日本海洋学会誌
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海面境界過程における局所平衡
III. 風波のスペクトルについて
鳥羽 良明
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1973 年 29 巻 5 号 p. 209-220

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抄録

重力波領域では, ピークより高周波側のスペクトルの全体としての形はguδ-4に比例している. ここで, σは重力加遠度, μは摩擦速度, σは角周波数で, 比例係数は2.0×10-2である. 風波は, そのスペクトルが, スペクトル密度∅とσとの対数グラフ上で, 同じ形を保ったまま, スペクトルの全体としての形の線にそってスライドしていく形で発達する. また, じゅうぶん発達した風波の, ピーク周波数における ∅ の値 (終点の値) は, g2δ-5の勾配の線にそっている.
風洞水槽実験によるスペクトルの微細構造は, σ-4線のまわりに振動する特徴的な形を示す. エネルギー密度の過剰分がピーク周波数とその高調波の付近に集中し, 不足がそれらの周波数の中間に起こる. 重力波領域におけるこの微細構造の形は風洞水槽におけるような純粋に制御された条件のもとでは, 常に相似である. これらのスペクトルの移動平均をとると, σ-5に比例する形に非常に近くなる.
波数が大きくなると表面張力の効果が入ってきて, 重力波領域におけるσ-4線は, 連続的に, 表面張力波領域におけるσ-8/3線へとつながる. これは, 風洞水槽の資料と一致している. 同様に, σ-5線は連続的にδ-7/3線へとつながる.
また, これらの結果の議論を通して, 風波の場の構造における一種の一般的な相似性の存在が示唆される.

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