2004 年 65 巻 4 号 p. 1102-1106
症例は48歳,女性.検診の上部消化管造影検査で胃癌(胃体部小彎, 0-IIc)と診断され当院を受診.画像診断で膵頭体部に,約5cmの境界明瞭な充実性腫瘍を認めた.軽度の貧血以外は血液,生化学,内分泌学的検査および腫瘍マーカーに異常を認めなかった.胃癌および膵のsolid-pseudopapillary tumorと診断した.手術所見は, 6×3cmの腫瘍が総肝動脈周囲と高度な癒着をしていたが,膵頭体部とは軽度の癒着を認めるのみで,摘出術が可能であった.術中迅速病理で神経鞘腫と診断されたため,腫瘍摘出のみとした.胃癌には幽門側胃切除術を施行した.術前,膵腫瘍との鑑別が困難であったが,術中の肉眼所見および迅速病理にて,後腹膜に発生した神経鞘腫と診断された.膵腫瘍の診療にあたり,膵外より発生した後腹膜腫瘍の可能性も念頭に置くことが必要である.