育種学雑誌
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イネF1採種時の自然交雑率を高める花器形質と環境条件
加藤 浩生井 兵治
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1987 年 37 巻 3 号 p. 318-330

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抄録

栽培イネは花器構造上自殖性が強いのでF1雑種の種子親として使われる雄性不稔個体上の結実率は低く,経済的採種は困難た現状にある.したがって,イネの受粉生態や花器形質を調査し,高い自然交雑率が確保できる種子規,花粉親の特性を明らかにするとともに,F1採種圃で自然交雑が高頻度で起こる条件を明らかにする必要がある.そこで本研究では,種子規・花粉親の花器形質と自然交雑率の関係を調査した.一方,F1採種時の種子親の自然交雑率にかかわる要因として空中花粉量と風速を取り上げ,自然交雑率との関係を調査した.その結果,種子親の花器形質として,柱頭露出しやすい性質は自然交雑率を高めることと密接に関係していることが明らかとなった.さらに,柱頭露出願花率,雌蕊または柱頭が大きいことならびに,各頴花の開頴時間が長く,かつ開頴角度が大きいことは相互に正の相関関係を持ち,しかも,これらは自然交雑による結実率向上とかかわることがわかった.また,花粉親の花器形質として,葯抽出時の葯内花粉残存数の多い品種が,多数の花粉を空中に放出する上で優れていることが明らかとなった.種子親の結実率と空中花粉量および風速との関係については,空中花粉量が多く風速が2~3m/secの場合には自然交雑による結実率が高いことがわかった、以上のことから,よく柱頭が露出する種子親と蒲抽出時の花粉残存数が多い花粉親を用い,2~3m/secの風速下で採種を行えば,効率の高いイネのF1採種が可能と考えられた.

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