日本細菌学雑誌
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Helicobacter pylori リポ多糖の構造と血清学的特異性
天野 憲一横田 伸一
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2001 年 56 巻 2 号 p. 421-433

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抄録
Helicobacter pylori は消化性疾患の起炎菌としてコンセンサスが得られており, 最近診断および治療に対して保険適用がなされた。しかしながらこの菌の感染発症のメカニズムはまだ明らかにされていない。様々な病原因子が報告された中で, 今回エンドトキシン (LPS) に焦点を当ててレビューしてみたい。H. pylori LPSは大腸菌のLPSと比べて1/10から1/20,000の低毒性を示し, それはリピドA構造にある。大腸菌との違いは長鎖脂肪酸 (βOHC16, βOHC18, C18) の存在とその数およびグルコサミン二糖の非還元端リン酸の欠損にあり, これが原因となる。一方, LPSのO-抗原多糖部分にはヒト血液型である Lewis 抗原と同一の糖鎖構造が存在しており, ヒト胃上皮細胞との接着および定着に関わっていると考えられている。最近の遺伝子解析からは, この糖鎖構造の容易な変異も推定され, H. pylori のしたたかさも垣間見れる。さらに Lewis 抗原とは異なった強い抗原の存在が明らかになるにつれ, この抗原の疾患との関わりが予想される。
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