日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
症例報告
Von Hippel-Lindau病に合併した膵腫瘍(内分泌腫瘍,漿液性嚢胞腺腫)の2切除例
唐崎 秀則石崎 彰柳川 伸幸中野 靖弘笹島 順平水上 裕輔丹野 誠志徳差 良彦三代川 斉之小原 充裕後藤 順一紀野 修一河野 透葛西 眞一
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2008 年 105 巻 5 号 p. 725-731

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抄録

Von Hippel-Lindau病(VHL病)は遺伝性多発腫瘍性症候群で,膵病変も高率にきたすことが知られているが,これを契機に診断されることはめずらしい.今回,膵病変を認めVHL病の診断に至った2症例を経験したので報告する.症例1は40歳女性.副腎褐色細胞腫,膵内分泌腫瘍,脊髄血管芽腫に対して切除術を施行した.症例2は小脳,脊髄血管芽腫の手術歴を有する68歳女性で,多発性膵漿液性嚢胞腺腫に対して膵亜全摘術を施行した.VHL病に合併した膵管内乳頭粘液性腫瘍は過去に報告例がないが,症例1には画像的に,症例2には組織的に膵管内乳頭粘液性腫瘍の合併を認めた.両者とも膵病変を含む多発腫瘍の存在からVHL病を疑い,遺伝子検査にて診断を確定した.VHL病は遺伝病であり,人権に配慮した対応を要する.われわれは複数科からなる遺伝カンファレンスで協議のうえ対応にあたり,患者家族から新規VHL病患者を1名同定し得た.

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© 2008 (一財) 日本消化器病学会
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