失語症研究
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原著
特異な反復性発話を呈した脳炎後遺症の1例
阪野 雄一井上 明美中村 光中西 雅夫濱中 淑彦波多野 和夫
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2001 年 21 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

脳炎後,推定7年間にわたる持続性の反復性発話を呈した1例を経験した。症例は発症時22歳,右利きの男性。約7年後の評価時には,日に数回意識減損発作があり,発動性低下,病識低下,脱抑制傾向などの精神症状を認めた。MRI検査では右前頭・側頭・頭頂葉および左側頭葉に萎縮がみられ,また右優位の側脳室の拡大を認めた。神経心理学的には失語および広義の聴覚失認 (言語音,環境音,メロディの聴覚的認知障害) ,さらに自己の発話の著明な反復を認めた。この反復の単位は1音節を主とし,次に単語,複数音節の順に多かった。反復の位置は語中・語尾に高頻度で,語頭はこれに比し少ない傾向があった。本例の反復性発話の臨床症候は語間代にもっとも当てはまると考えられ,語間代は Alzheimer 病に限られるものではないことが示された。

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© 2001 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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