園芸学会雑誌
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環状剥皮および剥皮逆接ぎの処理方法の違いが, リンゴ'恵'樹の生長と果実品質に及ぼす影響
荒川 修金塚 朱美菅野 晃市塩崎 雄之輔
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1998 年 67 巻 5 号 p. 721-727

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抄録

環状剥皮と剥皮逆接ぎの処理方法の違いがリンゴ'恵'樹の生長と果実品質に及ぼす影響について検討した.処理は, 剥皮逆接ぎとして, 全周の樹皮を剥いで逆接ぎしたもの(逆接ぎ100 : BI-100), 90%の樹皮を逆接ぎしたもの(逆接ぎ90 : BI-90), 90%の樹皮を剥いだ環状剥皮(剥皮 : G), 90%樹皮を剥皮し, 樹皮をまたもとに戻したもの(正接ぎ : G-N)あるいは'北斗'の樹皮と交換したもの(交換 : B-EX)の5処理を行った.樹への影響では, 処理部直上の幹周肥大率は無処理区との間で差はみられなかったが, 処理部直下の肥大は, 正接ぎおよび交換処理を除いて有意に減少した.新梢生長に関しては, 逆接ぎ100で平均新梢長が有意に減少し, 短果枝の割合が増加したが, その他の処理では大きな影響は認められなかった.翌春の花芽率では, すべての処理区が無処理区に比べて有意に高かったが, 処理間には違いは認められなかった.葉のクロロフィル含量は, 処理1ヶ月後には逆接ぎ100でその含量が減少し, 黄色化しはじめ, 処理3ヶ月後には交換区を除いてすべての処理区で減少した.果実の可溶性固形物含量は, 逆接ぎ100, 剥皮, 逆接ぎ90, 交換と正接ぎ, の順で無処理よりも高くなった.糖類を分析した結果, 生重当たりの合計値では, 可溶性固形物含量の違いにほぼ一致したが, 乾物重当たりの合計値では, 無処理が処理に比べて有意に高かった.この違いは果実の水分含量の違いによるものと考えられた.果実の大きさ, 果実硬度には大きな影響は認められなかった.カルシウム含量は, 逆接ぎ100および逆接ぎ90が無処理に比べて有意に低かった.逆接ぎ100, 逆接ぎ90は翌年の果実の可溶性固形物含量を増加させた.

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