杏林医学会雑誌
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特集「女性と多様性」
世界における妊娠マラリアの現状と問題点
新倉 保小林 富美惠
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2018 年 49 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

 妊婦はマラリア原虫に対する抵抗性が低下していることから,マラリアの病態が重症化しやすい。また,マラリア原虫に感染した妊婦では流産や死産,胎児の発育遅延が頻発することが知られている。妊娠中のマラリアの病態の重症化には,妊娠による免疫抑制だけでなく代謝変化も関与することが明らかになりつつある。
 マラリア原虫に感染した妊婦では,マラリア原虫感染赤血球が胎盤絨毛部に集積することで胎盤の機能が障害され,胎児は子宮内発育不全や流産,死産となる。この胎盤機能障害にはIFNGR1のシグナル伝達を介して活性化される炎症応答が関わることが筆者らのマウスモデルを用いた研究により示されている。しかし,妊娠中のマラリアにおける病態生理や病態発症機序の詳細は未だに多くの謎に包まれているため,妊娠マラリアの診断および病態重症化の予測は困難を極める。本稿では,世界における妊娠マラリアの現状と問題点について紹介する。

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