園芸学会雑誌
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イチゴの果実硬度に関する遺伝率と選抜の効果
森 利樹
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2000 年 69 巻 1 号 p. 90-96

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抄録

果実硬度および果皮硬度に関するイチゴの交配実生の分布は, 正規分布に近似した単峰型を示し, これらの遺伝がポリジーンに支配されているものと考えられた.果実硬度と果皮硬度との間には相関係数0.93以上の非常に高い相関がみられた.F1世代で三つの方法, すなわち, 実生集団と両親との分散の比較による方法, 親子回帰による方法および母親因子と父親因子の分散分析による方法によって広義の遺伝率を推定した.果実硬度では, それぞれ, 0.67, 0.90および0.51, 果皮硬度では, それぞれ, 0.59, 0.73および0.28であった.いずれの方法でも, 果皮硬度の遺伝率は果実硬度に比べて低くなった.また, 母親因子と父親因子の分散分析の結果, 高い相加的遺伝効果が認められ, 優性効果は小さく, そのため, 広義の遺伝率(果実硬度0.51, 果皮硬度0.28)と狭義の遺伝率(果実硬度0.43, 果皮硬度0.20)の差は小さかった.さらに, 果実硬度についてF1からF2への選抜実験を行ったところ, 選抜反応によって推定された遺伝率は0.43であった.これらの結果から, 選抜反応による遺伝率を予測するためには, 親子回帰による遺伝率の推定方法よりも, 実生集団とそれぞれの両親との分散を比較する推定方法および総当たり交配を母親因子と父親因子の2因子要因実験とみなした分散分析による推定方法が適していると考えられた.いずれの推定方法でも果実硬度の遺伝率は比較的高いことから, 単にF1世代で栄養系選抜を実施するよりも, 選抜と交配を数回行い, 目的形質の出現頻度が高まった後代から栄養系選抜する育種法が有効であると考えられた.

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