日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
70 巻, 4 号
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第70回総会特別講演
原著
  • 梅邑 晃, 遠藤 義洋, 鈴木 雄, 渋谷 俊介, 渋谷 香織, 梅邑 明子, 谷村 武宏, 北村 道彦
    2009 年70 巻4 号 p. 962-967
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    目的:切除不能悪性腫瘍に伴う上部消化管狭窄に対する胃空腸バイパス手術の直接成績や予後に関する報告は少ない.当科におけるバイパス手術症例について検討したので報告する.
    方法:1999年1月から2007年12月までにバイパス手術を施行した33症例について,背景因子,術後経口摂取開始日および経口摂取期間,術後生存期間,術後生存期間に影響を及ぼす因子について検討を行った.
    結果:平均年齢は69歳,男女比は19:14,疾患は胃癌が16例で最多であった.平均術後経口摂取開始日は7.2病日,経口摂取期間中央値は127日間,32例で術後5分粥以上を摂取できた.退院率は93.9%,50%生存期間は149日であった.術後生存期間は,術前全身合併症,貧血,低栄養,術後化学療法未施行の群で有意に低下した.
    結語:バイパス手術は,術後早期の経口摂取が可能で,切除不能悪性腫瘍患者のQOLの改善に大きく貢献する.ただし,全身合併症,貧血や低栄養などがある場合には適応を慎重に決定する必要がある.
  • 小川 洋, 河内 保之, 西村 淳, 牧野 成人, 新国 恵也
    2009 年70 巻4 号 p. 968-973
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸癌は全消化器癌の0.4%以下と報告されており稀な疾患である.過去6年間に当科で切除された原発性十二指腸癌10例の臨床病理学的検討を行った.癌占拠部位は十二指腸第I部が2例,第II部が8例.5例が心窩部痛で,4例は閉塞性黄疸で発症した.手術は膵頭十二指腸切除により全例に対し肉眼的治癒切除が可能であった.肉眼型は2型が7例と多く,組織型は低分化型腺癌が5例,分化型腺癌が4例であった.膵浸潤は8例に認め,壁深達度ssが1例,mが1例であった.リンパ節転移は7例が陽性.高度リンパ節転移を伴った膵浸潤陽性の4例はいずれも3年以内に死亡しており予後不良の傾向があったが,膵浸潤のないリンパ節転移陽性例に拡大リンパ節郭清を施行し,比較的長期生存が得られた.癌占拠部位や進行度に応じて拡大郭清を含めた適切な術式を選択することが治療成績向上につながると考える.
  • 高木 拓実, 河島 秀昭, 樫山 基矢, 高梨 節二, 吉田 信, 真崎 茂法, 石後岡 正弘
    2009 年70 巻4 号 p. 974-978
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    目的:大腸SM癌におけるbuddingとリンパ節転移,さらに他の病理組織学的因子との関係を明らかにする.方法:1990年1月から2006年12月までに当院外科にて外科的切除を施行した大腸SM癌188例.リンパ管侵襲の有無(ly),静脈侵襲の有無(v),簇出(budding)の有無,SM層低分化癌の有無(por)と,リンパ節転移の有無の相関を検討した.結果:Buddingとリンパ節転移との有意な相関は認められなかったが,porとリンパ節転移とに有意な関連を認めた.一方,buddingとly,buddingとporに有意な関連を認めた.Budding,por,ly,vについて等質性分析を行ったところbuddingとpor,lyとvがそれぞれ同系統の因子としてまとめられた.結論:Buddingはリンパ節転移との有意な相関は認められないもののlyと関連する重要な所見である.またbuddingとporは同系列の因子であり,先進部所見として分類できる.
  • 高倉 有二, 岡島 正純, 檜井 孝夫, 池田 聡, 吉満 政義, 吉田 誠, 住谷 大輔, 竹田 春華, 川口 康夫, 下村 学, 徳永 ...
    2009 年70 巻4 号 p. 979-984
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    目的:下部直腸腫瘍に対する部分的内肛門括約筋切除術(partial intersphinteric resection;p-ISR)の術後排便機能,quality of life(QOL)を従来の肛門括約筋全温存術(ultra low anterior resection;ULAR)と比較検討した.対象と方法:下部直腸腫瘍に対してp-ISR及びULARを施行した計27症例の術後排便機能およびQOLをアンケートで評価した.結果:p-ISR群12例,ULAR群15例であった.肛門縁から腫瘍下端までの距離は36.9mmと61.0mmでp-ISR群が有意に低い位置にあった.術後Wexner scoreはp-ISR群で高い傾向にあったが,術後3カ月のみ有意差を認めた.排便回数は両群間に差は認めなかった.術後QOLはSF-36の各項目に両群間で有意差を認めなかった.結語:p-ISR後の排便機能はULARと比較して便失禁が多い傾向にあるもののQOLに差を認めなった.今後さらに症例を蓄積した検討が必要である.
  • 石津 寛之, 近藤 征文, 安達 武彦, 岡田 邦明, 益子 博幸, 秦 庸壮, 田中 浩一, 川村 秀樹, 横田 良一, 山上 英樹, 渡 ...
    2009 年70 巻4 号 p. 985-992
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    目的:腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)後に診断された胆嚢癌症例の病態を明らかにする.対象と方法:1992年から2004年の術前診断良性のLC 1665例のうち術後判明した胆嚢癌症例12例(0.72%)を2463例の開腹胆嚢摘出(OC)後判明の15例(0.61%)と比較検討した.
    結果:LC後12例の癌深達度はm 6例,mp 1例,ss 5例と早期癌が58.3%であった.OC後判明例に比較して癌の組織学的所見に差はなかった.LC後の症例ではm癌の全例は経過観察し,胆嚢管断端が癌陽性であった1例のmp癌と,ss癌5例中4例に胆嚢床切除にD2郭清を基本とし追加手術を行った.LC後のss癌1例が他病死,OC後のss癌2例が原病死したが,残る24例は無再発生存中である.
    結論:m癌ではLC後に追加切除なしで再発はみられずLCが適応となる可能性が示唆された.LC後のss癌判明例では追加切除により良好な成績が得られた.
症例
  • 名和 正人, 土屋 十次, 立花 進, 熊澤 伊和生, 川口 順敬, 吉田 和弘
    2009 年70 巻4 号 p. 993-997
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.左乳房に腫瘤を自覚し受診した.超音波検査にて左乳房B領域に8mmの腫瘤像が,マンモグラフィにて境界明瞭な淡い円形の腫瘤影が認められた.MRIではT2強調画像で高信号な腫瘤像がみられ,その時間信号強度曲線は急峻に立ち上がりそれが漸減していた.吸引細胞診では血球と血管成分のみで判定不能であった.針生検の結果,血管性腫瘍と考えられ,さらに細胞異型像,分裂像やMIB-1 indexから低異型度血管肉腫が疑われた.このため,乳腺円状部分切除術が施行された.永久標本では細胞異型像を認めずMIB-1 indexも低かったため最終的には良性の血管腫と診断された.乳房に発生する血管性腫瘍の大部分は悪性の血管肉腫であり良性の血管腫はきわめて稀である.血管性腫瘍は画像診断のみならず病理学的にも良悪性の確定診断に難渋する症例が多いが血管肉腫の予後がきわめて不良であることからその正しい診断および対処が非常に重要である.
  • 谷川 富夫, 宮本 裕士, 阿部 道雄, 蓮尾 友伸, 土手口 幸
    2009 年70 巻4 号 p. 998-1001
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.左乳房に腫瘤を自覚し来院,生検にて非腫瘍性病変(乳腺症)と診断され,その後,腫瘤が増大するため2年後に受診し,生検にて,葉状腫瘍と診断された.手術後,悪性葉状腫瘍と診断された.3年の経過観察後,自己判断にて終診となる.それから,2年半後に,対側乳房に腫瘤を認め,細胞診にて,線維肉腫様の細胞を認め,悪性葉状腫瘍と術前診断され,手術が実施された.異時性・両側性の悪性葉状腫瘍の報告は極めて稀であり,ここに報告する.
  • 河原 太, 上島 知子, 土屋 恭子, 志茂 新, 矢吹 由香里, 福田 護
    2009 年70 巻4 号 p. 1002-1005
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    われわれは右側腋窩リンパ節郭清術後に発症した乳靡漏を経験した.症例は63歳,女性.右乳房腫瘤,右乳房痛を理由に来院した.腋窩リンパ節転移を伴う右乳癌の診断にて,術前化学療法後に右乳房部分切除術と腋窩リンパ節郭清術(レベルIII)を受けた.術後2日目の夕食後よりドレーン排液が白濁した.乳靡漏と判断し,絶食・輸液管理とした.その後は排液の白濁は認めなかった.術後11日目より低脂肪食より食事再開.排液は漿液性であったため,術後13日目にドレーンを抜去した.翌術後14日に退院となった.右側の乳靡漏の症例は本邦では報告されておらず極めて稀な症例と考えられた.
  • 玉木 雅子, 神尾 孝子, 山口 昌子, 青山 圭, 大地 哲也, 亀岡 信悟
    2009 年70 巻4 号 p. 1006-1010
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.前立腺癌に対し内分泌療法として抗アンドロゲン剤,LH-RHアゴニストが施行された.1年後より左乳房腫瘤を自覚,次第に乳房の変形を認めるようになり当科受診となった.左乳癌の診断で左乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織診断はinvasive ductal carcinoma,Papiltubular carcinoma,p,ly1,vo,ER(+),PR(-),HER2(0)であった.術後前立腺癌に対して用いられていたLH-RHは継続しつつ,補助療法として抗エストロゲン剤を開始とし経過観察を行っている.
  • 中村 光一, 中村 利夫, 倉地 清隆, 林 忠毅, 今野 弘之
    2009 年70 巻4 号 p. 1011-1015
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の心転移は剖検例の0~7.2%程度と報告されているが,生前に診断されることは少ない.われわれは心転移による癌性心タンポナーデをきたした再発大腸癌症例を経験したので報告する.症例は76歳,女性.2007年2月,上行結腸癌の診断で,結腸右半切除術,D3郭清を施行した(A,2型,mod,pSE,ly3,v2,pN3,fStageIIIb).術後補助化学療法としてUFT/LVによる内服治療を施行した.2008年3月,呼吸苦を主訴に前医救急外来受診.心エコーにて心タンポナーデと診断し心嚢穿刺を施行した.細胞診にて粘液産生を伴う異型細胞を認め,癌性心タンポナーデの診断となり当科転院となった.心タンポナーデ改善後,FOLFOX6による全身化学療法を施行中である.大腸癌の心転移は稀であるが,大腸癌術後も癌性心タンポナーデの可能性を念頭におく必要があると考えられた.
  • 安藤 幸二, 志茂 新, 望月 篤, 栗本 典昭, 平 泰彦, 中村 治彦
    2009 年70 巻4 号 p. 1016-1019
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は24歳,男性.自殺企図でトラックにはねられ当院救命センターへ搬送された.多発助骨骨折,外傷性血気胸,右肺挫傷,肝挫傷,骨盤骨折と診断され,まず胸腔ドレナージを行った.その後,骨盤骨折によりショックをきたしたため,人工呼吸管理下で内腸骨動脈塞栓術を施行した.入院後,第2病日に縦隔気腫が増悪し,気管支鏡検査を施行したところ,中葉支背側の裂傷を確認した.ただちに開胸し,気管支損傷部を縫合閉鎖したところ,縦隔気腫は改善し,全身状態が改善するまで人工呼吸管理を継続できた.受傷後早期の手術で良好な治療経過が得られた気管支損傷の1例を経験したので報告する.
  • 立石 渉, 郡 隆之, 竹内 邦夫, 安藤 哲
    2009 年70 巻4 号 p. 1020-1024
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    交通外傷による胸郭動揺・骨盤骨折を契機に発症した重力性無気肺に対して腹臥位療法・呼吸理学療法併用が有効であった1例を経験した.症例は49歳,男性.高速道路で側壁に衝突し当院救急搬送.胸郭動揺,骨盤骨折の為,長期安静が必要となり重力性無気肺を発症した.その後,選択的気管支送気術を行ったが無気肺は改善せず,呼吸状態が悪化し生命維持困難な状況となった.骨盤内再出血の危険性があったが腹臥位療法を実施したところ,著明に無気肺が改善した.
    重力性無気肺に対して腹臥位療法は,換気/血流比の改善,体位ドレナージ効果,臓器圧迫解除による横隔膜運動の改善が得られることで酸素化が改善する.本症例では呼吸理学療法の併用も有効であった.
  • 黒崎 毅史, 森山 重治, 三好 健太郎
    2009 年70 巻4 号 p. 1025-1028
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    ヒストプラズマ症は国内では稀な真菌感染症であるが,近年輸入真菌症として国内発症例を散見する.今回われわれは肺ヒストプラズマ症の1手術例を経験したので報告する.症例は海外渡航歴を有する63歳,男性.検診にて胸部異常影を指摘され受診した.右S1に10mm大の腫瘤を認めた.気管支鏡検査では確定診断に到らなかったが,画像上肺癌が強く疑われることより胸腔鏡補助下右上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.病理組織所見は,中心部に乾酪壊死を伴う肉芽腫病変であり,悪性所見はなかった.Grocott染色により濃染される数ミクロン大の卵円形真菌を多数認め,その形態よりヒストプラズマ症と診断した.所属リンパ節にも同様の肉芽腫病変および菌体を確認した.ヒストプラズマ症は再発の危険性もあり,慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 片岡 正文, 仁熊 健文, 三村 哲重, 須井 健太, 吉田 龍一, 大原 利憲
    2009 年70 巻4 号 p. 1029-1032
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.慢性B型肝炎に伴う肝細胞癌に対し,肝亜区域切除が行われたのち,経過観察中,AFP,PIVKA-IIの再上昇とともに,右S3の肺転移と肺門リンパ節転移が出現した.PET(Positron Emission Tomography)にて他に遠隔転移がなく,肝内再発のコントロールも良かったため,右上葉部分切除と肺門リンパ節の摘出術を行った.切除標本の病理所見でもいずれの病巣にも肝細胞癌の転移であった.肺切除後3年目に残肝再発をきたし再切除し,その後も残肝再発に対しラジオ波を7回,再切除を1回行い肺切除後5年6カ月後の現在,指摘できる病巣なく生存中である.経過観察中肺転移を含め遠隔転移は出現していない.肺転移のほとんどがびまん性の転移であるため予後は不良である.単発の肺転移の場合,切除後長期生存例の報告も散見されるが,本症例のごとく肺転移,リンパ節転移をともに切除し長期生存を得た症例は非常に稀であり報告する.
  • 境 雄大, 対馬 敬夫, 木村 大輔, 福田 幾夫, 鎌田 義正
    2009 年70 巻4 号 p. 1033-1038
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.腹部症状を主訴に近医を受診し,腹部CTで左下葉に腫瘤を指摘された.胸部CTで左肺S6からS10に腫瘍を認めたが,肺門部・縦隔の有意なリンパ節腫大はなかった.経気管支肺生検で腺癌と診断された.腫瘍マーカーはCA19-9が288.3U/mlと高値を示した.上部・下部消化管内視鏡検査では異常所見はなかった.cT2N0M0,StageIBの評価で手術を行った.転移を有する肺門部リンパ節が肺動脈および上葉気管支へ浸潤しており,左肺全摘術を行った.S6からS10に52×30×37mmの腫瘍を認め,病理組織学的に高分化腺癌で粘液産生性腺癌であった.免疫組織染色でCA19-9陽性であった.進行度はpT2N2M0,StageIIIAであった.術後第14病日のCA19-9値は11U/mlと正常化していた.術後6カ月を経過したが,再発を認めていない.病理組織学的にCA19-9産生が確認された肺癌の報告は少ない.CA19-9産生肺癌に関する文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 雅彦, 高橋 玄, 渡部 英, 根上 直樹, 斎藤 徹也, 山田 正樹
    2009 年70 巻4 号 p. 1039-1043
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.平成19年5月より嘔吐あるも自然に軽快した.同年10月再び嘔吐あり水分摂取も不可能となり入院精査となった.内視鏡検査では胃前庭部に約10cm大の粘膜下腫瘍が認められ,上部消化管造影では同部に境界明瞭な陰影欠損があり造影剤の通過は不良であった.腹部CTでは胃の前庭部に嚢胞性病変が認められた.絶飲食後の内視鏡検査で腫瘍は6cm大にまで縮小し,同時に施行した腫瘍穿刺では無色漿液性の液体を吸引し,細胞診はclassI,アミラーゼ19,588IU/l,CEA 253.9ng/ml,CA19/9 184716.0U/mlと異常高値を呈し,異所性膵,胃嚢胞などを疑った.症状の増悪軽快を繰り返し,また悪性疾患の合併も否定できず同年12月に手術を施行し,病理検査は胃の異所性膵であった.胃の異所性膵によって前庭部での狭窄をきたした症例は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 栗田 信浩, 島田 光生, 岩田 貴, 西岡 将規, 吉川 幸造, 東島 潤
    2009 年70 巻4 号 p. 1044-1048
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.体重減少,上腹部腫瘤を主訴に受診.腹部CT検査,胃内視鏡下生検にて胃原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.左上腹腔を占める直径20cmの高リスクGISTであり,他臓器浸潤や,術中操作による播種を危惧し,イマチニブ400mg/日投与を開始した.投与開始後24日目から発熱,腹痛が出現し,翌日緊急入院.腹部CT検査では胃腫瘍は縮小していたが,腫瘍内に多量のairを認めた.腫瘍内への穿通,感染による発熱と判断し,緊急手術を施行した.腫瘍は左横隔膜へ浸潤し,大網内に転移を認めたが,肝臓,膵臓には浸潤していなかった.横隔膜に一部腫瘍を残存させ,胃全摘出術を施行した.腫瘍内は周辺の軟らかい実質成分と中心部の粘液で満たされた空洞がみとめられ,胃内腔と交通していた.イマチニブ投与後の穿通の報告はないが,特に巨大なGISTに投与する場合,急速な縮小に伴い,穿通,穿孔の可能性があり,注意を要する.
  • 井上 宰, 金田 巖, 庄司 勝, 石井 正, 初貝 和明, 舛岡 裕雄
    2009 年70 巻4 号 p. 1049-1053
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    胃噴門部に発育したgastrointestinal stromal tumor(GIST)に対して噴門形成を加えて切除した1例を経験したので報告する.症例は60歳の男性で,胃噴門部前壁にある3cm大の粘膜下腫瘍(SMT)が指摘され術前検査よりGISTが疑われていた.開腹下に胃噴門部SMTに対して断端を十分に確保し食道に切り込まずに全層で胃を局所切除し,欠損部を直接縫合閉鎖した.His角の破壊による胃食道逆流症状の発生の防止のために,胃穹窿部を食道に巻きつけ,Toupet法にて噴門形成を施行した.腫瘍の病理組織診断はGISTで,切除断端は陰性であった.術後1年経過したがGISTの再発,転移を認めず,逆流性食道炎などの発症はなかった.本術式は胃噴門部近傍のGISTに対する手術方法として有用であると考えられた.
  • 長久 吉雄, 吉田 泰夫, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
    2009 年70 巻4 号 p. 1054-1058
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    Humoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)をきたしたParathyroid Hormone Related Protein(以下,PTHrP)産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は82歳の女性で,2007年2月に食欲不振を主訴に来院した.精査にて胃噴門部癌と診断されたが,入院時検査で高Ca血症を認めたため,内分泌学的血液検査を追加施行したところintact PTH・高感度PTHがそれぞれ低下し,血清PTHrPは上昇していた.以上から,PTHrP産生胃癌によるHHMと診断した.可及的な高Ca血症の改善を図った後,脾合併胃全摘術,膵体尾部切除術を施行した.術後,血清CaおよびPTHrPは基準範囲内に低下し経口摂取も可能となった.しかし,術後17日目より血清Caは上昇へ転じ,PTHrPは67.8pmol/lにまで増加した.転移病巣が出現・増大し,術後38日目に死亡した.HHMを来した胃癌の予後は極めて厳しく,またPTHrPが胃癌の予後指標因子のひとつとなりうる可能性が推測された.
  • 石井 美帆, 稲川 智, 寺島 秀夫, 柳澤 和彦, 山本 雅由, 大河内 信弘
    2009 年70 巻4 号 p. 1059-1064
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診し胃癌と診断された.治療目的にて当科を紹介され,体中部癌(cT2cN1cH0cP0cM0,cStageII)に対し胃全摘術(D2郭清,Roux-en-Y再建)および胆嚢摘出術を施行した.開腹所見にてTreitz靱帯は無形成で十二指腸下行脚が後腹膜に固定されておらず,十二指腸から小腸は腹腔の右側に,結腸は左側に偏位しておりNon-rotation typeの腸回転異常症と診断した.腸軸捻やLadd靱帯の形成は認めなかったため,胃癌に対する手術のみ施行し,腸回転異常に対する手術は施行しなかった.術後10カ月が経過したが,腸軸捻症状は出現していない.偶発的に発見された腸回転異常症では積極的にLadd手術や腸管固定術を加える必要はないものの,胃切除術を行う場合には,十二指腸と右側結腸との位置関係が変化し腸軸捻転を発症しやすくなる可能性があることを念頭におき,術後の注意深い観察が必要である.
  • 徳川 奉樹, 日野 仁嗣, 小林 文, 小山 拡史, 北井 祥三, 稲葉 征四郎
    2009 年70 巻4 号 p. 1065-1070
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    Carbohydrate antigen 19-9(以下CA19-9)産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.食欲不振を主訴とし3カ月で6kgの体重減少を認めたため上部消化管内視鏡施行され胃体部に3型腫瘍を認めた.生検にて中分化型腺癌と診断し,幽門側胃切除を施行した.術前CA19-9は4,637と高値を示し術後3カ月後には57まで減少したが正常化は認めなかった.術後S-1などの化学療法を行ったが肝転移を認めた.腫瘍マーカーとして用いられるCA19-9は胃癌においては30%程度が上昇すると報告されている.今回術後CA19-9が1,400,000と高値を示しながらも長生し外来通院中である.
  • 田村 淳, 北口 和彦, 平良 薫, 馬場 信雄
    2009 年70 巻4 号 p. 1071-1076
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    胃髄様癌は特徴的な組織像を呈しEBウイルスとの関連が指摘されている稀な疾患である.今回われわれは多発肝転移を伴う高度進行胃髄様癌に対しS-1+CDDPによる術前化学療法を施行し組織学的CRを得た1例を経験した.症例は46歳,男性.心窩部痛を主訴として来院した.胃内視鏡検査にて胃体上部後壁に3'型腫瘍を認め,腹部CTおよびエコー検査にて所属リンパ節転移と多発肝転移を指摘された.生検組織の病理診断は胃髄様癌(Lymphoepithelioma-like carcinoma)であり腫瘍細胞はin situ hybridizationにてEBER(EB virus-encoded RNA)陽性であった.S-1+CDDPによる術前化学療法を計5コース施行後,D2郭清を伴う胃全摘術を施行した.切除標本の病理組織検査では原発巣,所属リンパ節ともに強い線維化が見られ腫瘍細胞の残存は認められなかった.
  • 下沖 収, 皆川 幸洋, 小松 英明, 板橋 英教, 阿部 正, 上杉 憲幸, 菅井 有
    2009 年70 巻4 号 p. 1077-1080
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    稀な特発性小腸穿孔の1例を経験したので報告する.
    症例は17歳,男性.家族歴,既往歴はなし.就寝後に上腹部痛と嘔吐が出現したため来院した.来院時,腹部全体の圧痛と筋性防御を認め,腹部単純X線撮影にて両側横隔膜下に遊離ガス像を認めた.上部消化管内視鏡検査にて胃十二指腸に異常を認めなかった.原因不明の消化管穿孔の診断で手術を施行した.Treitz靱帯より55cm肛門側空腸に約15mmの穿孔を認めたため,穿孔部を含む空腸部分切除を施行した.切除標本では,いわゆるpunched out状の穿孔を認める以外に異常所見を認めなかった.病理組織学的所見では,腸管壁全層の完全断裂を認めたが,粘膜の漿膜側へのslidingは認めなかった.急性炎症細胞浸潤を伴う腹膜炎を伴っていたが,その他の病的所見は認めず,特発性小腸穿孔と診断した.術後経過は良好で,術後第11病日に軽快退院した.
  • 横山 貴司, 石川 博文, 渡辺 明彦
    2009 年70 巻4 号 p. 1081-1085
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    患者は26歳,男性.1995年頃に他院でCrohn病と診断されるも,自己判断にて治療を受けていなかった.2006年12月初旬から下痢,腹痛,発熱を認め,腹痛が増強したために紹介受診となった.腹部は板状硬で筋性防御を認め,腹部CT検査で腹水の貯留と回腸末端部に著明な壁肥厚と強い造影効果を認めたため,Crohn病による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.腹腔内に膿性腹水を認め,小腸穿孔による汎発性腹膜炎であり,小腸部分切除術を施行した.切除標本は,肉眼所見で120cmにわたる縦走潰瘍と狭窄を,病理所見で類上皮細胞性肉芽腫と全層性の炎症性細胞浸潤を認めた.術後1年9カ月現在,食事療法,内服加療,抗TNF-α抗体の維持療法を行い,現在Crohn病の再発,増悪は認めていない.
    Crohn病に対する定期診察と適切な治療の必要性を再認識させられた症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 福島 正之, 伊達 和俊, 藤田 加奈子, 上原 智仁
    2009 年70 巻4 号 p. 1086-1090
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    小腸内視鏡により存在を診断し,腹腔鏡補助下に切除した空腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)の1例を経験したので報告する.症例は,67歳,男性.下血・貧血を認め,上部・下部消化管内視鏡検査を行ったが,出血源は不明であった.再度下血・貧血認め,小腸造影・小腸内視鏡で空腸に15mm大の粘膜下腫瘍を認め,腹腔鏡下に播種・肝転移を検索し,腹腔鏡補助下小腸切除を施行した.腫瘍径15mmで紡錘形細胞からなる腫瘍であった.免疫染色でc-kit,CD34陽性で腫瘍径小さく,MIB-1 index(<1%)で超低リスクのGISTと診断された.現在,下血・再発なく外来で経過観察中である.
  • 韓 仁燮, 玉川 洋, 加藤 直人, 藤澤 順, 松川 博史
    2009 年70 巻4 号 p. 1091-1094
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.40年前に髄膜瘤に伴う神経因性膀胱に対し,回腸を導管として用いた膀胱皮膚瘻形成術を施行した.その後,結石による尿路閉塞を認めたため,尿管皮膚瘻を形成したが,5年後,慢性腎不全により人工透析が導入された.平成20年4月,回腸導管皮膚開口部からの出血を主訴に来院し,瘻孔造影で回腸導管に隆起性病変が確認されたため,回腸導管腫瘍の診断で,回腸導管および膀胱部分切除を施行した.病理学的検査で回腸粘膜より発生し,膀胱へ進展する回腸癌を認めた.腸管を用いた尿路変向術は広く行なわれているが,近年それらを発生母地とする悪性腫瘍の報告が散見される.今回,われわれは回腸導管による尿路変更術後,40年を経て発生した回腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 碇 直樹, 松山 悟, 下西 智徳, 那須 賢司, 大田 準二
    2009 年70 巻4 号 p. 1095-1098
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2007年1月27日(土)心窩部痛,右下腹部痛を主訴に夜間外来を受診した.30年前虫垂炎の診断で開腹されたがドレナージのみで治療され未切除だった.血液検査で炎症所見を認め,US施行されたが診断は困難であったため,CTを施行し当直医は急性腸炎と診断し外来で抗菌薬加療を開始した.翌日,圧痛を右季肋部に認めた.翌々日,症状及び炎症所見は改善傾向であったが,放射線科医によるCT再読影で,盲腸の頭側偏位と腫大した虫垂,糞石を認め,移動盲腸を伴う急性虫垂炎と診断された.虫垂根部の処理を考え右上腹部傍腹直筋切開で開腹すると盲腸・上行結腸周囲は右側腹部,右上腹部で強固に癒着しており,これを剥離し盲腸壁の一部を含め虫垂を切除した.移動盲腸は稀ではなく,急性腹症の診断においては念頭に置く必要がある.今回,CTで移動盲腸に伴う急性虫垂炎と診断し,適切な皮膚切開での病変切除が可能であった.
  • 吹野 信忠, 川崎 篤史, 三松 謙司, 久保井 洋一, 加納 久雄, 大井田 尚継
    2009 年70 巻4 号 p. 1099-1103
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,虫垂子宮内膜症が原因となった完全型虫垂重積症の1症例を経験した.症例は43歳,女性.5日前から腹痛が出現,右下腹部痛,心窩部痛を主訴に近医を受診し,急性虫垂炎の疑いにて同日当院紹介受診した.CT検査,腹部超音波検査において回盲部のTarget's signを認め,腸重積症の診断にて同日緊急手術を施行した.手術所見において虫垂が盲腸に完全に内翻した所見を認め,虫垂重積症と診断し回盲部切除を施行した.病理組織学的所見より虫垂子宮内膜症が原因による完全型虫垂重積症と診断した.腸管子宮内膜症による虫垂腸重積は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 俊二, 大地 哲史, 土居 浩一, 緒方 健一, 前田 健晴
    2009 年70 巻4 号 p. 1104-1108
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.進行膵癌に対して化学療法および放射線療法を施行された.放射線治療終了から1カ月後に下腹部痛が出現し当院を受診した.腹部CT検査にて急性虫垂炎を診断され手術を施行した.術中所見にて高度に腫大した虫垂を認めたが,明らかな腫瘤や播種を認めなかった.切除虫垂の病理学的検査にて腺癌細胞を認め,CK7染色陽性であったことより膵癌からの虫垂転移と診断した.
  • 鈴木 大亮, 向井 秀泰, 嶋村 文彦, 宮崎 勝
    2009 年70 巻4 号 p. 1109-1112
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.便秘,下腹部痛を主訴に近医を受診,腸閉塞症の診断にて入院となった.2年前に帝王切開の既往があった.保存的治療にて改善しないため,精査加療目的にて当センターへ紹介された.腹部単純CT検査にて横行結腸の著明な拡張,下行結腸からS状結腸に大量の便貯留を認めた.注腸造影検査では造影剤はRsより口側へ通過せず,いわゆるbird beak sign様所見を呈した.大腸内視鏡検査では肛門より約20cmの部に狭窄を認め,同部より口側へはファイバー挿入不能であった.S状結腸の著明な拡張像は認めなかったが,注腸造影検査と大腸内視鏡検査所見から,内視鏡的整復不可能なS状結腸軸捻転症疑いにて緊急手術を施行した.手術所見では,S状結腸腸間膜と子宮後面の間に形成された索状物により,Rsで閉塞をきたしていた.腸管壊死はきたしておらず,索状物切除のみ施行した.術後は特に合併症無く経過し,術後第14病日に退院となった.
  • 前田 賢人, 中川 淳, 小林 敏樹, 竹花 卓夫, 米沢 圭, 宮下 正
    2009 年70 巻4 号 p. 1113-1117
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.血尿や排尿痛から当初膀胱炎として治療されていたが,骨盤内の巨大腫瘤を指摘されて当院に紹介された.cT4(膀胱・腹壁)N3H0P0M1(No.216)cStageIVのS状結腸癌と診断され,左腎静脈より尾側のNo.216の腫大リンパ節には,FDG-PET(18F-fluorodeoxy-glucose positron emission tomography)においても集積を認め,転移陽性と考えられた.S状結腸直腸切除・膀胱全摘・D3+No.216郭清+骨盤内側方郭清・回腸導管による尿路変更術・下行結腸人工肛門造設術(Hartmann手術)を施行した.病理検索ではNo.216を含め郭清リンパ節は全て転移陰性であり,pStageII,根治度Aと判定された.術前82.3ng/mlであったCEA値は術後には正常化した.炎症などの影響でリンパ節がFDG-PETで転移偽陽性を呈する場合があり,治癒切除の機会を逸することがないように慎重な判断が求められると考えられた.
  • 仲宗根 由幸, 西島 功, 池原 康一, 池村 綾, 宮城 和史, 伊波 潔
    2009 年70 巻4 号 p. 1118-1121
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.高血圧治療中に貧血を指摘され,精査にてS状結腸癌と診断された.術前の腹部CT検査にて腸回転異常症と診断,さらに下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery;以下,IMA)の走行異常が疑われたため3D-CT Angiographyを行ったところ,IMAの本幹は右側腹部の小腸へ走行し,同血管より左側結腸およびその尾側への支配血管が分枝されていた.手術はS状結腸切除術を行い,術前の画像診断と同様の血管走行を認め,IMAの本幹は温存しつつリンパ節郭清を行った.大腸癌を合併した腸回転異常症の報告例は散見されるが,自験例のようにIMAの走行異常を伴う報告はなく,きわめて稀であると考えられた.
  • 近藤 幹, 木下 浩一, 渡邊 喜一郎
    2009 年70 巻4 号 p. 1122-1127
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は102歳,男性.平成18年2月より頻回に腹痛と便秘症状を訴えていたが,7月下旬に腹痛と傾眠傾向が出現し改善傾向がないため精査加療目的で内科に入院した.入院後症状が一旦軽快するもその後増悪し頻回の嘔吐が出現,腹部レントゲン検査にてニボウやS状結腸の拡張を認め,大腸内視鏡検査で全周性のS状結腸癌を認めた.超高齢者のため,種々のリスク評価システムを用いて術前リスク評価を行った上で,9月27日にリンパ節郭清を伴うS状結腸切除術,ハルトマン手術を行った.術後,肺炎と膀胱炎を合併するも概ね良好な経過で術後27日目に軽快退院した.100歳以上の高齢者であっても術前に十分なリスク評価を行い,手術適応を検討した上であれば全身麻酔下にも安全な手術が行えると考えられた.
  • 西村 健志, 鈴木 信親, 三浦 泰朗, 片山 原子, 平田 勝, 田中 潔
    2009 年70 巻4 号 p. 1128-1133
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.1999年8月検診で便潜血反応陽性を指摘される.大腸内視鏡検査で直腸Raに糜爛を伴う表面粗像な粘膜を認め,生検で単調リンパ浸潤の診断であった.その後,定期的に生検を施行するも結果は同じであった.2003年2月下痢,下血が出現し,内視鏡検査で同部位に増大した境界明瞭な易出血性の隆起性病変を認めた.生検の結果は悪性リンパ腫の診断であった.2003年3月低位前方切除術およびD2リンパ節郭清を施行した.切除標本で直腸Raに12×11cm大の平板状隆起性病変を認めた.病理組織学的検査結果は,T細胞性悪性リンパ腫であり,StageIIIb(A,N2,P0,H0,M0)であった.一般に大腸原発T細胞性悪性リンパ腫の予後に関しては非常に不良であることが知られている.今回われわれは直腸原発T細胞性悪性リンパ腫に対して,手術および術後放射線化学療法により長期生存を得た1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 金城 洋介, 吉冨 摩美, 韓 秀炫, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2009 年70 巻4 号 p. 1134-1138
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.多発肝転移を伴う直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術を施行.術後に化学療法を行ったところ肝転移巣は著明に縮小したが,9カ月目に突然歩行困難を認め再入院となった.MRIで脊髄圧迫を伴う第三胸椎転移を認め,麻痺は急速に進行し入院6日で両下肢完全麻痺となった.肝転移巣は化学療法で制御できており6カ月以上の生命予後があると判断し,入院後8日目に椎体腫瘍の可及的掻爬を含めた後方除圧固定術を施行.さらに30Gyの放射線療法を追加した.術翌日から自力膝立て運動を始め10日目に歩行器歩行ができ,さらに回復し杖歩行で退院することが可能であった.脊椎転移による麻痺に対する適切な治療は患者のQOLを改善するために重要である.主要臓器へ転移を合併していてもそれが制御可能ならば,脊椎転移に対する手術は患者の歩行機能改善とQOL向上に極めて有用で積極的に選択すべきである.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 村上 仁志, 菅野 伸洋, 李 進, 益田 宗孝
    2009 年70 巻4 号 p. 1139-1143
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは悪性の疑われた下行結腸腺腫を合併した直腸癌に対し,3D-CTを用いて下腸間膜動脈の分枝を予測し血流を温存しつつ2カ所にわたって分節的に根治的な切除術を施行しえた1例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.便通異常を自覚し平成19年10月当科初診,CFで肛門縁から50cmの下行結腸にY-III病変(group3)を認め,肛門縁から10cmに2型直腸癌を認めた.下行結腸腺腫は径3cmと大きく癌の合併が疑われ全層切除が必要と考えられ,2病変を一括切除とすると吻合が困難となることも予想された.そこで3D-CTを行い下行結腸腫瘍はS状結腸動脈第1枝(S1)領域にあり,第2枝(S2)を温存し切除可能と判断した.11月手術施行.左結腸動脈を温存しS1を末梢で切離し下行結腸部分切除術D1郭清施行,血管壁を露出しNo. 252,253を郭清し上直腸動脈はS2を温存,これより末梢で切離して低位前方切除術施行した.術後合併症なくPOD15退院.
  • 山本 竜義, 山本 英夫, 伊佐治 孝洋, 籾山 正人, 新美 清章, 早川 直和
    2009 年70 巻4 号 p. 1144-1149
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は91歳,女性.突然の腹痛で当科へ入院した.腹部X線写真にて小腸と大腸の著明な拡張を認めた.腹部CTでは,肝内門脈に著明なガス像がみられ,卵巣嚢腫と推測される9.3×9.1cm大の嚢胞が,骨盤腔を占拠しており直腸を左方に圧排,その口側のS状結腸壁は肥厚し,壁内にガス像がみられた.腰椎左側に後腹膜腔気腫を伴っていた.骨盤腔内の嚢胞性病変による機械的イレウスが原因で生じた門脈ガス血症と診断し,イレウス解除を目的に緊急手術を行った.骨盤腔には,左卵巣嚢腫が時計方向に180度捻転し骨盤腔を占拠しており,卵管とともに摘出した.摘出した嚢腫はserous cystoadenomaと診断された.術中,腹腔内臓器を検索したが,壊死等の異常所見はみられなかった.
    術後16時間で施行したCTで門脈内のガスは消失していた.腹水培養,血液培養は陰性であった.
    術後に施行した上部内視鏡検査および下部内視鏡検査では,明らかな異常所見はみられなかった.術後経過は良好で21日目に退院した.
  • 田村 竜二, 岸野 貴賢, 岡本 貴大, 石堂 展宏, 門脇 嘉彦, 森 隆
    2009 年70 巻4 号 p. 1150-1154
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は,総胆管結石症に対し,内視鏡的乳頭括約筋切開術の既往がある63歳女性で,右上腹部痛,発熱を主訴に当院を受診した.精査にて胆嚢結石・下部総胆管結石・急性胆管炎と診断し,ERCP・結石除去術を施行した.翌日,右上腹部圧痛と筋性防御を生じ,CT検査で,腹腔内遊離ガス像を認めたため緊急手術施行した.肝表面に白色小結節が多発し,その一つが軽度陥凹し膿苔の付着を認めたため,急性化膿性胆管炎に続発した微小肝膿瘍破裂と診断,腹腔鏡下胆嚢摘出術・ドレナージ施行し良好に経過した.急性化膿性胆管炎によって微小肝膿瘍が多発し,肝膿瘍破裂を起こした稀な1例を経験したので報告する.
  • 笹田 伸介, 高見 裕子, 龍 知記, 和田 幸之, 才津 秀樹, 桃崎 征也
    2009 年70 巻4 号 p. 1155-1160
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例1は69歳,女性.1996年にS状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行された.1999年,肝外側区域とS4,S7に肝内転移が疑われる脾門部の肝細胞癌を認めたため,開腹手術を施行した.病理組織学的所見は,脾門部と外側区域の腫瘍は肝細胞癌であったが,S4腫瘍は転移性肝癌であった.症例2は58歳,男性.2004年にS状結腸癌でS状結腸切除術を施行された.半年後に肝S8に肝細胞癌,肝S6に転移性肝癌が疑われ,開胸下にマイクロ波凝固壊死療法を施行した.病理組織学的所見は術前診断と同様であった.肝細胞癌と大腸癌肝転移が同時に存在する症例は非常に稀であり,今回われわれは2例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 金子 高明, 清水 公雄, 相田 俊明, 武藤 高明
    2009 年70 巻4 号 p. 1161-1165
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.25年前右肝管結石にて右肝管空腸吻合術を施行(術式の詳細は不明).10年前より,背部痛出現し,腹部超音波検査にて肝内結石指摘されたものの,血液検査にて顕著な異常を認めないため経過観察となった.背部痛が徐々に強くなってきたため,2007年7月に腹部CTを施行した.CT上,肝門部に巨大結石を認めたため,当科紹介入院となった.精査の結果,右肝管・総肝管空腸側々吻合術後,吻合部巨大結石と診断し,8月初旬,手術を施行した.挙上空腸を切開し,8cm大の巨大結石を摘出した.経皮経腸的にチューブを胆管空腸吻合部に留置し,切開部挙上空腸を直接縫合した.術後経過は順調であった.結石成分はビリルビンカルシウム,脂肪酸カルシウムであった.胆管空腸側側吻合術後,25年目に8cm大の再発巨大結石を認めた非常にまれな症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 右近 圭
    2009 年70 巻4 号 p. 1166-1170
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    胆嚢捻転は急性腹症の中で稀な疾患であり,術前診断が必ずしも容易ではない.本症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は86歳,女性.右季肋部痛と発熱にて受診し,CTで胆嚢の緊満のみを認め胆嚢炎と診断した.保存加療にて一旦軽快したが4日後に腹膜刺激症状が出現し,エコーにて遊走胆嚢と胆嚢壁の著明な肥厚および肝床部の液体貯留を認め,胆嚢捻転,壊死性胆嚢炎と診断し緊急手術を施行.完全型胆嚢捻転による壊死性胆嚢炎であり,胆嚢摘出と腹腔内ドレナージにて軽快した.胆嚢捻転は遊走胆嚢を背景とし,壊死性胆嚢炎や胆汁性腹膜炎に移行するため,時期を逃さない手術が必要である.症状が胆嚢炎に似るため,術前診断が困難な症例も少なくない.胆嚢炎では本疾患を鑑別に置き検査,処置を行うことが重要である.また完全型捻転自然軽快例の報告はわれわれが調べた限り本邦初であった.
  • 星本 相淳, 守瀬 善一, 池田 匡宏, 香川 幹, 溝口 良順, 杉岡 篤
    2009 年70 巻4 号 p. 1171-1176
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.肝左葉の嚢胞性病変の精査目的に受診した.腹部CTで外側区域に嚢胞壁に造影効果を伴う多房性嚢胞性病変と内側区域側に連続する充実性部分を認めた.嚢胞性部分は胆管嚢胞腺癌で,周囲の充実性部分はその浸潤性変化と診断し,肝拡大左葉切除術を施行した.切除標本は外側区域を中心としたhoneycomb様を呈する多房性の嚢胞性部分とその周囲,特に内側区域側に拡がる充実性部分から成り,病理組織学的に広範な肝実質浸潤,胆管内進展,リンパ節転移および肝内転移を伴う胆管嚢胞腺癌と診断された.術後1年7カ月目に残肝再発をきたし再切除を施行.その後,多発肺転移,脳転移にて再々発したが,全身化学療法,ガンマナイフ治療を施行し,初回術後4年5カ月経過した現在,生存中である.
  • 桜井 直樹, 飯澤 肇, 田村 元
    2009 年70 巻4 号 p. 1177-1180
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.全身倦怠感と黄疸にて当院へ紹介された.上部から中部にかけての肝外胆管に腫瘤が認められ,No.12リンパ節が腫大しており,上中部胆管癌と診断した.肝側断端を陰性にするために経皮経肝門脈右枝塞栓術を施行後,拡大肝右葉尾状葉切除,胆管切除,No.16a2b1を加えた2群までのリンパ節郭清を行った.切除標本の病理所見では,一部管状腺癌を伴っているが,大部分は小型の腫瘍細胞が充実性の胞巣を形成し,chromogranin A,Grimelius染色陽性で,腺内分泌細胞癌と診断した.すでに切除肝に肝転移を認めた.術後4カ月の腹部超音波検査で,大量の腹水を伴う両葉多発肝転移再発がみられ,急激に全身状態の悪化をきたし,術後5カ月で永眠された.病理解剖を行い,肝臓・横隔膜・膵臓・右副腎・リンパ節に腺内分泌細胞癌の転移と浸潤がみられた.
  • 坂本 渉, 円谷 博, 小野 俊之, 小野澤 寿志, 竹之下 誠一
    2009 年70 巻4 号 p. 1181-1183
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術後の膵液瘻は術後早期に起こることが殆どであり,また活性化された膵液を含むため周囲皮膚・瘻孔内は強い刺激にさらされ,ひとたび形成されると治療に難渋することが殆どである.今回われわれは膵頭十二指腸切除術(PD)後2年を経過して発生した膵液による難治性空腸皮膚瘻に対し,ソマトスタチンアナログ(SMS)とプロトンポンプインヒビター(PPI)の併用で保存的に治療可能であった1例を経験したので報告する.
  • 田中 智和, 甲斐 敬太, 田渕 正延, 山崎 文朗, 湯ノ谷 誠二
    2009 年70 巻4 号 p. 1184-1187
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    67歳,男性.検診で膵体部に嚢胞性病変を指摘された.血中CA19-9は上昇し,腹部CTで径4.5×3.5cmの単房性嚢胞を認めた.悪性を否定し得ず,腫瘤摘出術を施行した.病理学的には重層扁平上皮ないしは粘液を含む立方上皮で裏打ちされた単房性の嚢胞で,濾胞形成を伴うdense lymphoid tissueを嚢胞壁に認めた.さらに皮脂腺が存在したため,脂腺成分を伴った膵リンパ上皮嚢胞と診断した.リンパ上皮嚢胞は,膵では比較的稀な病変であり,脂腺成分を伴う症例はさらに少ない.脂腺成分を伴う場合,類皮嚢腫(dermoid cyst)との鑑別が問題となる.この両者は異なる病変であり,dense lymphoid tissueの有無,毛髪あるいは毛根の有無,脂腺の数および成熟度等の所見により,正確に分類したうえで症例を蓄積していく必要がある.
  • 三橋 登, 大塚 将之, 木村 文夫, 清水 宏明, 吉留 博之, 宮崎 勝
    2009 年70 巻4 号 p. 1188-1193
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    副脾は比較的多く経験されるが,膵内副脾に嚢胞が発生することは稀である.今回われわれは,膵内副脾に発生した類表皮嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は32歳,女性.検診の超音波検査にて偶然膵尾部に80mm大の嚢胞性病変を指摘された.腹部Dynamic-CTでは膵尾部に比較的厚い皮膜を有する単房性の嚢胞を認め,内部隆起は認めなかった.MRIでは,T2強調画像でhigh intensityであり,MRCPでは膵管と嚢胞に交通を認めなかった.悪性疾患を否定し得なかったため,膵体尾部切除・脾合併切除術を施行した.切除標本は白色の脂肪様物質を含む単房性嚢胞であり,病理検査にて膵内副脾に発生した類皮様嚢胞と診断された.膵尾部嚢胞性疾患において,膵内副脾に発生する類表皮嚢胞は稀であるものの鑑別診断として念頭に置くべきであると考えられた.
  • 大城 直人, 川上 浩司, 砂川 宏樹, 當山 鉄男, 稲嶺 進, 座波 久光
    2009 年70 巻4 号 p. 1194-1198
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.水様性下痢を主訴に来院した.血液検査にて低カリウム血症を認め腹部の画像診断は,膵頭部に径3cm大の境界が不明瞭な腫瘤性病変を認めた.血中のVIP値は490pg/mlと上昇しており膵VIP産生腫瘍によるWDHA症候群と診断した.補助療法による全身状態の改善の後,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見では核異型,核分裂像があり,脈管侵襲も認められた.免疫染色ではVIP染色陽性で悪性VIP産生腫瘍と診断された.術後血中VIP値は19pg/mlと正常化し,軽快退院したが,4年目に多発性肝転移に伴う敗血症にて亡くなった.膵VIP産生腫瘍は稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 中嶌 雅之, 平尾 優子, 木村 有, 林 亨治, 横溝 博, 平田 稔彦
    2009 年70 巻4 号 p. 1199-1203
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.平成12年に子宮頸癌に対して子宮全摘術を施行され,その後術後補助化学療法,放射線療法を施行された.平成20年5月下旬,右下腹部痛が出現し救急外来を受診した.腹部全体に圧痛を認め,腹部レントゲン写真でFree airを認めた.CT上,腹水の貯留も認めたため,同日,上部消化管穿孔の疑いで緊急手術を施行した.術中所見では無臭で黄色透明の腹水貯留を認めたが,消化管の穿孔は認めなかった.術後3日目,尿道バルーンカテーテルを抜去した後,尿量の減少と黄色透明な腹水の増加を認めた.再度バルーンカテーテルを留置すると尿量の増加と腹水の減少を認め,放射線治療後の膀胱自然破裂と診断した.バルーン抜去後,定期的自己導尿を行い症状改善し術後28日に軽快退院となった.放射線治療後の膀胱自然破裂の報告は散見されるが,Free airを伴った症例は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 村上 聡一郎, 大塚 隆生, 北島 吉彦, 佐藤 清治, 中房 祐司, 宮崎 耕治
    2009 年70 巻4 号 p. 1204-1208
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.主訴は腹痛.1994年に子宮体癌に対し子宮・付属器摘出術,傍大動脈リンパ節郭清,および術後補助化学療法を施行された.2007年9月に腹痛を認め近医で腹部CTを施行したところ,膵頭部前面に腫瘤性病変を認め,精査加療目的に当院を紹介された.画像上,径約3cmの辺縁平滑な楕円形の腫瘤が膵頭部と胃前庭部の間に存在し,内部は壊死性変化をきたしていた.膵との間には脂肪組織が介在するものの胃壁との境界が不明瞭な部位が存在した.FDG-PETでは同部位にのみ集積を認めた.胃gastrointestinal stromal tumorもしくは腸間膜腫瘍を疑い,腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.術中所見で腫瘍は右胃大網動脈起始部に存在し,胃,膵との連続は認めなかった.病理組織診断では子宮体癌のリンパ節転移であった.今回われわれは子宮体癌術後13年目に右胃大網動脈領域リンパ節再発をきたした1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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