日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺嚢胞性病変の細胞学的検討
丸田 淳子野口 志郎山下 裕人
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1997 年 36 巻 1 号 p. 13-18

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抄録

甲状腺の嚢胞性病変に由来する穿刺吸引細胞診材料を用いて細胞学的検討を行った.病変の一部以上に嚢胞性変化を伴う頻度は, 乳頭癌531例, 濾胞癌61例, 濾胞腺腫865例, 腺腫様甲状腺腫797例でそれぞれ21%, 43%, 65%, 78%であった.嚢胞を伴った乳頭癌および濾胞腺腫は, 実質性のものに比し平均腫瘍最大径が有意に大きかった (p<0.001).嚢胞性病変の細胞像は, 背景に多数の組織球がみられ, 上皮細胞の出現率は充実性病変で91%, 嚢胞性病変で58%であり, 特に良性病変からの出現率が低下した.嚢胞性の乳頭癌において上皮成分を認めた86例のうち悪性細胞陽性所見は2回までの細胞診の施行により77例 (90%) まで上昇した.嚢胞性病変に対する細胞診では少なくとも2回以上の穿刺吸引細胞診の施行が必要であった.嚢胞性の乳頭癌では, 空胞変性を示す乳頭状集塊や細胞集塊周辺のほつれ現象が特徴的な所見であった.核はすりガラス状のものは少なく, 核内細胞質封入体や核溝がみられた.これらは, 良性疾患でもみられるため過重視しないことが必要であった.良性疾患では単個の細胞が少なく, 異型の強い細胞集塊もみられた.この場合には他の細胞集塊の所見を加味した総合的な判定が求められた.

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