抄録
[背景と目的]尿中インタクト微量アルブミン(urinary intact microalbumin:U-I microAlb)は糖尿病性腎症や高血圧性腎症における早期腎障害の検出に有用なパラメーターである。最近,免疫非反応性U-I microAlbと免疫反応性U-I microAlb測定の双方を測定できる高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)が,早期の糖尿病性腎症発見に有用であると報告された。しかし,膠原病におけるU-I microAlbの意義は未だ明らかでない。そこで我々は,各種膠原病においてU-I microAlbの臨床的意義を検討した。[対象と方法]対象は試験紙法で蛋白尿陰性の各種膠原病患者146例。方法はHPLCを用いてU-I microAlbを測定し,膠原病におけるUI-microAlb陽性頻度と各種膠原病の臨床像,高血圧・糖尿病との関連などについて検討した。[結果]HPLCによるU-I microAlb陽性は全体の45.2%と高頻度に認められ,免疫法の22.6%に比べて高感度に検出された。さらに,HPLCによるU-I microAlb陽性は高血圧や糖尿病と有意に関連した。U-I microAlbは,高血圧や糖尿病のない膠原病78例全体の35.9%,そのうち関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の30%,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の30%にU-I microAlb陽性を認めた。また,罹患年数の長いRA患者でU-I microAlb陽性を高頻度に認めた。[考察]膠原病患者では試験紙法で尿蛋白が陰性の時期から,尿中に免疫非反応性アルブミンを含むU-I microAlbを排泄する病態があると考えられた。[結論]膠原病では,試験紙法で蛋白尿陰性の時期から高頻度に腎障害が存在していると考えられた。[今後の課題]HPLCによるU-I microAlb陽性が膠原病による慢性腎臓病の早期発見の指標になるかは,さらに多数例での長期間にわたる検討が必要と思われた。