2020 年 51 巻 3 号 p. 215-219
頭頸部癌においては,根治治療の根幹は現在においても手術療法と放射線療法であるが,局所進行癌に対する機能温存や再発予防をめざし薬物療法を使用する事も多い。また局所治療の適応がない再発症例や遠隔転移症例に関しては薬物療法が主体となる。近年の薬物療法の進歩は目覚ましく,シスプラチンに代表されるプラチナ製剤を中心とした抗癌剤治療が中心となっていた頭頸部癌薬物治療は大きく変化してきている。2008年に報告されたEXTREME試験によって,5-FU+プラチナ製剤にセツキシマブを加えた併用療法が再発・転移頭頸部癌における一次治療の標準治療となったが,免疫チェックポイント阻害剤の登場により,極めて予後不良とされていたプラチナ抵抗性の頭頸部癌に対する治療の選択肢が増え,従来の治療では得られなかった長期にわたる病勢抑制や長期生存も可能になってきた。現在まで,適応が承認されている免疫チェックポイント阻害薬はニボルマブとペンブロリズマブの2剤であるが,その他の免疫チェックポイント阻害薬の併用治療や放射線治療との併用治療の臨床試験も既に実施中,あるいは予定されており,当領域の治療体系もさらに変化していくと考えられる。