め,Crohn病の肉眼所見に類似していた.病理組織学的検査では潰瘍の深部に破壊されたアニサキス虫体を認め,その周囲に好酸球性肉芽腫と膿瘍を認めた.以上より腸アニサキス症により,深い縦走潰瘍を形成したと診断した.一般には腸アニサキス症では全身状態が良好で腹部症状も軽いと言われているが,稀に本例のように激しい経過をとる症例が存在することを念頭に置いた対処が必要であると思われた.
  • 松谷 毅, 宮本 昌之, 丸山 弘, 松田 明久, 内田 英二, 笹島 耕二
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3338-3342
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.10年前に胆嚢結石症,急性胆嚢炎で胆嚢摘出術,その後腸閉塞を併発し癒着剥離術を受けた既往がある.発熱と黄疸で来院.腹部CT検査と内視鏡的逆行性胆道造影検査で,総胆管結石による急性閉塞性化膿性胆管炎と診断した.前回の手術創で開腹し,癒着剥離術,総胆管切開切石術,Tチューブ・ドレナージ術を施行した.術後第5病日に手術創とドレーンから消化液が漏出したため再開腹した.癒着剥離術時に損傷した小腸に穿孔部を認めたため小腸切除を行ったが,再手術後第7病日に再び手術創から消化液が漏出し,小腸皮膚瘻を形成した.保存的治療では症状の改善はみられなかった.小腸皮膚瘻から離れた部位から経皮的に口側腸管に27Fr尿道バルーン・カテーテルを挿入,消化液のドレナージを行い,瘻孔を一期的に縫合閉鎖した.
  • 平光 高久, 橋本 昌司, 大西 英二, 間瀬 隆弘, 永田 二郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3343-3346
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    空腸憩室の頻度は極めて低く,空腸憩室炎から膿瘍を形成した症例の報告は,さらに稀である.症例は52歳の男性で,ネフローゼ症候群のためプレドニンを4mg/2日で内服していた.2006年1月に腹痛,発熱で他院を受診した.腹部CT検査で腹腔内に膿瘍形成を認めたため,当院に紹介となった.心窩部に圧痛,反跳痛,筋性防御と38.5度の発熱を認めた.経皮的膿瘍ドレナージを施行し,造影したところ小腸の一部が造影された.小腸造影を施行したところ,膿瘍ドレナージ部の近傍に空腸憩室を認めた.ドレナージにて膿瘍の縮小を認めたが,食事を開始すると発熱,腹痛を繰り返すため,手術を施行した.開腹するとTreitz靱帯から約10cmのところで小腸が一塊となっていたため,一塊となった小腸を切除した.切除標本では,空腸憩室と考えられる空腸と連続した腔を認め,空腸憩室炎による腹腔内膿瘍と診断した.
  • 朝重 耕一, 吉田 一也, 竹重 元寛
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3347-3350
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.性周期に一致した腹痛を主訴に産婦人科受診した.保存的治療にて改善せず,徐々に腹部膨満が出現した.注腸造影では,結腸には異常所見を認めなかった.その後,腹部単純写真にてniveauを認め当科紹介となった.入院後イレウス管を留置し,消化管減圧を行った.小腸造影を施行し,回腸末端に屈曲と狭窄を認めた.この部位が腸閉塞の原因と考え,開腹手術を施行した.回腸末端は屈曲し強固に癒着していた.硬結は触れるが,明らかな腫瘍性病変は指摘できなかった.術式は回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査にて異所性子宮粘膜の増生を認め回腸子宮内膜症と診断した.術後経過は良好で,術後1年を経過した現在,再発無く経過中である.腸管子宮内膜症はそのほとんどがS状結腸や直腸に発生し,小腸に発生する頻度は7%と稀であるため今回報告する.
  • 川上 浩司, 砂川 宏樹, 稲嶺 進, 座波 久光, 當山 鉄男, 大城 直人
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3351-3354
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.統合失調症で他施設に入院加療中.水中毒,低ナトリウム血症のため当院で治療歴あり.定期検査の胸部X線写真で左右横隔膜下に腹腔内遊離ガスを認め,血圧が80/60mmHg,脈拍116回/分と頻脈を認めた.自発痛の訴えはなかったが消化管穿孔の疑いで紹介となった.CT検査では腹腔内遊離ガスと小腸全体に腸管壁内ガスを認めた.理学的所見は乏しかったが腸管穿孔を否定できずに試験開腹を行った.手術所見としては,小腸全体に壁内気腫を認めたが消化管の穿孔はなく,腹腔内を洗浄後に閉腹した.各種検査および手術所見より腹腔内遊離ガスを伴う腸管気腫症(PCI)と診断した.
    術後経過は一時誤嚥性肺炎を併発したが呼吸器管理と抗生剤の治療で軽快し術後56日目に軽快退院となった.腹腔内遊離ガスを伴うPCIに統合失調症が合併した症例の報告は本邦では本症例を含めて7例であり比較的稀である.
  • 黒河内 顕, 宮倉 安幸, 堀江 久永, 安田 是和, 弘中 貢
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3355-3359
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)は,上腸間膜動脈(SMA)から血流を受けるが,腫瘍の増大とともに複数の血流支配を受けることがある.今回,異なる3領域から血流を受けた巨大回腸GISTの1切除例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.下血を主訴に当院紹介となった.CTにて骨盤内に約10cmの巨大腫瘤を認め,CT during arteriographyではSMA,内腸骨動脈,上直腸動脈からの血流を腫瘍内に均等に認めた.小腸GISTを疑い手術を施行した.手術は約10cmの腫瘤を骨盤内に認め,回腸と連続,右壁側腹膜と直腸間膜左側に浸潤していた.腫瘍を含む回腸部分切除を施行した.病理組織学的検査では短紡錘形核の細胞の増生を認め,KIT陽性,MIB-1 labeling index10%で高リスクGISTの診断であった.巨大小腸GIST内の血流は,支配血管からほぼ均等に得られており,それぞれの栄養血管を意識した手術操作が必要である.
  • 小笠原 卓, 三宅 秀則, 山崎 眞一, 和田 大助, 惣中 康秀, 露口 勝
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3360-3365
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.腹痛,食思不振,貧血を認め,当院紹介となった.腹部画像検査で,下腹部の巨大な腫瘤と肝内に1cm大の腫瘤を認めた.回腸腫瘍,肝転移疑いの術前診断のもと手術を行った.術中所見として多発肝転移を認め,回盲部切除術,肝転移生検,肝転移巣のラジオ波焼灼術を施行した.摘出された腫瘍は最大径16cmであり,組織学的には胞巣状,索状に増殖する未分化な腫瘍細胞を認め,免疫組織学的診断で内分泌細胞癌と判断した.また一部に高分化腺癌を認め,以上より腺内分泌細胞癌の診断に至った.小腸内分泌細胞癌の本邦報告例は自験例を含めて16例であり,経過から非常に予後不良な癌と示唆された.本疾患の有効な治療法は確立されておらず,今後の症例の集積が必要である.
  • 橋本 昌和, 中原 雅浩, 藤國 宣明, 岩子 寛, 黒田 義則, 米原 修治
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3366-3369
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.検診のPET/CTにて回盲部にSUVの集積を指摘され当科受診した.腹部造影CT,大腸内視鏡検査で回盲部に4cm大の腫瘤性病変を認め,Biopsyではgroup2であった.原発性虫垂癌等の腫瘍性病変を疑い,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.盲腸の腫瘍部には発赤を認め,所属リンパ節の腫大がみられた.病理組織学的には,急性虫垂炎と診断された.大腸腫瘍の診断にはPET/CTは有用性であるが,回盲部の腫瘤の場合は炎症性疾患も考慮する必要がある.
  • 北野 義徳, 田中 晃, 井上 潔彦, 船井 貞往
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3370-3374
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.左下腹部痛を主訴に来院.腹部CTでS状結腸にhigh densityな異物像を認め,遊離ガスおよび腹水貯留を認めた.異物によるS状結腸穿孔と診断し,腹膜刺激症状を認めることから緊急開腹術を施行した.S状結腸に5mm大の穿孔を認め,穿孔部直下に異物を触知した.異物を摘出したのち,S状結腸部分切除,人工肛門造設術を施行した.切除標本では穿孔部と連続した部位に憩室が存在し,また術後の問診で柿を種子ごと摂取したことが判明したことから,柿の種子によるS状結腸憩室穿孔と診断した.種子による消化管穿孔は本邦においてこれまで2例の報告しかなく,非常に稀な症例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 渡瀬 誠, 柳 英雄, 廣岡 紀文, 森 琢児, 小川 稔, 丹羽 英記
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3375-3379
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    今回,肛門性癖者の経肛門的異物挿入によりS状結腸穿孔をきたした症例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.過去に,直腸異物に対し経肛門的摘出術1度,開腹摘出術2度を受けた既往がある.今回,経肛門的にボールなどを挿入し自力にて排出困難となり他院を受診したが,経肛門的に摘出困難なため当院を紹介された.主訴は,腹部膨満感であり,腹痛は認めなかった.腹部単純X線にて遊離ガスを認めたため緊急手術を施行した.S状結腸内に直径10cmと20cmの異物2個が嵌屯し,直径4cmの穿孔部を認めたが,穿孔部は内腔側より直径10cmのビニールボールにて被覆されていたため,便の流出は認められなかった.穿孔部を開大し異物を除去した後,穿孔部を縫合閉鎖した.術後経過は順調で8日目に退院した.
  • 園部 智子, 小林 慎二郎, 四万村 司, 須田 直史, 月川 賢, 大坪 毅人
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3380-3383
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.既往として33年前に子宮筋腫に対し子宮全摘術が施行されていた.外陰部の鈍痛と帯下への便混入を主訴に近医を受診し,精査加療目的で当院に紹介となった.内視鏡検査でS状結腸に多発する憩室を認め,注腸造影検査ではS状結腸から膣に向かう瘻孔が確認された.以上よりS状結腸憩室炎による結腸膣瘻と診断し,瘻孔切除及びS状結腸部分切除を施行した.術後1年が経過しているが,現在まで再発なく経過している.結腸憩室症の合併症として膀胱瘻の報告は散見されるが,結腸膣瘻は稀と思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 木村 有, 田上 弘文, 平島 浩太郎, 蔵元 一崇, 稲吉 厚, 八木 泰志
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3384-3388
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.便鮮血陽性で大腸内視鏡検査を施行され盲腸癌の診断で回盲部切除術を施行した.吻合は自動縫合器を用いたFEEAで行った.C2型pT2(SS)pN0M0H0P0 fStageIIであった.その1年6カ月後,下血と貧血の精査にて行った大腸内視鏡検査で吻合部再発と診断し,吻合部切除術施行した.切除標本で吻合部にまたがる再発病巣を認めた.2度目の手術も吻合はFEEAで行った.さらに1年1カ月後の大腸内視鏡検査で再び,吻合部再発を認めた.吻合部切除術施行した.吻合は手縫い法で行った.切除標本で吻合部にまたがる再発病巣を認めた.現在は再発なく生存中である.FEEA術後に2度にわたる吻合部再発を繰り返した文献報告は初めてであり,考察を加えて報告する.
  • 別府 直仁, 弓場 健義, 水島 恒和, 藤井 眞, 森本 芳和, 山崎 芳郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3389-3394
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.2008年1月,腹部膨満感・嘔吐を主訴に当科を受診した.腹部X線検査で小腸の鏡面像ならびに大腸の著明な拡張を認め,腸閉塞と診断した.腹部CT検査ではS状結腸壁の肥厚とその周囲脂肪濃度の上昇を認め,また回腸から下行結腸にいたる腸管拡張および腸液貯留を認めた.保存的治療では症状改善せず,また注腸検査によりS状結腸の完全閉塞を認めたことより腸穿孔が危惧されたため,入院翌日に緊急手術を施行した.S状結腸に腫瘤を触知し,S状結腸癌による腸閉塞の診断のもとD3郭清を行い,S状結腸切除術および下行結腸人工肛門造設術を施行した.切除標本では病変部の粘膜面に腫瘍性病変は認めず,憩室が散在しているのみであった.病理組織学的所見では,漿膜に陥入した憩室の粘膜上皮に癌腫を認め,漿膜へ全周に浸潤しており,憩室から発生した進行結腸癌と診断した.術後1カ月後に多発肝転移を認め,抗癌剤投与したが効果なく,4カ月後に死亡した.
  • 寺村 紘一, 森田 高行, 藤田 美芳, 岡村 圭祐, 市村 龍之助, 山口 晃司
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3395-3399
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    結腸癌の消化管内瘻形成は稀な病態である.当科で経験した3例について報告する.症例1は61歳の女性.S状結腸癌,結腸小腸瘻,肝転移の診断でS状結腸切除,小腸合併切除,肝部分切除術を施行した.開腹時に単発の腹膜播種を認めた.腫瘍は回腸と瘻孔を形成していた.術後3年9カ月で肝転移と腹膜播種再発を認めた.症例2は78歳の女性.S状結腸癌の診断で手術施行.腫瘍は空腸に浸潤しておりS状結腸切除,空腸合併切除を行った.摘出標本では腫瘍は空腸に瘻孔を形成していた.術後11カ月で肝・肺転移再発を認めた.症例3は71歳の女性.S状結腸癌,結腸十二指腸瘻と診断し,S状結腸切除,十二指腸合併切除術を施行した.術後3カ月で肝転移再発を認めた.瘻孔形成大腸癌は腹膜播種,肝転移,リンパ節転移の頻度が低く,根治切除で良好な予後が見込めるとする報告が多いが,経験した3例とも再発を認めており,進行度に準じた慎重な経験観察が必要である.
  • 高橋 郁雄, 山岡 輝年, 郡谷 篤史, 島袋 林春, 西崎 隆
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3400-3404
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療後の消化管のスクリーニング検査にてS状結腸癌を指摘された.病変は遠位S状結腸の肉眼型1型病変(生検;高分化腺癌),遠隔転移リンパ節転移なく腹腔鏡補助下S状結腸切除の適応と判断された.砕石位にて頭低位右回旋位とし,後腹膜下筋膜を剥離して下腹神経,尿管を確実に温存,動脈瘤頂上に確認された下腸間膜動脈を根部で処理,S状結腸を十分に授動後に小開腹創より病変を切除,double stapling法にて吻合した.術後合併症を認めず外来経過観察中である.ステントグラフト治療後の動脈瘤の存在は腹腔鏡手術の遂行に問題とはならなかった.ステントグラフトと腹腔鏡手術との併用は,腹部大動脈瘤とS状結腸直腸癌合併の患者の治療の際の有力な選択肢となりうる.
  • 岡屋 智久, 林 伸一, 山本 和夫, 山森 秀夫, 隆 元英, 菅野 勇
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3405-3409
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.検診でC型肝炎を指摘され精査目的で当院受診.腹部エコーで肝S7-8に径4cmの辺縁高エコー,内部低エコーの腫瘤を認めた.Dopplerでは内部に血流を認めなかった.造影CTでは造影される乳頭状結節を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.MRIでは腫瘤内部はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈し,造影MRIでは造影される乳頭状結節を認めた.肝嚢胞腺癌を否定できず手術を施行した.肝右上区域に肝外突出性の腫瘤を認め,横隔膜に癒着していた.肝右上区域切除・同部横隔膜合併切除を施行した.切除標本では内部に泥状物質の貯留を認め腫瘤壁は不均一に肥厚していた.病理所見では腫瘤は厚い線維層で被覆され,その内側にほぼ完全に壊死した層を認めた.一部に非壊死部を認め,銀染色で壊死以前には何らかの腫瘍性病変の存在が示唆された.良悪性の鑑別困難な肝嚢胞性腫瘤では自然壊死した腫瘍も考慮すべきであると思われた.
  • 樋口 亮太, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3410-3415
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    66歳男性,2型糖尿病(食事療法),脂肪肝にて近医通院中に,スクリーニング超音波にて肝腫瘍指摘され入院した.肝S5/6境界に辺縁ややirregularで径4cm大の腫瘍を認めた.HBs Ag,HBc Ab,HCV Ab陰性,腫瘍マーカー正常,入院時BMI 29.7kg/m2であった.肝腫瘍(胆管細胞癌疑い)と診断し肝S5/6切除術を行った.術後経過は良好で第8病日に退院した.病理では高~中分化型肝細胞癌であり,背景肝に中等度の脂肪変性と軽度の繊維化を認めた.飲酒歴を踏まえ非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の非硬変肝に発生した肝細胞癌と診断した.術後13カ月現在無再発生存中である.近年,NASH硬変肝のHCC切除報告は散見されるが,NASH非硬変肝に発生したHCCに対する肝切除の報告は,われわれが医学中央雑誌(1983-2009)とPubMedにてNASH,肝細胞癌,肝切除をKey wordに検索したところ10例のみであり貴重な症例と思われたため報告する.
  • 岡田 慶吾, 十束 英志, 松村 知憲, 松本 裕史
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3416-3421
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.健診での胸部X線写真にて右胸心,腹部超音波検査にて最大径8.5mmの胆嚢ポリープを認め当科受診となった.腹部CTにて内臓逆位を示し,MRCPでは通常とは鏡面的位置関係の胆管の走行を示す以外は胆道系に明らかな合併奇形を認めなかった.サイズ的に10%弱の悪性腫瘍の可能性を有する胆嚢隆起性病変症例にて腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,Lap-C)を施行した.single-hand操作を用い,通常われわれが基本としている術式(トロカール3本,ドレーン留置なし)にて完遂可能であった.入院全経過において当施設Lap-Cクリティカルパスから外れることなく内臓逆位症による影響は特に認めなかった.トロカール挿入位置,術者・助手および看護師の位置,手術器材の配置等を工夫することで内臓逆位症例の腹腔鏡下アプローチは積極的に検討されるべきである.
  • 山中 秀高, 朝本 はるる, 石坂 貴彦, 川井 覚, 松永 宏之, 神谷 里明, 溝口 良順
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3422-3426
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.健診異常で受診.腹部US,CT,MRCPで胆嚢体部漿膜側に70mm大の腫瘍と頸部に結石を認めた.胆嚢癌を疑い,胆嚢全層摘出術,2群リンパ節郭清術を施行.病理組織で腫瘍は異形高円柱上皮細胞の乳頭状増殖よりなり,免疫染色でHGM陽性,alcian blue陰性,CD10,Villin,cdx2陰性であった.mitotic index1%未満,MIB-1陽性率2.5%,限局性p53陽性を認め,ムチン発現はMUC5AC,MUC6陽性,MUC1弱陽性,MUC2陰性であった.腺腫内癌を伴う胃幽門腺型腺腫と診断された.胆嚢腺腫の種類の鑑別には免疫染色が有用であった.悪性度に関しては有茎性(Ip型)のほとんどが上皮内癌までといわれており,自験例も70mmと大きかったが上皮内癌でとどまっており,胆嚢摘出術のみで十分と思われた症例で,有茎性の確認が手術による過大侵襲を回避する上で肝要と思われた.
  • 土屋 和彦, 芦谷 博史, 岡 成光, 大久保 琢郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3427-3432
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.主訴は右季肋部痛.肝内結石による胆管炎の診断でPTCDが施行されたが,ドレナージは不十分で胆管炎を制御することが出来なかった.画像上再発性化膿性胆管炎と診断し,肝左様切除,尾状葉部分切除を施行した.術後膵液瘻,胆汁瘻を発症したが保存的に治癒した.摘出標本の病理学的検査にて肝内胆管癌の合併が確認された.
  • 藤田 博崇, 篠原 永光, 大畑 誠二, 田渕 寛, 梶川 愛一郎
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3433-3437
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎に合併した脾膿瘍は稀な疾患で,経皮的ドレナージが有効であった1例を経験した.症例は79歳,男性.発熱を訴え,前医を受診.前医の血液検査にて高度の炎症反応を認め,心エコーでは僧帽弁前尖部の疣贅と僧帽弁逆流(MR)II度を認め,腹部CTにて脾臓内に低吸収域を認めた.臨床所見と合わせ感染性心内膜炎に合併した脾膿瘍と診断された.抗生剤にて治療開始されたが,改善認めず,敗血症性ショックとなり,当院に紹介となった.速やかに脾膿瘍に対し経皮的ドレナージ術を施行し,解熱が得られた.穿刺による大きな合併症もなく退院した.感染性心内膜炎に合併した脾膿瘍の報告例は少なく,難治性であり,脾臓摘出された報告例が散見される.しかし,脾臓摘出後に免疫力が低下し,易感染性を示す等の報告もあり,経皮的ドレナージにより良好な治療経過が得られ,脾機能温存の観点からも手術療法に代わる有効な治療法の一つと考えられた.
  • 赤間 史隆, 野川 辰彦, 久野 博, 地引 政晃, 林徳 真吉
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3438-3441
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.10日ほど前より左腰痛,2日前より下腹部痛,嘔吐出現,増強するため当院に救急搬送された.16年前に直腸癌にて腹会陰式直腸切断術の既往があった.左下腹部に筋性防御を認め,血液検査では著明な炎症所見を認めた.腹部CTでは,腹膜炎の所見とともに巨大な左腎結石と左腸腰筋の腫大が認められた.同日,緊急手術を行った.開腹すると乳白色の膿性腹水を認め,汎発性腹膜炎の状態であったが,腸管に絞扼や穿孔は認められず,腎盂腎炎に伴う急性汎発性腹膜炎と判断.洗浄・ドレナージのみを行った.翌日,経皮的に左腎瘻を造設し造影すると,左尿管からDouglas窩が造影され,少し遅れて腎から結腸が直接造影された.尿管の穿孔と腎結腸瘻が考えられた.その後の再手術にて,左尿管は総腸骨動脈と交叉する付近で閉塞,その中枢側にて穿孔していたことが判明した.病理学的検索にて腎結腸瘻は結腸憩室が原因と考えられた.
  • 大畑多 嘉宣, 神山 俊哉, 中西 一彰, 横尾 英樹, 羽賀 博典, 藤堂 省
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3442-3446
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2008年6月検診で胸部異常陰影を指摘され,9月手術目的に当科入院となった.腹部CT上,腫瘍は腹部大動脈をまたぐ,ダンベル状のhypovascularな腫瘍であり,周囲への明らかな浸潤は認めなかった.MRIではT1W1でlow signal,T2W1でhigh signalを示す腫瘍であった.以上より後腹膜腫瘍の診断で腫瘍摘出術を施行.病理診断にて,schwann細胞様の紡錘形細胞の束状増生を認め,散在性に神経節細胞が存在していた.免疫染色ではS-100(+),α-SMA(-),CD34(-),c-kit(-),cdk(-),MDM2(-),MIB-1 index1%未満であり,ganglioneuromaの診断とした.
  • 牛込 充則, 島田 長人, 澤口 悠子, 本田 善子, 小池 淳一, 金子 弘真
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3447-3453
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    傍十二指腸ヘルニアは内ヘルニアの1つであり,内ヘルニアの発生頻度は全イレウス疾患の1%程度とされ,その発生は稀である.
    症例は57歳,男性.主訴は腹痛と嘔吐.開腹の既往歴はない.腹部CT検査で右上腹部に袋に包まれたような小腸の集簇した所見(sac-like appearance)と上腸間膜静脈の左方偏位(SMV rotation sign)がみられた.手術所見では血流障害に陥った小腸とTreitz靱帯の形成不全がみられ,腸回転異常を伴う右傍十二指腸ヘルニアと診断した.腸管切除が必要であったが術後の経過は良好であった.
    稀な疾患であるが成人の腸閉塞の原因の1つとして念頭に置き,迅速な診断・治療が必要である.回転異常症が原因のこともあるため本症が疑われる場合には解剖学的奇形についても注意が必要であると考えられる.
  • 猪狩 公宏, 落合 高徳, 東海林 裕, 熊谷 洋一, 山崎 繁
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3454-3457
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.上腹部の腫瘤および疼痛を主訴に当科を受診した.帝王切開の既往はあるものの,疼痛部位と手術痕は一致せず,また明らかな外傷の既往もなかった.腹部では剣状突起と臍の中間に母子頭大の,臍上に示指頭大の腫瘤を計2個認めた.腹部CT検査にて剣状突起下の腫瘤は20mm大のlow densityの腫瘤として同定されたが,臍上の腫瘤は同定できなかった.これらより多発白線ヘルニアと診断し手術を施行した.上腹部正中に皮切を加えるとヘルニア嚢を2つ認めた.ヘルニア門はともに小さいことより腹膜,筋膜を閉鎖し手術を終了した.術後経過は良好にて再発なく経過している.白線ヘルニアは本邦では稀な疾患であり,また多発例の報告も少ないことより,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 叶川 直哉, 島田 英昭, 貝沼 修, 趙 明浩, 山本 宏, 伊丹 真紀子, 永田 松夫
    2009 年 70 巻 11 号 p. 3458-3461
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.32歳時に右乳癌に対してHalsted手術を施行され,術後に局所の放射線治療を受けている.2008年1月に,胸部上部食道癌の診断で当科入院した.入院時,右前胸部に皮膚腫瘍を認めた.開胸困難症例であったため,非開胸食道抜去術を施行し,術後19日目に軽快退院となった.病理所見は,T2N0M0(stageII)であった.術後79日目に皮膚腫瘍切除術を施行し,基底細胞癌と診断された.乳癌術後放射線治療の照射野に一致して,皮膚および食道に癌を認めたことから,2次性発癌と判断した.欧米においては,乳癌に対する放射線治療の既往のある女性では,食道扁平上皮癌発症の危険性が高いとされており,本邦でも放射線治療に起因する2次性の食道扁平上皮癌が増加する可能性があると考えられた.
編集後記
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