2010 年 30 巻 4 号 p. 638-641
拡張型心筋症は麻酔管理上,麻酔薬による循環虚脱や致死性不整脈への対策が重要となる.今回,拡張型心筋症患者の鼓室形成術の全身麻酔を経験した.65歳,男性.NYHA分類II度,左室駆出率(EF)は33%であった.慢性中耳炎に対して,鼓室形成術を施行した.術中の心機能評価はFloTracTM/VigileoTMを用いて行った.麻酔維持で低用量からプロポフォールを開始したにもかかわらず,心係数の予想外の低下をきたしたが,FloTracTM/VigileoTMを参考に輸液負荷を行い,改善し得た.拡張型心筋症では麻酔薬による循環抑制が著しい場合があり,適切なモニタリングのもとで薬剤の選択や投与量を慎重に判断する必要がある.