杏林医学会雑誌
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45 巻, 4 号
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原著
  • 池谷 紀子, 有村 義宏, 吉原 堅, 駒形 嘉紀, 要 伸也, 山田 明
    原稿種別: 原 著
    2014 年 45 巻 4 号 p. 125-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
     [背景と目的]尿中インタクト微量アルブミン(urinary intact microalbumin:U-I microAlb)は糖尿病性腎症や高血圧性腎症における早期腎障害の検出に有用なパラメーターである。最近,免疫非反応性U-I microAlbと免疫反応性U-I microAlb測定の双方を測定できる高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)が,早期の糖尿病性腎症発見に有用であると報告された。しかし,膠原病におけるU-I microAlbの意義は未だ明らかでない。そこで我々は,各種膠原病においてU-I microAlbの臨床的意義を検討した。[対象と方法]対象は試験紙法で蛋白尿陰性の各種膠原病患者146例。方法はHPLCを用いてU-I microAlbを測定し,膠原病におけるUI-microAlb陽性頻度と各種膠原病の臨床像,高血圧・糖尿病との関連などについて検討した。[結果]HPLCによるU-I microAlb陽性は全体の45.2%と高頻度に認められ,免疫法の22.6%に比べて高感度に検出された。さらに,HPLCによるU-I microAlb陽性は高血圧や糖尿病と有意に関連した。U-I microAlbは,高血圧や糖尿病のない膠原病78例全体の35.9%,そのうち関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の30%,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の30%にU-I microAlb陽性を認めた。また,罹患年数の長いRA患者でU-I microAlb陽性を高頻度に認めた。[考察]膠原病患者では試験紙法で尿蛋白が陰性の時期から,尿中に免疫非反応性アルブミンを含むU-I microAlbを排泄する病態があると考えられた。[結論]膠原病では,試験紙法で蛋白尿陰性の時期から高頻度に腎障害が存在していると考えられた。[今後の課題]HPLCによるU-I microAlb陽性が膠原病による慢性腎臓病の早期発見の指標になるかは,さらに多数例での長期間にわたる検討が必要と思われた。
  • 堀口 幸太郎, 舘野 こずえ, 長谷川 瑠美, 瀧上 周, 大迫 俊二
    原稿種別: 総 説
    2014 年 45 巻 4 号 p. 137-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
     下垂体前葉はホルモンを産生し,成長・生殖・代謝・行動などを含めた生体維持に関わる重要な内分泌器官である。前葉組織は5種類のホルモン産生細胞とホルモンを産生しないS100βタンパクをマーカーとするS100βタンパク陽性細胞(S100β細胞),毛細血管を構成する内皮細胞および周皮細胞で構成される。この中でS100β細胞は,突起状の細胞質を伸ばして互いに接着し偽濾胞を形成するなどの形態的特徴から濾胞星状細胞とも呼ばれる。機能的には組織幹細胞,樹状細胞,支持細胞,アストロサイト様の機能などが想定されているものの,不均一性(heterogeneity)を示し多様性が高いため機能はおろか発生起源など不明な点が多い。そのためS100β細胞の機能を明らかにするには,サブタイプごとに細胞を分離し解析していくことが必要となる。本総説では樹状細胞様のS100β細胞を単離する我々の新たな方法と,単離した細胞の機能解析についてこれまで明らかにした点を述べる。
第1回市民公開フォーラム「知っておきたい眼の病気」
特集「杏林大学と地域医療」
特集「最新の循環器診療」Part1
  • 田口 浩樹
    原稿種別: 特 集
    2014 年 45 巻 4 号 p. 159-163
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
     近年,食生活の変化や高齢化社会を背景として動脈硬化疾患は増加し,それに伴い末梢動脈疾患の増加を認めている。末梢動脈疾患には高率に虚血性心疾患を始めとした全身の動脈硬化疾患を合併することが知られており,とりわけ虚血性心疾患が末梢動脈疾患患者の予後規定因子として重要である。近年,そのような動脈硬化疾患・虚血性心疾患を管理する循環器内科において,末梢動脈疾患患者への関心は高まっている。末梢動脈疾患を治療する際は,全身の動脈硬化疾患を視野に入れて至適薬物治療を行い,病状に応じて適切な血行再建を選択することが,下肢治療と共に末梢動脈疾患患者の予後を改善させるために重要である。
  • 松下 健一
    原稿種別: 特 集
    2014 年 45 巻 4 号 p. 165-169
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
     現代の高齢化社会において,急性心不全患者は増加の一途にある。急性心不全とは心臓のポンプ機能が低下して末梢主要臓器に十分な血液を拍出できない状態であり,様々な病因からなる複雑な症候群である。緊急に治療を要する病態であり,血行動態に応じた治療だけでなく,原因疾患の診断・治療が重要である。的確に病態を評価し,適切な治療法を選択していく必要がある。心不全における病態解明,診断,治療は進歩し,近年の急性心不全診療に大きな成果をもたらしたといえるが,未だ課題も多い。急性期管理のみならず,発症予防,重症化予防,再発予防という観点もふまえた急性心不全診療のさらなる進歩が期待されている。
  • 副島 京子
    原稿種別: 特 集
    2014 年 45 巻 4 号 p. 171-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
  • 坂田 好美
    原稿種別: 特 集
    2014 年 45 巻 4 号 p. 175-182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
     心エコー検査は,弁膜症,心筋症,先天性心疾患,虚血性心疾患を含めた多くの心疾患の診断,心機能評価,心血管内血流評価をベッドサイドで非侵襲的にいきなえる有用な検査である。現在,一般診療では,断層心エコー(two-dimensional echocardiography)とパルス・ドプラおよび連続波ドプ法により心血管疾患の診断,心機能評価,心疾患の重症度評価,治療法の決定を行っている。また,経食道心エコーにより,血栓の有無,卵円孔開存,弁膜や先天性心疾患の構造異常のより詳細な評価が行われている。負荷心エコーは虚血性心疾患の診断や心筋viabilityの評価のみでなく,弁膜症の手術時期の決定や肺高血圧の早期診断,肥大型心筋症の左室内狭窄の精査などに有用とされている。近年,より詳細な心血管構造の評価を行う三次元心エコー(three-dimensional echocardiography),全般的および局所的心機能評価を定量的に行えるスペックル・トラッキング法が開発され,一般診療に用いられるようになっている。
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