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  • 遠藤 拓, 野村 由紀子, 黒川 一平, 中川 智絵, 岡田 義之, 重田 美和, 鈴木 直, 嘉村 康邦
    日本女性骨盤底医学会誌
    2024年 20 巻 1 号 1-5
    発行日: 2024/04/08
    公開日: 2024/04/08
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    高齢化が急速に進行する本邦において、高齢者の骨盤臓器脱(以下POP)患者も増加している。当院における 85 歳以上の超高齢POP 患者の背景と治療成績について後方視的に調査した。2019 年4 月から2022 年3 月の3 年間に当院を受診したPOP 患者は927 例で、85 歳以上の超高齢者は78 例(8.4%)であった。POP-Q stage3 は34 例(44%)、stage4 は29 例(37%)であった。22 例(28%)では腟内装具による保存的治療の継続が困難であったために手術療法が施行されていた(腟閉鎖術17 例、経腟メッシュ手術5 例)。手術症例の併存症は、高血圧、糖尿病、心疾患、腎機能障害、深部静脈血栓症、精神疾患であった。術後入院期間の中央値は4 日(1 〜8 日)で、重篤な術中術後合併症は認めなかった。術後再発例はなく、P-QOL スコア値は術前後で有意差を認めた。当院における超高齢POP 患者はstage3 以上の重症例が多く、保存的管理が困難な場合には手術療法が選択され良好な治療成績であった。全身状態および併存症に対する適切な評価と周術期管理を行える体制のもとであれば超高齢POP 患者に対しても手術療法は検討可能であり、QOL 改善に寄与する可能性があると考える。

  • 森山 真吾, 小川 一栄, 片倉 雅文, 田中 佑宜, 田中 玲香, 篠原 正尚, 田畑 龍治, 藤森 大志, 川島 洋平, 大村 健二, 佐藤 聡
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 8-12
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/04
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    症例は89 歳女性。肛門部痛を主訴に当院外科を受診し、直腸脱の診断で便通コントロールと軟膏で経過をみるも徐々に増悪した。初診から9 年後、当院での手術を希望されたため外科より当科紹介受診となった。砕石位、安静時で+16cm の完全直腸脱を認め、腟からの臓器脱の合併はなかった。重積先進部は高位にあると判断し、当科で従来行ってきたLaparoscopic ventral mesh rectopexy(LVR)に右側からの可及的な直腸授動と直腸間膜の岬角固定を併用する方針とした。手術は岬角より切開を開始し、直腸右側の腹膜を切開しながら、直腸後腔を尾側まで広く展開し、側方靱帯は温存した。その後の直腸腟間の剥離およびメッシュ固定は型通りのLVR を行った。 続いて岬角の高さで直腸が緩く直線化するまで右側の直腸間膜を牽引し、非吸収糸で直腸間膜をL5S1 前縦靱帯に縫合固定し、メッシュを後腹膜化した。手術時間156 分、出血量20ml。術後便秘を含め合併症なく経過し、術後13 日目に軽快退院した。術後5 カ月の時点で明らかな再発は認めない。重度直腸脱では、高い位置で直腸固定することが求められる。直腸の後方・右方剥離および直腸間膜の岬角固定は、LVR に追加する手技として比較的容易であり、有用と思われた。

  • 竹村 昌彦, 加藤 愛理, 松崎 聖子, 隅蔵 智子, 岩宮 正, 森重 健一郎
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 61-65
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/09/14
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    【はじめに】経腟メッシュ(transvaginal mesh: TVM)手術は、メッシュ関連合併症に注目が集まった結果、実施できなくなった国もあるのが現状だが、低侵襲かつ低再発率である特性からわが国では依然として重要な骨盤臓器脱治療法である。今回、TVM 術後14 年を経て発症した帯下増加を契機として診断された、腟内への肉芽腫形成を経験したので報告する。【症例】76 歳女性。62 歳時に当科で腟式子宮全摘術とProlift 型TVM 手術(前後 一体型)を同時実施した。術後14 年目になって、帯下の増加と少量の性器出血を自覚して受診したところ、腟前壁中央に直径2cm の腫瘍形成を認めた。経腟的腫瘍摘出術をおこない、腫瘍と一体化したメッシュの部分切除を行って、腟壁を2 層に修復した。腫瘍はメッシュに関連して発生したと思われる肉芽腫であった。【考察】わが国では、海外に比べてメッシュ関連合併症の頻度は低いが、術後10 年を超えても発生し得ることを啓発して、適切な診療と治療につなげることが重要である。

  • 中川 智絵, 岡田 義之, 安田 想, 黒川 一平, 重田 美和, 野村 由紀子, 嘉村 康邦
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 56-60
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/09/14
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    本邦での超高齢化に伴い、超高齢の骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse: POP)患者を扱う頻度も増加している。高齢ゆえに腟内装具などの保存的治療が困難で手術を要するケースもある。腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence: SUI)が併存する場合に、SUI に対する同時手術を行うべきかについては議論が分かれるところである。今回、中央腟閉鎖術施行時に、SUI に対する恥骨尿道靭帯縫縮(posterior pubourethral ligament plication: PPLP)を併用し良好な経過を辿った超高齢完全子宮脱の症例を経験したので報告する。症例は93 歳、 2 妊2 産。外陰部痛を主訴に受診し、有痛性の腟壁びらんを伴う完全子宮脱と重症SUI による外陰部皮膚炎を認め、いずれも主訴の原因と考えられた。腟内装具を試用したが腟内保持が困難かつSUI の悪化を認めたため手術療法の方針とした。POP に対して中央腟閉鎖術と後腟壁形成術を、SUI に対してPPLP を施行した。PPLP に要した時間は約8 分、術後は尿排出障害などの合併症を認めず、3 日目に退院した。術後、POP 修復は良好で、SUI と外陰部痛も著明に改善した。Nichols らによって開発されたPPLP は極めて短時間で施行可能で、中部尿道スリング手術と比べてより低侵襲であり、超高齢者に対して有用である可能性がある。

  • 松山 愛佳, 加藤 久美子, 鈴木 省治, 百田 絢子, 佐井 裕紀, 加藤 隆, 井上 聡, 平林 裕樹
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 50-55
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/08/01
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    難治性膀胱炎の診療では、薬剤性膀胱炎の可能性を念頭に置く必要がある。防風通聖散の8 年間の処方で薬剤性膀胱炎を起こし診断が遅れた症例を経験したことから、漢方薬による薬剤性膀胱炎の文献学的検討を行った。

    PubMed、医学中央雑誌で検索した文献とその引用文献から、症例報告37 例(すべて本邦)を分析した。年齢は2 ~72 歳(中央値11 歳)と幅広く、小児期と老年期の二峰性を示した。男性14 例、女性23 例で年代別でも女性が多かった。無菌性膿尿が持続し、膀胱鏡で重度の炎症所見のほか一部で隆起所見を認めた。膀胱生検の行われた17 例中14 例(82.4%)で好酸球浸潤を認めた。被疑薬は柴苓湯、柴朴湯、小柴胡湯などで、94.6% がオウゴン含有方剤であった。被疑薬内服開始から発症までの期間は3 週間から10 年(中央値2 年)と長く、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ネフローゼ症候群、慢性肝炎などに長期処方されていた。被疑薬中止から症状消失までの期間は3 ~42 日(中央値10 日)と短く、薬剤性膀胱炎の可能性に思い至れば治療は容易であった。チャレンジテスト(再処方による症状発現)は、行われた12 例全例で陽性だった。

    薬剤性膀胱炎では、その可能性に気づき服薬中止で症状消失を確認することが肝要である。漢方薬はOTC 医薬品としても普及しており、副作用の薬剤性膀胱炎に肝障害や肺障害と同様の注意喚起が必要である。

  • 鈴木 俊輔, 守口 奈緒美
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 41-49
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/08/01
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    目的:便失禁および尿失禁の女性に対して、直腸内の筋層を照射する、経肛門高密度焦点式超音波療法high intensity focused ultrasound (HIFU) を考案し、効果を後方視的に評価した。新開発の肛門用カートリッジの有効性も検討した。

    対象と方法:2022 年1 月までの3 年8 か月間に経肛門HIFU を施行した93 例(平均年齢67.7 歳)を対象とした。 効果判定にはWexner score、International Consultation on Incontinence Questionnaire-Shot Form (ICIQ-SF) を用いた。

    結果: Wexner score とICIQ-SF はHIFU 前に比較してHIFU 後早期に有意に低値を示した。便失禁75 例中41 例、尿失禁43 例中18 例で2 年後まで評価可能で、Wexner score、ICIQ-SF ともに2 年後までもHIFU 前に比較して有意に低値を示した。便失禁、尿失禁症状はともにHIFU 後7 日目(中央値)に改善したと認識され、外肛門括約筋の筋力が反映される最大随意収縮圧はHIFU 前に比較してHIFU 後早期に有意に上昇した。

    結論:経肛門HIFU により照射された直腸縦走筋層が収縮し、外肛門括約筋に影響を及ぼした可能性が示唆された。 便失禁、尿失禁女性に対する経肛門HIFU は経腟HIFU と同様に低侵襲的治療法の一つとなり得ることが示唆された。

  • 加藤 健宏, 久留宮 康浩, 世古口 英, 菅原 元, 井上 昌也, 南 貴之, 権田 紘丈, 山口 真和, 浜辺 健太, 石田 航大
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 34-40
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/08/01
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    目的:骨盤臓器脱を合併した直腸脱に対し、腹腔鏡下仙骨腟固定術と直腸腹側固定術を併施した一期的修復術(LSC with LVR; LSCVR)の手術手技及び成績を検討し報告する。

    方法:腹腔鏡操作で直腸前壁、前腟壁、子宮頸部にメッシュを縫合し、仙骨岬角前縦靭帯に挙上固定する。

    成績:2015 年7 月から2023 年4 月に56 例LSCVR を施行した。対象症例は80(43-94)歳で、手術時間190 (106-338)分、出血量0(0-125)mL であった。Clavien-Dindo grade Ⅲ以上の周術期合併症は2 例(3.6%:小腸穿孔、腸閉塞)、再発は直腸脱、骨盤臓器脱それぞれ1 例、計2 例(3.6%)認めた。

    結語:LSCVR は高齢者にも比較的良好な短期成績が得られた。全身麻酔下の経腹手術が可能であれば、骨盤臓器脱を合併した直腸脱の有用な治療選択肢の一つと考えられた。

  • 池添 祐貴, 鈴木 博志, 野村 泰久, 千葉 茂寿, 帆保 翼, 田中 昌代, 野村 真司, 鈴木 和夫, 鈴木 りか
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 28-33
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/08/01
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    骨盤臓器脱(Pelvic organ prolapse、以下POP)術後に腹圧性尿失禁(Stress urinary incontinence、以下SUI)が増悪すること、あるいは新規に出現することは周知である。腹腔鏡下仙骨腟固定術(Laparoscopic sacrocolpopexy、以下LSC)でも同様で、特にメッシュ固定時の過緊張が要因の場合は中部尿道スリング手術の効果も低く、難治性でメッシュ再固定による減張術を余儀なくされる。今回、LSC 術後SUI に対し、メッシュ再固定術を施行した症例を経験した。症例は65 歳女性、2 妊2 産。膀胱瘤主体の子宮下垂の診断でLSC(前方メッシュ)を施行したものの、術後3 ヶ月ごろよりSUI が出現し、薬物療法にも効果がなく、半年経過後も持続した。 膀胱鏡にてメッシュ過緊張所見を認めたため、メッシュ延長法による減張術を施行し、症状は軽快した。メッシュ過緊張による難治性SUI に対してメッシュアーム延長による減張術は有効な手技と思われ、最適なテンションを確認する方法として、術中膀胱鏡併用は有用である。

  • 西村 良平, 谷村 悟, 塩谷 優太, 藤森 美音, 鹿島 大靖, 加藤 清, 本道 隆明
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 23-27
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/06/24
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    〈緒言〉腹腔鏡下仙骨腟固定術において膀胱腟間の結合織を視認し処理していくことはスムーズで安全な剥離につながる。近年、臓器間の結合織はfascia と呼ばれ、様々な機能とその変化が報告されている。今回我々は経腟超音波検査での膀胱腟間のfascia の所見を検討した。〈対象と方法〉当院に子宮癌検診目的で受診した148 例の経腟超音波検査所見を検討した。膀胱腟間のfascia は水分を多く含み、子宮と膀胱の間の低エコー域として描出されると仮定した。低エコー域の見え方を以下の3 群に分類した。Level 1:膀胱腟間全体で描出、Level 2:膀胱腟間の一部で描出、Level 3:描出できず。〈結果〉Level 1 は28 例(18.9%)、Level 2 は62 例(41.9%)、Level 3 は58 例(39.2%)であった。各群の年齢はLevel 3 で有意に高かった。経産婦の割合はLevel 2、Level 3 で有意に高かった。閉経後の割合もLevel 3 で高かった。ペッサリー装着者が4 例いたが、全例Level 3 であった。〈結論〉膀胱腟間の低エコー域は分娩、閉経、腟内の炎症などで消失しfascia の特徴と合致する。膀胱腟間の低エコー域はfascia を描出している可能性が示唆される。膀胱腟間の低エコー域によりfascia を評価することで腹腔鏡下仙骨腟固定術での膀胱剥離の難易度を推測できる可能性がある。

  • 黒須 春香, 加藤 久美子, 百田 絢子, 佐井 裕紀, 松山 愛佳, 加藤 隆, 井上 聡, 平林 裕樹, 鈴木 省治
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 18-22
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル 認証あり

    女性泌尿器科外来で2 例の女性傍尿道平滑筋腫に遭遇した。症例1 は29 歳未産婦で、尿道痛と外尿道口腫瘤を主訴に紹介された。台上診で外尿道口に17 × 10mm の鮮紅色の腫瘤を認めた。尿道カルンクルに類似するが好発年齢より若くやや硬かったことから手術を勧めたが患者が躊躇した。6 ヵ月後は18 × 13mm に増大し、MRI ではT1 強調像で低信号、T2 強調像で軽度高信号の内部均一、境界明瞭な腫瘤で、悪性を示唆する所見はなかった。 外尿道口の3 時方向から発育していた腫瘤を基部から5mm 離して切除した。症例2 は64 歳経産婦で、腹圧性尿失禁のため紹介された。台上診で咳ストレステスト陽性、尿道過可動、前腟壁の親指大、弾性軟の腫瘤を触知した。 ビデオウロダイナミクスで膀胱過活動はなく尿流動態性腹圧性尿失禁を確認した。MRI は行わなかった。前腟壁に正中切開を入れ、TVT 手術のテープを挿入する前に尿道6 時方向に接する腫瘤を経腟的に切除した。両例の病理結果は平滑筋腫で、術後経過は良好であり観察期間中に再発を認めなかった。症例2 の腹圧性尿失禁は治癒した。女性尿道平滑筋腫は比較的少ない疾患で、症状は腫瘤触知、排尿障害、外陰部出血などで無症状のものもある。泌尿器科や婦人科の日常診療で遭遇する可能性があり、尿道カルンクルなどのほか悪性腫瘍との鑑別が必要となるため、疑いがあれば手術、生検で病理学的評価を行う必要がある。

  • 浅野 早織, 井上 裕美, 渋谷 茉里, 松本 愛世, 青柳 遼, 柴崎 聡, 渡邉 零美, 大沼 一也, 鵜澤 芳枝, 福田 貴則, 木幡 豊
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 13-17
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/18
    ジャーナル 認証あり

    陰唇癒着症は後天的に両側の陰唇が癒着する外陰部疾患である。低エストロゲンが原因として関与していると言われており、好発年齢は乳幼児期と閉経後の老年期である。しかし、高齢発症は比較的稀であり、治療法や管理方法は定まっていない。今回、排尿困難を主訴に受診した閉経後高齢女性に対して、外来における腟口の拡張術を行い、自宅での指ブジーによる腟口の拡張の指導をおこなった。症状は改善し、処置後2 ヶ月時点で再発を認めていない。外来における低侵襲な治療方法として、鈍的癒着剥離とその後の自宅でのエストラジオール軟膏・エストリール腟錠を併用した指ブジーの指導は有用である。また、高齢女性の尿路生殖系の症状は加齢に伴うものとして軽視されやすいが、患者のQOLを著しく下げる為、適切な診療・診断をおこなっていくことが重要である。

  • 齋藤 研祐, 石塚 貴紀, 松野 真莉子, 吉村 和晃
    日本女性骨盤底医学会誌
    2023年 19 巻 1 号 1-7
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル 認証あり

    骨盤臓器脱における腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)は現在広く普及しつつある再発の少ない術式である。しかし今回、短期間で脊椎椎間板炎や後腹膜膿瘍など術後メッシュ感染症例を計3 例経験した。

    症例1 は64 歳、シングルメッシュLSC 術後11 日目に発熱と腹痛が出現、術後12 日目に術後感染の疑いで入院となった。MRI 検査でメッシュに沿う膿瘍を認め、メッシュ感染の疑いで腹腔鏡下メッシュ除去術を施行。現在に至るまで感染および骨盤臓器脱の再発を認めていない。

    症例2 は74 歳、ダブルメッシュLSC 術後4 日目に発熱と腰痛が出現。抗菌薬投与で著明な改善を認めず、MRI 検査でL5-S1 の脊椎椎間板炎と診断した。経腟的メッシュ感染に付随して発症した脊椎椎間板炎と診断し、腹腔鏡下メッシュ除去術を施行した。術後合併症は無く、現在まで感染および骨盤臓器脱の再発を認めていない。

    症例3 は71 歳、シングルメッシュLSC 後13 日目に食思不振で来院、経腟超音波検査で骨盤内に膿瘍形成を認め炎症反応上昇もあり緊急入院した。MRI 検査で後腹膜膿瘍を認めメッシュ感染の疑いで腹腔鏡下手術を施行した。術中に仙骨前面からダグラス窩に及ぶ巨大な膿瘍を認めた。現在に至るまで感染および骨盤臓器脱の再発を認めていない。

    LSC 術後のメッシュ感染では早期のメッシュ除去術が有効である。しかしメッシュ除去により骨盤臓器脱は無治療の状態となり、その後の治療はより困難となるため、感染自体を避けることが肝要である。

  • 杉浦 孝太, 加藤 健宏, 久留宮 康浩, 金子 健一朗, 水野 敬輔, 世古口 英, 菅原 元, 井上 昌也, 秋田 直宏, 南 貴之, 権田 紘丈, 長田 祥子, 佐久本 一樹, 等々力 広菜, 大澤 拓哉, 浜辺 健太, 石谷 紗希
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 88-93
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/12/08
    ジャーナル 認証あり

    症例は49 歳、2 妊2 産の女性で鎖肛に対し、新生児期に人工肛門造設、0 歳時に鎖肛根治術、5 歳時に人工肛門閉鎖術を施行されている。幼少期より直腸粘膜脱を自覚していたが、第2 子出産後より直腸脱出、腟の下垂感が増悪し当科を紹介受診した。約4cm の完全直腸脱およびC: +2.0cm の骨盤臓器脱を認めた。手術瘢痕は左上腹部(人工肛門閉鎖術)、仙尾靭帯付近(鎖肛根治術)に認めた。鎖肛の病態と術式等の詳細は得らなかったが、中間位鎖肛に対しStephens 手術が施行されたと推察された。月経困難症を伴う子宮筋腫の切除、肛門機能温存による術後排便機能の観点から経肛門操作を最小限にするため、子宮腟上部切断を伴うlaparoscopic sacrocolpopexy with ventral rectopexy(LSCVR)、粘膜脱切除を施行した。術中所見は、腹腔内の癒着は軽度かつ直腸周囲も肛門管上縁付近まで剥離可能で、上記術式を完遂した。術後1 年経過した現在、再発なく便失禁も改善し、患者も“お尻が乾いていて気持ちいい”と満足されている。今回筆者らは、鎖肛術後の骨盤臓器脱合併直腸脱に対しLSCVR を施行し良好な経過を得た経験に加え、鎖肛術後成人症例の困難点、問題点も認識されたため報告する。

  • - 腹腔鏡下骨盤臓器脱手術を運用するための適応基準 -
    西村 和朗, 土岐 尚之, 大蔵 尚文, 吉野 潔, 吉村 和晃
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 80-87
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/10/05
    ジャーナル 認証あり

    骨盤臓器脱(Pelvic organ prolapse: POP)には様々な病型と術式があり腹腔鏡下手術による治療が増えているが、明確な術式選択基準が示されていない。我々は関連する2 施設において、Site specific repair を基本としPOP の程度と年齢を考慮した“術式選択と適応基準”を作成し有用性と妥当性を検討した。腹腔鏡下POP 手術ではメッシュを使用するLaparoscopic sacrocolpopexy(LSC)、メッシュを使用しないLaparoscopic uterosacral ligament suspension(LUSLS)、腟式手術ではいずれもメッシュを使用しない腟式子宮全摘+前後腟壁形成術と腟閉鎖の合計4 種類を施行した。対象期間は2016 年4 月から3 年間であり、後半の1 年半に“術式選択と適応基準”の施設内運用と“治療法選択の説明図”のPOP 患者への提示を開始した。“術式選択と適応基準”を運用した前後で、POP 患者の年齢、手術数、術式、種類、程度や解剖学的再発(POP-Q stage2 以上)を比較した。POP 症例数はA 施設では前半20 例から後半48 例に、B 施設では前半12 例から後半26 例にそれぞれ増加した。術後2 年までの再発率は、A施設では前半20%から後半8%に、B施設では前半25%から後半8%にいずれも減少した。“治療法選択の説明図”をPOP 患者に提示することで、病態や術式に納得して術式を選択できるのでPOP 症例数は増加したと考えた。またSite specific repair を基本とした“術式選択と適応基準”の運用は再発率の低下につながると考えた。“術式選択と適応基準”を作成し、POP 患者に“治療法選択の説明図”を提供することは有用性が高く妥当性も高いと考える。

  • 中田 真木, 上島 千春
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 72-79
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    目的:2021 年現在、日本では、一種類のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メッシュと二種類のポリプロピレン(PP)製メッシュが骨盤底再建手術に使用されている。これらの製品の埋植に対する局所反応を比較するために本実験を計画した。

    対象と方法:6 匹の13 週齢 Slc:SD 雌ラットの側頭筋靭帯に接して3 種類のメッシュの小片を埋植し、2 週間飼育してから組織を取り出して病理学標本を作成した。標本の詳細を知らされていない観察者が、炎症細胞と結合組織の応答に関する9 つの評価項目について光学顕微鏡による評価を行った。 結果:標本採取時、PTFE メッシュは容易に周囲組織から剥離されたが、PP メッシュはかたく固着していた。炎症細胞の応答を評価する5 つの項目のうち3 つにおいて、PTFE メッシュのスコアはPP メッシュよりも有意に低かった(マンホイットニーのU 検定、p 値<0.05)。炎症に起因する結合組織の変化を評価する4 つの項目のうち 2 つはPP メッシュに限って観察された。全体で、PTFE メッシュのスコアは9 つの評価項目のうち7 つでPP メッシュよりも低かった。

    結論:力学的ストレスにさらされる部位への埋植で、PTFE メッシュによるラットの局所反応はPP メッシュと比較して軽く穏やかである。ヒトにおいても、骨盤底再建手術にPTFE メッシュを使用することによって、PP メッシュで経験された強い瘢痕化やメッシュ露出が減る可能性がある。

  • 高岡 智子, 小林 康江, 谷口 珠実
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 63-71
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    【目的】産後1 か月の褥婦において肛門挙筋の剥離損傷(avulsion)を有する割合を調査し、avulsion の有無と肛門挙筋裂孔の面積との関係を明らかにすることである。

    【方法】既存データを2 次的に分析した。産後1 か月の褥婦89 名を対象に、avulsion の有無と肛門挙筋裂孔の面積を超音波検査にて評価した。経会陰的に正中矢状断を描出した後、恥骨結合後縁と直腸肛門角の距離が最小となる平面での横断面(基準断面)を合成し、肛門挙筋裂孔の面積を測定した。さらに肛門挙筋裂孔の基準断面1 枚、基準断面から2.5mm 毎に頭側5mm までの2 枚、計3 枚の断層像を描出し、avulsion の有無を判定した。

    【結果】avulsion を有する褥婦は12 名(13.5%)で、3 枚全ての画像に欠損が認められるcomplete avulsion が 4 名、1 枚もしくは2 枚に欠損が認められるpartial avulsion が8 名であった。努責時の肛門挙筋裂孔の面積はavulsion を有する褥婦で有意に拡張していた(中央値21.36cm 2 vs17.87cm 2 ; p=0.037)。肛門挙筋裂孔の面積が25cm 2 以上の異常な拡張(ballooning)に該当するのは12 名(13.5%)で、その割合はavulsion を有する褥婦で有意に高かった(41.7%vs9.1%; p=0.009)。

    【結論】本研究の褥婦においてavulsion を有する割合は13.5% で、先行研究に比較して少なかった。avulsion を有する褥婦では肛門挙筋裂孔が拡張し、ballooning を有する割合が高かった。

  • 中田 真木, 野島 俊二
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 6-10
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    人口の高齢化を踏まえ骨盤臓器脱のペッサリー管理は見直されており、最近では先進国で看護師らによるペッサリーの自己着脱指導が行われている。日本女性骨盤底医学会の第3 回ペッサリー講習会(宇都宮市、2021 年7 月、ハイブリッド開催)の後に、ペッサリー講習会運営委員会は受講者にウェブ質問表を提示して調査を行った。質問は、受講者のペッサリー管理の経験、講習内容の評価、開催に関する要望などであった。

    受講者52 人中33 人が回答し、大半の人は勤め先でペッサリー管理を行うか同僚が行うかしていた(29 人)。開催について情報を得たルートは、学術集会の公式サイト/プログラムがほとんどだった(29 人)。講義内容については、31 人はおおよそ理解できた、29 人はおおむね興味を持って聴講できた、と回答した。講習会の今後のありようについては、ほとんどの人が今後もウェブ配信の継続を希望した(30 人)。一部の人は、学術集会に参加しない人もペッサリー講習会を受講できるとよいと回答した(12 人)。

    ペッサリー講習会の運営実態は、受講者から一定の肯定的評価を受けている。しかしながら、ペッサリーの使用をサポートする医療スタッフを増やすためには、教育コースを開催するだけでは不十分で、ペッサリー管理と自己着脱を学ぶ意義を伝える広報活動に力を入れる必要がある。中でも、日本各地で看護師や助産師が十分な量の自己着脱指導を行うためには、看護師や助産師が障害なく参加できるようにペッサリー講習会の開催を調整することが急務である。

  • 鈴木 俊輔, 守口 奈緒美
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 58-62
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    目的:尿失禁を有する女性は多くみられるが、下部尿路症状の受診率は9%と低く、生活の質を損ねる大きな問題である。侵襲医療も存在するが合併症は皆無ではなく、より安全で有効な低侵襲医療が望まれる。今回、高齢者を含めた尿失禁症例に対して経腟高密度焦点式超音波療法high-intensity focused ultrasound(HIFU) を用いてその効果について検討した。

    対象と方法:2021 年1 月までの3 年間で経腟HIFU を施行した46 例(62.5 ± 13.9 歳)を対象とした。効果判定にはInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(ICIQ-SF) を用いた。 結果:HIFU施行後比較的早期に尿失禁の改善を自覚する例が多く、ICIQ-SFは施行前に比較して施行後2 年経過しても有意に低値を示した。施行後、外肛門括約筋の筋力を示す最大随意収縮圧maximum squeeze pressure(MSP) は有意に上昇した。便失禁の併存例では全例で便失禁が改善し、便失禁スコアWexner score は有意に低値を示した。

    結論:長期観察の結果から経腟HIFU は高齢者への低侵襲尿失禁治療法としても有用な治療法となり得る事が示唆された。女性の左右の球海綿体筋は外肛門括約筋の前側方に合流しており、腟壁背側は外肛門括約筋であることが最近報告された。これに従えば経腟HIFU で腟背側の外肛門括約筋を直接照射したことにより外肛門括約筋の収縮力が上昇し、便失禁が改善された可能性が推察された。

  • 永田 一郎
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 49-57
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    高齢婦人の骨盤臓器脱に対する腟閉鎖術の適応症例は近年増加傾向にある。腟閉鎖術後の問題点は二つある。 1)腟閉鎖術でも再発はある。(2)腟閉鎖術の術後には腹圧性尿失が頻発する。これらについてその原因を考察し手術手技上の防止策を検討した。

    再発の原因には、(1)腟粘膜の切除不足、(2)ヘルニア嚢(小腸瘤)の不完全処理-小腸瘤の存在の無視、ないし同定・処理の不完全-、(3)前後腟壁の接着不完全、(4)開大した生殖裂孔(腟口)の不完全処理、ないし会陰形成の不徹底、が考えられる。これらを防止するための手技上の要点を筆者の経験に基づいて図説した。手技の要点は(1)腟壁のトリミングの仕方、(2)小腸瘤を見逃さず、確実にヘルニア門を閉鎖すること、(3)前後の腟粘膜剥離面を確実に接着させるべく縫合の方法などに配慮すること、(4)腟口をほぼ覆うくらい高い会陰形成を行うこと、である。

    腹圧性尿失禁stress urinary incontinence(SUI)の原因としては、前後の腟壁が縫合された結果、尿道が後方に引かれ、後部尿道膀胱角posterior-urethrovesical angle が鈍化ないし消失することが考えられる。その防止法として高い会陰形成は有用であり、加えて膀胱頸部のKelly 縫合を行う。 これらについても筆者の手法を図示した。

  • 渡邉 観世子, 岸 夏海, 平井 里奈, 縄田屋 歩実, 久保 晃
    日本女性骨盤底医学会誌
    2022年 18 巻 1 号 44-48
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/06/10
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は出産を経験した女性の周産期と現在の腹圧性尿失禁症状の有無や程度、さらに腹圧性尿失禁症状に関連する要因を明らかにし、リハビリテーション介入の指針を得ることとした。対象は出産を経験した81 名の女性(平均年齢43.1 歳)で、周産期および現在の尿失禁症状の程度をInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(ICIQ-SF)にて評価した。その他に出産回数、子どもの出生体重、出産後の経過年数を聴取した。現在の腹圧性尿失禁の有無や重症度(ICIQ-SF の点数)に関連する要因を明らかにするために相関分析を行い、さらに現在の腹圧性尿失禁の有無を従属変数、その他の要因を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。本研究の対象者は出産後の経過年数の平均が13.2 年で、81 中36 名(44.5%)の対象者が現在において腹圧性尿失禁症状があると回答した。現在の腹圧性尿失禁の有無やICIQ-SF の点数に関連する要因としては、周産期のICIQ-SF の点数と子どもの平均出生体重が抽出された。本研究の結果から出産後も腹圧性尿失禁症状を有する実態が明らかとなり、このような症状を引き起こす要因として、周産期の尿失禁の程度が重篤であることや子どもの出生体重が重いことが関連していた。本研究の結果はリハビリテーションの現場において、周産期から出産後の腹圧性尿失禁を把握し、骨盤底筋群トレーニングなどの介入の必要性を判断するための指標となる。

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