言語文化教育研究
Online ISSN : 2188-9600
ISSN-L : 2188-7802
論文
人間の福祉を志向する日本語教師養成論のための実践研究
言語生態学の観点から
鈴木 寿子トンプソン 美恵子房 賢嬉張 瑜珊劉 娜
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2014 年 12 巻 p. 125-147

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抄録

急速なグローバル化の進展によって,国境を越えた人々の移動は活発化し,日本語教師の直面する実践現場でも多様化が進んでいる。本稿では,日本語教師が備えているべきとされる「豊かな国際感覚」を,グローバル化社会における人間の福祉に対する感覚と捉え,日本語教師養成プログラムを経た参加者が「豊かな国際感覚」をどのように学んだかを分析した。活動は持続可能性教育としての言語教育に基づき,「日本語教育と自己」,「研究と自己」,「世界と自己」の3つのテーマに沿ったグループ対話活動(全11回)で行った。1名の参加者の認識の変化を分析した結果,この参加者は仲間との対話を経て,他者の視座を自己の視座に取り込み,高齢化が進む母国の状況や,将来担う家族の介護という課題をEPAに重ね,グローバル化社会の内実を認識できるようになったことがわかった。この認識の変容は生態学的リテラシーの育成によるものと考えられ,生態学的リテラシーの育成は,学習者の福祉のみならず,日本語教師自身や日本語教師仲間の福祉の向上の原動力となり得ると考察した。

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