日本臨床外科学会雑誌
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症例
イマチニブ投与後に腫瘍中心壊死巣が胃内腔と交通した胃原発巨大GISTの1例
栗田 信浩島田 光生岩田 貴西岡 将規吉川 幸造東島 潤
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2009 年 70 巻 4 号 p. 1044-1048

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抄録

症例は50歳代,男性.体重減少,上腹部腫瘤を主訴に受診.腹部CT検査,胃内視鏡下生検にて胃原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.左上腹腔を占める直径20cmの高リスクGISTであり,他臓器浸潤や,術中操作による播種を危惧し,イマチニブ400mg/日投与を開始した.投与開始後24日目から発熱,腹痛が出現し,翌日緊急入院.腹部CT検査では胃腫瘍は縮小していたが,腫瘍内に多量のairを認めた.腫瘍内への穿通,感染による発熱と判断し,緊急手術を施行した.腫瘍は左横隔膜へ浸潤し,大網内に転移を認めたが,肝臓,膵臓には浸潤していなかった.横隔膜に一部腫瘍を残存させ,胃全摘出術を施行した.腫瘍内は周辺の軟らかい実質成分と中心部の粘液で満たされた空洞がみとめられ,胃内腔と交通していた.イマチニブ投与後の穿通の報告はないが,特に巨大なGISTに投与する場合,急速な縮小に伴い,穿通,穿孔の可能性があり,注意を要する.

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© 2009 日本臨床外科学会
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