園芸学会雑誌
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テッポウユリ'ジョージア'のりん片培養によるカルス誘導とカルスからのウイルスフリー子球の生産
徐 品三新美 芳二荒木 肇
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2000 年 69 巻 1 号 p. 97-102

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抄録

テッポウユリ'ジョージア'のカルス培養によるウイルスフリー個体作出を目的とし, カルス継代および植物体再生条件を検討し, 再生した子球のウイルス検定を行った.1. 'ジョージア'のカルスは5.0μM picloramを添加したMS培地で継代する間には器官の再分化は起らず, カルス増殖のみであった.しかし, 継代数を増加するにつれてその増殖率は低下した.2. 上述の培地で継代培養したカルスをMS培地と1/2MS培地(無機塩濃度が1/2に希釈され, 他の成分は同一濃度)に移植すると, シュートはMS培地よりも1/2MS培地で培養したカルスからよく形成された.長期間継代培養したカルスでも0.5μM NAAの単独添加培地ではシュートを形成したが, その率は継代数の増加につれて低下した.3. 再生したシュートから発達した子球を低温処理したあと6ケ月間圃場で栽培した.これらの植物体からのウイルス検出率はカルスの継代回数の多いカルスから得られた植物体で低く, 継代5回の子球のウイルス検出率は約31%となり, CMVは全く検出されなかった.4. 抗ウイルス剤であるDHTおよびribavirin(5, 50μM)を培地に添加してもカルスからのシュート形成には影響しなかった.それらの添加培地から再生した子球の培養終了時点でのウイルス検出率は, 無添加区より低くなった.特に50μM DHTの添加区では温室に移植した6ケ月後でも培養終了時のウイルス検出率とほぼ同等で, 19%であった.5. ウイルスに感染した'ジョージア'のりん片から誘導されたカルスを3回以上継代するか, あるいは50μM DHTを含む培地でカルスを培養して植物体を得る方法により, ウイルスフリー個体を効率的に生産できることが示唆された.

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