抄録
脳損傷による高次神経機能障害のうち,主として右半球損傷に起因する半側空間無視症状は重要な臨床的課題である。Brain(1941)以来,その評価と治療的アプローチに関して多くの研究がなされてきている。従来の「注意を喚起する」方法以外のさまざまなアプローチが提唱され,非認知的(non-cognitive)方法として,TENS,Trunk rotation,Prism adaptationが注目されている。特にPrism adaptationについては車椅子操作との関連で検討した。さらに最近再び脚光を浴びつつあるミラーセラピーが半側空間無視に与える影響について,側方ミラーアプローチ(Side Mirror Approach)の概要を報告した。さらに関連症状とされるPusher現象(contraversive pushing / ipsilateral pushing)の責任病巣,メカニズムについて症候学的検討を行い,治療に関する基本方針と臨床的アプローチとして座位バランス改善への方法を提示した。