主催: 日本地球化学会年会要旨集
Tsunogai et al. (2011)では、貧栄養湖である摩周湖において、湖水中の硝酸イオンの三酸素同位体異常(D17O値)から窒素循環速度が定量できることを示した。しかし、摩周湖は数少ない貧栄養塩湖であり、流出入河川を持たないなど一般的なものとは異なる湖である。そこで本研究では、より一般的な中栄養湖である琵琶湖において、硝酸イオンのD17O値を指標に用いて湖内の総硝化速度や総同化速度の定量化に挑んだ。同化速度が最も大きかった期間は春季から夏季の間であり、年間の総同化量の40%を占めた。一方、硝化速度が最も大きかった期間は夏季から秋季で、年間の総硝化量の40%を占めた。また、河川や大気から直接供給される硝酸イオンが一次生産に占める割合は15%以下であり、湖内の一次生産で消費される硝酸イオンの大部分は湖内で生成された再生硝酸であることが明らかになった。