日本臨床外科学会雑誌
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術前診断の上,待期的に手術を施行した盲腸窩ヘルニアの1例
佐藤 裕英深谷 毅大中 正光
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2002 年 63 巻 4 号 p. 1026-1030

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抄録

症例は79歳の女性で,心不全加療目的に入院中に心窩部不快感,嘔気,嘔吐を主訴に当科紹介となった.初診時,腹部の膨満を認めたが疹・圧痛を認めず,筋性防御も認められなかった.腹部X線写真上イレウス像を呈しており, CT上盲腸周囲の炎症性変化と同部に入り込む形で存在する小腸を認めたことから盲腸窩ヘルニアを疑い得た.保存的加療の上さらなる精査を実施した結果,盲腸窩ヘルニアと診断し,心不全の軽快した後に待期的に手術を実施した.開腹所見では回盲部より約30cm口側の回腸が盲腸後窩に形成された異常な裂孔内に嵌頓していた.嵌頓した腸管は約5cmで同腸管を腹腔内に還納した後に裂孔を閉鎖し手術を終えた.盲腸窩ヘルニアの本邦報告例は自験例を含め42例で,術前診断が困難であり緊急手術を要することが多いが,同疾患を念頭に置くことで術前診断が可能であると考えられた.

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