日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
高レニン血症を伴つた原発性副甲状腺機能亢進症(癌)の1剖検例
西野 知一恩地 一彰大江 国宏竹越 忠美平丸 義武井村 優竹内 伸夫東福 要平内田 健三臼倉 教巨佐藤 隆松井 忍森本 真平竹田 亮祐太田 五六吉沢 浩司
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 64 巻 5 号 p. 491-498

詳細
抄録

症例. 31才,女子. 1966年初回妊娠中,高血圧,蛋白尿,貧血を指摘された. 1967年末,第2回妊娠中にも同様症状が出現した.口渇,多飲は出産後も持続していた. 1969年,悪心,嘔吐,腹痛あり,胃潰瘍,貧血を指摘され,約1カ月通院し症状は消失した. 1970年,右肘関節痛,脱力感あり,右尺骨嚢腫の手術を受けた.この際高Ca血症,骨の脱灰,右頚部腫瘤を指摘された.検査成績上,著しい高Ca血症,低P血症,アルカリ・フォスフアターゼ上昇,腎機能低下,高レニン血症,尿中アルドステロン増加の他,尿中酸排泄の分析では不完全近位尿細管性アシドーシスと考えられた. X線検査では嚢腫性線維性骨炎,胃潰瘍,腎石灰沈着が認められた.副甲状腺腫瘍摘出後,高Ca血症,高レニン血症は著明に改善したが, 1972年より再上昇し上記症状および右頚部腫瘤が出現してきた.再手術をすすめたが治療を拒否し放置していたところ, 1973年末,副甲状腺機能亢進症クリーゼで死亡した.剖検所見では主病変は右副甲状腺癌再発,副甲状腺周囲脂肪組織内転移.右甲状腺への連続浸潤,旁甲状腺リンパ節リンパ洞内転移.副病変は線維性骨炎,腎石灰化症と腎盂腎炎,肺胞壁,心筋の石灰沈着,胃潰瘍,膀胱炎,肺浮腫であつた.旁糸球体装置の増殖,腎血管系の狭窄,硬化は認められなかつた.本症例の高レニン血症,高アルドステロン症をこは近位尿細管性アシドーシスによるNa喪失,高Ca血症が関与していると考えられる.腫瘍中のレニン含量の測定から異所性レニン分泌腫瘍の可能性は否定された.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事
feedback
Top