北関東医学
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大学病院における入院がん患者の病名告知状況と看護者の関わりの検討
神田 清子狩野 太郎大山 ちあき小林 秀代
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2001 年 51 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

がん患者が前向きに病気と向き合うには患者自身の意思決定が重要であり, 真実の病名を伝えることは不可欠である.看護者は病名告知において患者と家族を精神的に支える重要な役割がある.そこで医学部附属病院における入院がん患者の病名告知状況と看護者の関わりの実態を調査し, 支援のあり方を検討した.
対象者はがん患者212名であり, 平均年齢64.2歳 (標準偏差14.4歳) であった.医師からの病名告知状況に, 「がんまたは悪性腫瘍」として真実を告げるが60.4%, 「腫瘍」として悪性良性は患者の判断に任せるが34.9%, 「他の病名」を使い真の病名を言わないが4.7%であった.同一患者についての看護者が望む病名告知は, 「がんまたは悪性腫瘍」が55.2%で医師の割合より低くなっていたが, 医師との一致率は84.9%と高い割合であった.看護者が告知状況を判断する上でもっとも考慮している事柄は「病期・予後」であり, 「患者の希望」「知る権利」は必ずしも優先されていなかった.病状説明時に看護者が立ち会ったのは54.2%, 医師と看護者の告知に関する話し合いは, あったが41.2%であり高い割合ではなかった.医師との間で考えが一致していないケースでも話し合いがもたれたのは約25%であり非常に少なかった.
がん病名告知における看護者の関わりはまだまだ充分ではないことが明らかにされた.今後の課題は, 患者ひとりひとりの意思を尊重し, QOLを高めるための告知のあり方を倫理的側面からも検討していく必要がある.また, 医師と看護者の話し合い, 患者への支援のあり方など告知にかかわるシステムづくりが急務である.

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