日本臨床外科学会雑誌
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症例
切除後6年で孤立性肺転移をきたした膵癌の1例
江本 慎蒲池 浩文田原 宗徳神山 俊哉松下 通明藤堂 省
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キーワード: 膵癌, 長期生存, 肺転移
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2010 年 71 巻 4 号 p. 1034-1038

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抄録

膵癌の5年生存率は切除例でも13.0%と,予後不良の疾患である.今回膵癌切除後6年で肺の孤立性転移にて再発し,切除しえた症例を経験したので報告する.症例:79歳,女性.現病歴:2002年7月頃より上腹部不快感を訴え,近医を受診.CTにて膵癌と診断された.同年9月,当科紹介初診し,膵頭十二指腸切除術を施行.病理組織像は浸潤性膵管癌(Ph TS2 pCH(-)pS(+)pRP(+)pPV(-)pA(-)pPL(+)pOO(-)pT4 pN0 M0 pStageIVa)であった.術後化学療法としてgemcitabineおよびUFTの投与を行った.2008年3月経過観察中のCTにて肺S8に結節影を認め,経気管支肺生検にて膵癌の肺転移と診断.局所再発やその他の遠隔転移を認めず,同年5月に胸腔鏡下肺切除術を施行した.肺転移切除後も1年間無再発で経過している.膵癌術後長期生存例の中には孤立性の遠隔転移が発生する場合があり,他に再発を認めない場合には切除することが患者の予後に寄与すると考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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