2001 年 62 巻 4 号 p. 992-996
症例は76歳,女性.下血を主訴に来院し直腸 (Rb) に3型直腸癌が認められ,D2リンパ節郭清を伴う低位前方切除術が施行された.術後3週,注腸で直腸膣瘻が認められ,注腸用チューブ,縫合閉鎖を行ったが軽快せず,術後8週経肛門的減圧チューブによる治療を開始した.挿入後5週で直腸膣瘻は軽快し, 6週で減圧チューブを抜去した.しかし抜去後3週で直腸膣瘻が再燃し,減圧チューブを再挿入し,再挿入後3週で直腸膣瘻は軽快,術後6カ月退院した.退院後1カ月直腸膣瘻が再燃し,経肛門的減圧チューブを挿入,挿入後5週で直腸膣瘻は治癒し再入院後2カ月退院した.現在術後2年4カ月直腸膣瘻の再燃および直腸癌の再発は認められない.
低位前方切除後直腸膣瘻に対して保存的に治癒した例は本邦報告例で3例認められるが,経肛門的減圧チューブにて治癒しえた症例は本邦初と思われ報告した.