日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
特集 <細胞診と組織診からみた子宮体癌の診断>
子宮体癌の診断における内膜細胞診と組織診
—利点と弱点—
上坊 敏子
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 47 巻 4 号 p. 330-336

詳細
抄録

目的 : 内膜細胞診と内膜組織診の利点と弱点を明らかにすること.
方法 : 子宮体癌 881 例を対象とした. 細胞診の判定は陰性・疑陽性・陽性で表現し, 疑陽性以上を検出とした. 組織診は, 悪性と判定したものを正診とした. 細胞診検出率, 組織診陽性率と臨床病理学的因子との相関, 子宮鏡施行例について検討した.
成績 : 細胞診は, 陰性 4.3%, 疑陽性 15.1%, 陽性 80.6%で, 検出率は 95.7%となり, 組織診の正診率 87.5%より有意に良好であった (p<0.01). 細胞診検出率は組織型・分化度と相関しなかったが, 組織診では類内膜腺癌, G1 類内膜腺癌で有意に低い正診率だった. 手術進行期・筋層浸潤と細胞診の検出率も相関しなかったが, 組織診ではIa 期, Ib 期や筋層浸潤のない症例での正診率が低かった. G1 腺癌や早期癌では細胞診で疑陽性と判定されている症例の頻度が高かった. 診断目的で子宮鏡を施行した症例では, Ia 期, 筋層浸潤のない症例の頻度が子宮鏡非施行例に比し有意に高かった.
結論 : 内膜細胞診の利点は, G1 腺癌・早期癌でも検出率が高いことである. しかし, G1 腺癌・早期癌では高頻度に疑陽性と判定されているので, 細胞診疑陽性・陽性例では, 組織診が陰性でも子宮鏡を用いた精査が必要である.

著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top