抄録
下大静脈内腫瘍栓子を合併した腎腫瘍摘出術では,手術操作による腫瘍栓子の遊離や空気塞栓症が生じる可能性がある.このような致死的な合併症を回避するためには,腫瘍栓子の形態を経時的に観察しつつ循環動態の変動に対しても迅速に対応する必要がある.われわれは,経食道心エコー(TEE)だけでなく肺動脈カテーテルを用いたモニタリングを行うとともに,下肢のうっ血予防と手術視野の確保のため,さらに腫瘍塞栓症や空気塞栓症による緊急開心術への移行に備えて部分体外循環を使用することにより,合併症なく麻酔管理を行うことができた3症例を経験したので報告する.