園芸学会雑誌
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数種類のユリ (Lilium spp.) の自家受粉およき交雑受粉における柱頭受粉法および花柱切断受粉法による種子形成
李 同華新美 芳二
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1995 年 64 巻 1 号 p. 149-159

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抄録

数種類のユリ(Lilium spp.)の自家,種内交雑,および種間交雑受粉を行い,柱頭受粉法および花柱切断受粉法による花粉管伸長および種子形成を比較した.
1.花粉管の相対伸長率((平均花粉管長/花柱長)×100)は種子形成した和合組み合わせでは受粉96~120時間後に100%となった.種子の得られなかりた不和合組み合わせでは,花粉管伸長の抑制は受粉24時間後にすでに現れ,その強さは'ひのもと'と'ジョージア'でほぼ等しく,'エンチャントメント'でやや弱かった.
2.花粉管伸長の抑制の強さと奇形花粉管(先端が球状となったり,管の途中に突起を形成したもの)の発生率との間に一定の傾向があった.奇形花粉管率は'ひのもと'と'ジョージア'の自家受粉で60~70%,'エンチャントメント'の自家受粉で37%であった.一方,和合組み合わせでは10%以下であった.
3.和合組み合わせでは花柱切断受粉法により種子が得られたが,その種子数は柱頭受粉で得られる場合の10~50%であった.また,柱頭受粉法で種子が全く得られない'エンチャントメント'と'ジョージア'の自家受粉において,花柱切断受粉法により種子が得られた.一方'ひのもと'の自家受粉においてはいずれの受粉法でも種子は全く得られなかった.
4.走査型電子顕微鏡により子房内の花粉管を観察した.花柱切断受粉法による'ジョージア'の自家受粉や'ジョージア'×'ひのもと'では,花粉管は珠孔に侵入したが偏平状に変形しているものが観察された.'ひのもと'の自家受粉では花粉管は珠孔付近を通過したり,珠孔の入り口付近で伸長を停止し,珠孔には侵入していなかった.

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