関西医科大学雑誌
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非閉塞性腸間膜虚血症に対し開腹手術とprostaglandin E1の持続静脈内投与を施行した一例
三城 弥範高橋 毅豊田 昌夫仙﨑 英人螺良 愛郎
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2010 年 62 巻 p. 1-5

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抄録

症例は55歳の男性.糖尿病性腎症により透析施行中.透析後に腹痛を自覚し,軽快をみないため当院に救急搬送された.理学所見に乏しいため保存的治療を行ったが,腹痛の持続と炎症反応の増悪をみたため入院24時間後に緊急開腹術を施行した.上腸間膜動脈に閉塞はなく,小腸から結腸に及ぶ広範囲の分節状壊死を認めたことより非閉塞性腸間膜虚血症(Non-occlusive mesenteric ischemia;以下,NOMIと略記)と診断し,壊死腸管をすべて切除した上で一期的吻合を行い,術中より0.01 μg/kg/min量のProstaglandin E1(以下,PGE1と略記)の持続静脈内投与を開始した.しかし術後2日目にドレーンから腸液を混じた排液を認めたため,縫合不全を疑い再開腹を施行し,小腸の虚血部分を追加切除して空腸瘻,回腸粘液瘻を造設するとともに横行結腸脾彎曲部以下の虚血部の追加切除を行った.術後に十分な輸液とPGE1を0.05 μg/kg/minに増量したところ,温存腸管への虚血の進行は制御でき,経口摂取が可能なまでに全身状態の改善がみられた.NOMIに対してPGE1の持続静脈内投与と,腸管壊死が疑われれば時期を逸しない開腹手術が重要であると考える.なお,患者は敗血症のため術後42日目に死亡したが,基礎疾患に対する配慮も望まれる.

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© 2010 関西医科大学医学会
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