2002 年 63 巻 9 号 p. 2154-2158
特発性食道破裂は解剖学的な理由から多くの場合下部食道左壁に穿孔をきたし,左開胸により修復される.今回著者らは下部食道右壁の穿孔に対し右開胸アプローチにより一期的縫合閉鎖を行った症例を経験した.症例は69歳男性で背部痛,心窩部痛を主訴に来院し,食道造影にて下部食道右壁に穿孔を認めた.造影剤の管外流出は食道右側に限局していた.発症8時間後,右開胸にて手術を施行した.横隔膜直上の下部食道右壁に長さ4cmの穿孔を認めたため縫合閉鎖し,さらに汚染された縦隔組織のdebridementを十分に行いドレナージした.術後経過順調にて第31病日軽快退院した.自験例および文献的検討から本症の食道右壁穿孔,右側に限局する縦隔汚染例に対しては右開胸アプローチによる修復術が穿孔部縫合時の視野,汚染縦隔組織の十分なdebridementによる確実な縦隔ドレナージの2つの点から左開胸アプローチより優れていると考えられた.