日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径ヘルニア偽還納の1例
竹内 正昭坂本 照夫白水 和雄
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2009 年 70 巻 5 号 p. 1556-1560

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抄録

症例は58歳,男性.左鼠径ヘルニア嵌頓症状を認め,心窩部痛も認め近医受診,用手還納されるも翌日も心窩部痛改善せず近医再診,イレウスの診断で,絶飲食,輸液管理された.翌々日嘔吐を認め,イレウスの悪化と診断され,精査,加療目的で当大救命センター紹介,搬入となった.腹部全体に痛み,圧痛を認めたが,鼠径部膨隆や反跳痛,筋性防御は認めなかった.腹部造影CT検査で左下腹部に球型になった拡張した小腸を認めた.腸管壊死はきたしていないと判断し,絶飲食,long tube挿入にて経過観察した.long tube造影検査で骨盤腔内の小腸の完全閉塞を認めた.腸管の減圧後,手術施行した.深鼠径輪より腹膜前腔に小腸の一部が入り込み締め付けられ,左鼠径ヘルニア偽還納によるイレウスであった.術後経過は良好で術後12日目に退院した.鼠径ヘルニア偽還納は極めて稀である.若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2009 日本臨床外科学会
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