日本臨床外科学会雑誌
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症例
憩室より発生したS状結腸癌の1例
別府 直仁弓場 健義水島 恒和藤井 眞森本 芳和山崎 芳郎
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キーワード: 大腸癌, 大腸憩室, 憩室炎
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2009 年 70 巻 11 号 p. 3389-3394

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抄録

症例は69歳,男性.2008年1月,腹部膨満感・嘔吐を主訴に当科を受診した.腹部X線検査で小腸の鏡面像ならびに大腸の著明な拡張を認め,腸閉塞と診断した.腹部CT検査ではS状結腸壁の肥厚とその周囲脂肪濃度の上昇を認め,また回腸から下行結腸にいたる腸管拡張および腸液貯留を認めた.保存的治療では症状改善せず,また注腸検査によりS状結腸の完全閉塞を認めたことより腸穿孔が危惧されたため,入院翌日に緊急手術を施行した.S状結腸に腫瘤を触知し,S状結腸癌による腸閉塞の診断のもとD3郭清を行い,S状結腸切除術および下行結腸人工肛門造設術を施行した.切除標本では病変部の粘膜面に腫瘍性病変は認めず,憩室が散在しているのみであった.病理組織学的所見では,漿膜に陥入した憩室の粘膜上皮に癌腫を認め,漿膜へ全周に浸潤しており,憩室から発生した進行結腸癌と診断した.術後1カ月後に多発肝転移を認め,抗癌剤投与したが効果なく,4カ月後に死亡した.

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© 2009 日本臨床外科学会
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