モモの成熟果の果肉が桃赤色を呈する“赤肉症”について, その特徴ならびに赤肉果発生の品種, 樹体, 園地および年次間差を調査した. “赤肉症”は, 成熟果の果肉にフェノール物質であるアントシアニンが蓄積する現象であった. 赤肉の程度と果肉硬度との間に負の相関が認められたが, 果実重および果汁糖度との関係は明確でなかった. 赤肉果の発生率は, 品種間や園地間での差は小さかったが, 樹体間では大きく異なり, 同一園でもほとんど発生しない樹体がある一方, 100%近い発生率を示す樹体もあった. 赤肉果多発樹とそうでない樹体から収穫した果実について収穫後の赤肉の進行程度を比較したところ, 前者では貯蔵日数が増すにつれて赤肉の程度が激しくなった. 赤肉果発生率の年次変動は小さく, 多発樹とそうでない樹に区別できたが, ひとたび赤肉果が発生するとその後は毎年のように赤肉果が多発した. 秋季に根の乾物重を調べたところ, 赤肉果多発樹ではそうでない樹体に比べて小根, 特に2mm以下の細根の量が少なかった. これらの結果からモモの赤肉果発生の要因について考察した.