免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象(irAE)の中で内分泌障害の頻度は比較的高く,内分泌臓器に対する自己免疫の活性化により下垂体機能低下症,甲状腺機能障害,副腎皮質機能不全,1型糖尿病などを発症すると考えられている。また,免疫チェックポイント阻害薬の適応は様々な悪性腫瘍に拡大しており,多くの専門領域の医師がその副作用に直面する可能性がある。内分泌irAEの症状は多彩であり,その症状から原因内分泌臓器を特定する事は容易ではない。特に,全身倦怠感や食欲低下などは治療中の担がん患者でしばしば見られる症状であり,内分泌障害による症状とは気付かれにくい。また,その対処にはホルモン補充療法に関する知識と経験が必要である。これまで報告されている内分泌irAEは下垂体,甲状腺,膵,副腎,副甲状腺と多数の内分泌臓器で認められるが,なかでも頻度が高いのが抗CTLA-4抗体による下垂体機能低下症と抗PD-1抗体による甲状腺機能障害である。しかしこれらの報告のほとんどは治験データに基づくものであり,それぞれの内分泌障害の診断基準も定まってないため,正確な頻度や発症時期などの臨床的特徴については施設間でのばらつきが大きく不明な点も多い。今回,内分泌irAEを各主要内分泌臓器に分けて解説する。