日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
胆道治療目的ERCPにおけるWire-guided cannulation
中井 陽介伊佐山 浩通木暮 宏史佐々木 隆笹平 直樹平野 賢二多田 稔小池 和彦
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2010 年 52 巻 1 号 p. 88-94

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抄録

近年ERCP関連治療手技の発展は著しいが,胆管深部挿管が前提となることに変わりはない.本邦では造影法による胆管深部挿管の工夫が行われ,高い深部挿管成功率が報告されてきた.近年欧米を中心に有用性が報告されているWire-guided cannulation(WGC)は,造影剤の試験注入を行わずにGuidewireを用いて胆管深部挿管を行う方法である.WGCは,GuidewireをPreloadしておいたSphincterotomeで十二指腸乳頭へのアプローチを行い,Sphincterotomeの刃の調整により胆管方向へGuidewireを先進させてCannulationする方法である.胆管方向へ先進させたGuidewireにSphincterotomeを追従させて,胆汁の吸引によって胆管深部挿管を確認した後に胆管造影を行うことによって,造影カテーテルによる乳頭への過度の負担や,不必要な膵管造影を避けることが可能になり,ERCP後膵炎の減少が期待されている.海外で行われた無作為化比較試験においては,WGCは造影法と比較して,高い胆管深部挿管成功率と低いERCP後膵炎合併率が得られたと報告されている.WGCの問題点としては,Sphincterotomeを使用することによるコスト面,不慣れな術者・助手がGuidewire操作を行うことによる乳頭浮腫・穿孔の危険性が挙げられ,今後デバイスを含めたさらなる改良が必要である.WGC法による挿入が困難な症例で造影法に切り替えると容易に胆管挿管成功することも経験しており,WGC法・造影法それぞれの技術を習得し,症例に応じたCannulation法の選択することも重要である.造影法による胆管深部挿管率が高い本邦におけるWGCの位置付けについては,今後前向き比較試験における検討が必要である.

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© 2010 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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