抄録
現代の高齢化社会において,急性心不全患者は増加の一途にある。急性心不全とは心臓のポンプ機能が低下して末梢主要臓器に十分な血液を拍出できない状態であり,様々な病因からなる複雑な症候群である。緊急に治療を要する病態であり,血行動態に応じた治療だけでなく,原因疾患の診断・治療が重要である。的確に病態を評価し,適切な治療法を選択していく必要がある。心不全における病態解明,診断,治療は進歩し,近年の急性心不全診療に大きな成果をもたらしたといえるが,未だ課題も多い。急性期管理のみならず,発症予防,重症化予防,再発予防という観点もふまえた急性心不全診療のさらなる進歩が期待されている。