Chem-Bio Informatics Journal
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COMBINE解析法を用いたHuman Leukocyte Antigenと抗原ペプチドの親和性予測法の研究
中村 真也大村 理恵仲西 功
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2017 年 17 巻 p. 93-102

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抄録

ペプチドワクチン療法は、人間が本来持つ免疫の力でがん細胞を攻撃し、排除するというがん免疫療法の一つである。この治療法では、投与されたペプチド断片ががん細胞のマーカーとしてヒト白血球抗原(HLA)に結合して提示され、この複合体をT細胞受容体が認識してがん特異的キラーT細胞が活性化されることで、がん細胞を攻撃する。T細胞受容体は多種多様な抗原に応答できるように無数に存在するが、HLAは各個人に固有の配列と構造である。したがって、ペプチド断片とHLAとの安定性を精度よく予測することが重要となる。これまでに、統計的あるいはバイオインフォマティクスを用いた手法や、分子モデリングと理論計算を組み合わせた分子間相互作用による解析など、さまざまな方法が報告されている。理論化学的なアプローチは、精度が高くなると期待される一方で、モデリングや計算に莫大な時間を要する。そこで、本研究では計算に要する時間を極力抑える方法として、ペプチド側鎖コンフォメーションのモデリングにrotamerサーチを、活性予測法にCOMBINE解析法を用い、その予測精度を検討した。ベンチマーク用のデータとして、バイオインフォマティクス法による予測ツールBIMASで用いられた81個のペプチド断片のデータを用いて予測精度の検証を行い、BIMASとの比較を行った。その結果、Q2が0.5以上となる予測モデルを構築することができ、また、BIMASでは大きく実験値からはずれていた2個のペプチド断片の活性も良好に予測できていた。さらに、ペプチド断片の認識に重要となるHLAのアミノ酸残基を同定し、これらの多くは実験データと一致した。

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