2010 年 71 巻 10 号 p. 2615-2619
症例は86歳,男性.2009年1月23日右鼠径部腫瘤の主訴で当院受診.当初は嵌頓,腸閉塞症状等認めず,待機的手術予定であったが,2009年1月27日,上腹部痛の主訴のもと当科再診,腹部単純X線でNiveauを認め,腹部骨盤CT検査で右鼠径部に腸管の嵌頓,上腹部にWhirl signを認めた.右嵌頓鼠径ヘルニアによる続発性小腸軸捻転症を疑い,同日腹腔鏡補助下に緊急手術を施行した.腹腔内は全体に拡張した小腸を認め,回腸末端のRichter型右嵌頓鼠径ヘルニアを認めた.嵌頓した腸管を鉗子で腹腔内に整復,嵌頓部腸管の血流障害は認めなかった.さらに検索したところ,上腸間膜動静脈を軸とし,反時計方向に約720度の軸捻転を認めたため,腸管整復術を施行した.捻転部小腸の血流障害は認めず,腸管切除は不要であった.Mesh Plug法による右鼠径ヘルニア根治術を施行し,手術を終了した.術後経過は良好で,術後17日目に軽快退院した.